　カナダに、とても仲の良い友人がいる。

　日本人ではなく、一度も会ったことのないカナダの人である。

　私がかつて、海外に刀剣を販売していた際に購入してくれたお客様なのだが、こちらの方に販売した刀の登録証にトラブルがあり、納品までに何ヶ月もお待たせしなければならなくなってしまった。

　その事を謝るととても恐縮してくれ、それ以来、メールのやり取りをしたり、各々が出かけた際に、お土産を贈り合うというようなお付き合いが続いている。

　今回、妻が子宮頸がんになってしまった事を告げると、一緒になって、心から悲しみ、お見舞いの言葉をおくってくれた。そして、私達夫婦に、お見舞いの気持ちとして、オーダーメイドのスリッパを贈ってくれた。

　先日商品が届いたのだが、見てみると、そのクオリティーの高さに驚いた。薄い本革で出来ており、くるぶしの所には、本物のウサギのふかふかした毛が縫い込まれている。中も全て、もこもこの皮が張られている。オーダーメイドなのでジャストフィットし、とても暖かい。こことは比べものにならない、寒いカナダの冬を感じることができる。

　スリッパと聞いていたので、私は当初、日本のスリッパと同じようなタイプの履き物を想像してしまっていたのだが、これは大きな間違いだった。本当にありがたい。

　屋久島にいた頃も、一人で栄養バランスなども取れず、適当な食事をしていたからか、何人かのお客様から、地域の特産品などをいただいたことがある。

　最終的に、私は屋久島を離れてしまったが、当時の皆さんの応援があったからこそ、今もこうして何とか元気に暮らしており、同じような文章を書きながら、幸せに暮らすことが出来ている。

　妻も病気をしてしまったものの、何とかかろうじて持ち直し、パートの仕事に行くことができている。後は12月に子宮頸がんの手術を控えてはいるが、集中治療室に4日も入っていた、脳の病気からの回復は、素晴らしいものがあると思う。

　人間、気持ちが大切だと、屋久島の頃はよく言っていたが、今回も心からそう思っている。各地や各職業でいろいろと大変な事が起こってしまっているけれど、何とか皆で力を合わせてがんばって行こう。