第10話訓練
第10話 訓練
水曜日と金曜日と土曜日はイケメンの新海と気性の荒々しい井門、そして身体能力の化け物である芹沢と一緒に部活帰りにご飯を食べる。それは一見、部活帰りの高校生がご飯を食べている様にしか見えないが、実はそんな訳ではない。俺たちは準備をしているのだ。ハリスの元に行く準備を。
「なあ、いつまであのおっさんは俺らを鍛え続けるつもりなんだ?」
「俺が聞きてえよ。お前らは週に三日だけだけど、俺なんて毎日だぞ?」
「確かに、何が目的なんだろうね。戦争でもする気なのかなあ。」
「お前、麗華みたいなこと言うなよ。怖えだろ。」
「でも、ハリスさん普通に俺らのこと「経験だ。」とか言って戦場で戦わせそうだよな。」
「マジでありそうで怖いな。」
とは言っても俺たちは男子高校生だ。ハリスの訓練と言う嫌なことがあっても、色々とモチベを上げる手段はある。
「まあ、アリス可愛いしアリスのチア姿、想像して頑張るかあ。」
「え?お前、近衛様好きなんじゃないの?」
「何、言ってんだよ。確かにあいつは可愛いけど、昔からずっと俺にばっか絡んできてうっとうしいんだよ。」
「なあ、新海こいつマジで言ってるのか?それとも馬鹿なのか?あんなにアピールされてるのに?」
「まあ、ツバサはそういう感じだからねえ。」
「なんの話だよ?なんかあんのか?」
「こりゃ、無理だな。」
「ああ。こいつはダメだ。」
騒ぐ俺たちに、周りの人たちからの視線が送られる。でも、それは非難の意味を込めたものではなかったことを俺たちは知る由もなかった。
「今日は、鬼ごっこをする。」
銃を肩に担いだその金髪ムキムキ男はそう言った。まあ、ここは平和な日本だし銃だってちゃんと許可を取って使っているんだろうと、合っているか間違っているかは置いておいて自分でそう信じ込む。
「鬼は俺がやる。だから、お前らは協力して逃げろ。」
いつもみたいな戦車に向かって手榴弾を投げる演習とかではなかったためか、拍子抜けした様に井門が言った。
「え?鬼ごっこですか?」
井門が丸太みたいな腕で殴られて吹っ飛ぶ。多分、質問の許可を取らなかったからだと思う。
「ああ、そうだ。普通の鬼ごっこだ。ああ、そうだ。それちゃんと付けとけよ。アップして15分後には始めるからな。」
俺らは用意されていたヘルメットや防弾チョッキをみて、なんでハリスが肩に銃を担いでいたかを理解した。こいつは鬼ごっこを俺らのことを銃で撃つことだと思っているキチガイなのだ。サッカー部の連中と同じで、もう人間ではないのだ。なんで、麗華が絡むとおかしい人が生まれるんだろう。
そうして、俺たちは屋敷の敷地内にある森で30分の間ハリスから逃げ続けると言う死闘を演じ、ハリスの銃の弾が尽きた時点で鬼ごっこはおしまいになった。
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