引きこもり卒業式

昨日見つけた、「クロエの魔導書」が、本物なのかどうかを確かめる為、今日はある人の所へ向かう。


今日は休日にも関わらず、とても早く起きた。

ちなみに、寝坊せずに起きれた日は、今日が初めてである。


向かった先は、その人が住んでいる(怪しげな)研究所。創設から10年以上が経つそうだ。


ドアをノックする。

「先生!居ますか?」

「はいー入っておいでー」


中に入る。昔からそうだが、滅茶苦茶散らかっている。良くも悪くもなっていない。


いかにも研究者、っていう感じの白衣と丸眼鏡をかけている、ハイジ先生が近くにきた。

因みに先生が専門にしている魔法だが、主に癒しの魔法などだ。疲れた時に良く効くらしい。


「あー、ナギサ?どうしたの?」

「この本、一応解読したら『クロエの魔導書』みたいなんですけど、本物かどうか分からないので持ってきました」

「ふぁっ!?マジ?クロエの魔導書?」

いい歳したおばさん(と言っても30歳前後ぐらい)のはずが、言葉遣いが急に現代風になった。


「あー…

これ本物かもね…。ちょっと待ってて」

そう言うと先生は奥の部屋に消えていった。


—————————————————


「ナギサー?これ本物だよー!!」

奥から先生が駆け寄ってきた。

「マジですか!?」

「うん!でも…」

「でも?」

「まだナギサが学校で習ってない、上級魔法ばかりで、多分使えそうにないよ。」

「ええええええええええええ!?」

マジかよ。マジなのかよ。

「まぁまぁ、そう慌てるなよ。

修行を頑張れば、今に使えるようになるから」

「修行?????」


修行しないと使えない?マジですか。

「まぁ今のナギサなら、すぐ使えるようになるよ。どうする?修行する?」


うーん。どうしようか。


「あ、いっけね忘れてた。

うちには立派な魔導士が居たんだった」


ってオオオオオイ!!!!

なんでそーゆーことを早く言わないんだよ!!!

「ごめっナギサ」

「許しませんよ」


—————————————————


「うわぁ……

何この怪しげなトビラ……」


その扉には、「立入禁止」とか、「悪霊退散」とか、よく分からないステッカーが多く貼られている。


「ここに、私の姉の娘がいる筈なんだけど…」

この人姉なんていたんだ。

「ただ、1つ問題があってね…」

「問題…ですか?」

「ああ、彼女は、所謂『引きこもり』なんだよ。」


まじか。まじですか。

「あの娘、既に3年以上も引きこもりしてんだけどね…未だに出てこようともしないんだよ。」

「そうなんですか……」


恐る恐る戸を叩いてみる。

「誰かいますかー?」

いやそれこっちのセリフだから。あんたの所だから居るに決まってるでしょ。


「……誰だよ。」

扉の向こうから声が聞こえた。低めの女声だ。

「私よ。ハイジ。そろそろ出てきたら?」

「なんで出ていかなきゃいけないの?

私に存在意義なんてないでしょ。」


察するに、かなりの大事があったようだ。

「お客様来てるけど……出てこない?」

「え!?行く行くーー!!!!」

え?まz(ry


—————————————————


なんやかんやありまして。

「ど、どうも。初めまして。」

やけにおどおどしている。本当に引きこもりなのか?

「わ、私はレールと言います。引きこもりの魔導士やってます。」

「ども、私ナギサって言います。

魔法学校通ってます。」

「え!?あのクロエさんが作った!?」

「え、あ、はい。そうです。」

「やっぱりかー。そんな気はしてたんだよねー」

見ただけで察せるとか、さすが魔導士。

「で、ハイジさん?この人は何しに来たの?」

「この『クロエの魔導書』が本物かどうか確かめに来たんだよ。そしたらまじもんの本物で」

何だよまじもんの本物て。

「え、マジ!?」

あ、わかったわ。

こいつの口癖が先生にうつったんだ。多分。

「それって、ナギサが見つけてきたの?」

「いや、なんか家にあったんですよ。」

「そうなのかー」

「それで、修行の手伝いをしてもらいたいんですけど、いいですか?」

「勿論よ。暇は持て余してたし。」

軽っ。さっきまでのおどおどしさ何処いったよ。

「じゃあ、早速明日からよろしくね。」

「はい。ありがとうございます。」


これで、晴れて修行をする事になった。

しかし、あの悲劇が起こることを、まだ私は知らない。

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