新型のカローラは売れない理由
入庫してきた昭和57年式のカローラは極上車だった。
クリーニングを終え、洗車をし、綺麗にワックスをかけ、私は展示場にそのAE70カローラセダンを並べた。
ワンポイント訴求を作らねばな。係長に怒られてしまう。
エアコン、ステレオ、パワステ、パワーウィンド、オートマチック、全部だな。
距離2万4千キロ、新規車検取得渡し、価格55万円。よし。できた。
カローラはすぐに売れた。近くの団地に住む、とても感じのいい人に、私が販売した。同じ日、私はタウンエースのTR15Gも販売し、実績報告時に部長から褒められた。
時は昭和59年。私は東京にあるトヨタに入社し、君は中古車をやりなさいとマイカーセンターに配属された。
今乗っているランクル40が現役だった。新人研修で当社取扱車種を学んでいた際、殆どの者がスタウトを知らなかった。配属前、新車販売研修時には、足のいいやつカリーナがFFになった。ハイラックスが屋根をつけてサーフとして販売されはじめた。カリーナサーフもいい感じだった。下取り車でRT40が入ってきて、どこから燃料を入れるのかを覚えた。
この時、車を買ってくれていたのは、まさに団塊の世代の方々である。
カローラは乗りやすい車である。扱いやすい大衆車である。だから売れた。
どうしてスマホと車をリンクさせねばならないのか。
カローラを買うのは、シニア世代の方々。昔のカセットテープを聴きたいだろう。少し譲って、CDを聴きたいだろう。スマホは嫌いである確率が高い。宝くじのポイントをつけることができずに、泣き寝入りしている人たちを、これ以上いじめてはいけない。
スマホが使える世代は、カローラに興味がない。そもそも車の必要性を感じていない。
このマーケティングではダメだ。トヨタも長くはない。
エアコンステレオはオプション、ステレオは富士通TENから。パワステなし、パワーウィンドなし、鍵は電気禁止、鍵穴に差し込んで回す。わけわからない画面はもちろんなし。パートタイム4WD設定あり。走行時105キロで警告音、テンパーではない普通のスペアタイヤあり。こんな車を軽自動車以下の価格帯で作りなさい。今私が乗っているのと同じ車ですので、変わり者を中心に、きっと売れるでしょう。
売れなくても知りませんあるよ。
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