がまん
昨日仕事の現場での話。
私は大型のトレーラーを運転しているが、その傭車先のいつもの場所に私が停車しようとしたところ、他社のトラックが停まっていた。
普通ならしばらく待っていると、事務所で用事を済ませて出てくるのだが、私が少し離れたところで待機をしていても、一向にトラックは動く気配がない。
配送の時間もあるので、私はそのトラックの前に出て、自分のトラックを停めた。できるだけ事務所に近いところに停めた方が都合がいいということもあり、バックアイカメラで確認しながら、ギリギリまで下がって停めた。
「近いんだよ」
運転席にいたトラックの運転手が私に言った。
「出られないだろ」
私は一瞬頭に来たが、仕事先のここで怒ってしまったら終わりだと思い、適当な言葉を発して我慢した。
実際には出られないことはない。少しハンドルを切れば出られるし、後ろだって余裕でスペースがあいている。しかし彼にとっては近いのだ。
私は少し前に出て、彼が出て行くのをやり過ごそうとしたが、彼はここでも動く気配を見せない。私はこの場所への停車を諦めて、少し先の他の場所へトラックを停めた。ここへ停めると少し面倒なのだけれど仕方なかった。
「用事済んだら、さっさと出て下さいよ」
「出ないんですか?」
「いつまでもいるなら向こうに停めたらどうですか?」
こんな事を言いたかったが、言ったら突っかかってくる事は目に見えている。せっかくもらっているこの仕事がなくなってしまっては大変なので、私は我慢した。
嫌なことは大抵すぐに忘れてしまうが、一夜明けた今でも少し残っている感じがして気持ちが悪い。でも、傭車先の敷地内でトラブルを起こしたなどとなってしまえば、どちらが悪いの問題以前のもっともっと面倒なことになる。
私の判断は間違えていなかったと思う。
道路に出てトラックを運転しているといろいろなことがある。
ロードバイクと言われる自転車や、原付が走っていたり、荷物とトラックの安全確保のため、せっかく空けている車間距離の中へ乗用車が平気で割り込んで来たり、指定速度の半分くらいのスピードで走っている高齢者ドライバーがいたり、信号停止でスマホに夢中になっていつまでも動かない乗用車がいたり、横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいたので止まったらいつまでも渡ってくれず、渡らないのかと思って通り過ぎれば、私が通り過ぎてから渡ったり、いろいろと我慢をしなければならない状況が毎日のようにある。
相手はもちろんわざとやっているのではないのだろうから仕方ない。争ったとしたって、自分の安全を確保しているのだと言われればそれまでだ。大きな声を出したり、クラクションを長くならしたり、煽ってしまったりすれば、自分が嫌な思いをするだけだし、煽り運転になってしまえば、法律にも抵触してしまう。特に大型車は、ちょっと操作を間違えれば煽り運転になってしまい、怖いと言われてしまう。
道路上には、ありとあらゆる人がいる。いい人もいるけれど悪い人もいる。いい人も運転しているときには悪い人になってしまうこともある。その逆はあまりない。
いろいろとあるけれど、要するに私の場合は何が起ころうとも我慢をすればいいのだ。
こんな風に考えながら長い間運転手をやってきたけれど、歳を取ってくると我慢の限界点も少し変わってしまったのかもしれない。
長く働くために、引き締めてやっていかねばと思っている。
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