第250話 決闘の嵐
「もう!ライナったら、何でいつも勝手に喧嘩するの!。」
ギャアラギャギャアラギャ!ギャアギャアガアギャアギャ!アラギャギャアラギャギャアラギャ!
(申し訳ありません。はい!本当に出来心だったんです!。はい、本当に申し訳ありません!。)
俺はアイシャお嬢様の目の前で礼儀正しく竜の正座しながら反省の態度をとる。反省だけなら猿でもできる。なんて竜(ドラゴン)でもできます。はい、
俺はアイシャお嬢様に昼休みにシャンゼルグ竜騎士校のだだ広い中庭でこっぴどく怒られていた。
シャンゼルグ竜騎士校の中庭は広いのでメイドのカーラさんとリリシャさん特製の弁当を持参しながら俺と一緒にシャンゼルグ竜騎士校の中庭で昼食をとるためである。
俺は竜騎士科と騎竜乗り科の視線を釘付けになりながらも叱られている。
今、竜騎士科の令息生徒と騎竜乗り科の令嬢生徒と人化している騎竜達に蔑むような馬鹿にした冷たい視線は送られていない。
第4訓練場で氷結竜コルゴがノーマル種ライナによって第二訓練場まで吹っ飛ばされ地面にめり込んだ噂が瞬く間に学園内に広まった。皆ノーマル種に対しての蔑むような見下した視線はない。どちらかと言えば脅威、血走るような好戦的な敵意のある視線を浴びせてくるのだ。アルビナス騎竜女学園のノーマル種を騎竜にする令嬢生徒は主人が狂姫の技を使ったことにより。騎竜ではなく騎竜乗りの方が強いと評価結論付けられた。しかしそのノーマル種が第4訓練場で上位種である氷結竜を負かしてしまったのだ。第4訓練場の出来事で状況は一辺する。
騎竜乗りが強いことに納得していたが。そのノーマル種ざ上位種の騎竜にやられたことに竜騎士科も騎竜乗り科も双方とともにプライドが強く傷つけられ。今はただアルビナス騎竜女学園のノーマル種とその騎竜乗りに対する激しい敵意が入り交じあっている。
「アイシャ様、そこまでにして上げて下さい。ライナさんは私の為に戦ってくれたのです。」
「るぅ~、ライナを責めないで。」
ロロさんとルゥはアイシャお嬢様に叱られる俺に見かねて懸命に擁護する。
「まあ、ライナがロロさんのことで竜騎士科の騎竜に喧嘩してしまったことの事情を理解するけどさ。その前に私の許可得るのが筋じゃないの?。」
でんとアイシャお嬢様の張りのある2つの膨らみが前につきだされ。腰に手をつけて口許がへの字に曲げる。
ギャ?ラギャガギャガ?
(えっ?喧嘩したことは?。)
あれ?観点おかしくない?。
俺はてっきりアイシャお嬢様が俺が他校の騎竜と喧嘩したことで怒られていると思っていた。
「私が許可したらOKです!。」
アイシャお嬢様はキッパリと断言する。
いや、そこは喧嘩は駄目でしょと叱るところでしょうに。
俺は微妙な竜顔が浮かべる。
アイシャお嬢様は本当に狂姫である学園長の影響を受け過ぎているような気がする。ここはアイシャお嬢様の性格がより狂暴に、より凶悪にならないよう喧嘩せずに大人していようと俺は心から誓う。
「まあ、それでも良かったのはないですか?。本来なら他校の騎竜同士が喧嘩することは学園内としても大問題ですが。事情を聞いて喧嘩両成敗となって不問になったのですから。」
騎竜乗り科のオリンがアイシャお嬢様にそう弁護する。
「そう、ライナは頑張った。あまり責めちゃ駄目。」
厚みのある黒髪が耳に隠れているラムも一緒にライナを擁護する。
「うん、わかったわ。でも今度からライナは私の許可なく喧嘩しないでね。」
ギャアラギャギャアギャア!ギャアガアギャア!
(はい、絶対喧嘩致しません!。心から誓います!)
【アイシャお嬢様のためにも。】
「それじゃ、お弁当にしよう。ライナの分もちゃんとあるからね。」
ギャアラギャ!
(待ってました!。)
やっと食事がとれる。レースと訓練と激戦で俺の竜腹はもうペコペコである。
アイシャお嬢様はカーラさん、リリシャさんが持たせてくれた特製のでっかいお弁当を開けてライナの目の前におく。
オリンお嬢様とラムお嬢様も用意したのか弁当を広げる。
パールお嬢様もレイノリアも弁当を広げる。
しかしレインお嬢様とガーネットの姿が見えない。
ギャ?ラギャガギャギャアラギャギャアラギャガアギャアラギャギャアギャアガアギャアギャア
(あれ?レインお嬢様の姿が見えないですね。ガーネットはまだ引きこもっているんですか?。)
「うん、レインはガーネットの様子を見に行ったよ····。」
アイシャお嬢様は少し表情は曇る。
矢張ガーネットはまた氷結竜コルゴに負けたことを尾を引いているようだ。その氷結竜コルゴを俺は打ち負かしてしまったけれど。敵討ちとは言わないが。レインお嬢様がそのことを伝えたら元気を取り戻すのであろうか?。
「それじゃお昼にしようか。」
ライナは気を取り直し。自分のお弁当を食べはじめる。
たわいのないお話が中庭の芝生に流れる。
ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ
アイシャお嬢様達が楽しくおしゃべりしている最中に列をなして進むブルーの制服をきた生徒の集団が向かってきていた。
中庭に昼食をとっていた周囲の竜騎士科と騎竜乗り科がその集団に気付きざわめきはじめる。
行列をなして進むブルーの制服を着た竜騎士科目の令息生徒達は突然弁当を広げておしゃべりに華を咲かせるアイシャお嬢様達の前で歩みを止める。
ブルーの制服を着た竜騎士科の令息生徒はアイシャに視線を向けるとジロリと睨みを効かす。
「お前がこのノーマル種の騎竜乗りで問題ないな。」
ブルーの制服を着たリーダー格の一人がアイシャに確認するかのように聞き返す。
「あ、はい。そうですけど?。」
アイシャお嬢様は意味も解らず。困惑顔で頷く。
スッ
ブルーの制服を着た令息生徒達は一斉に手袋を脱ぎはじめる。
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン
ブルーの制服着た竜騎士科の生徒達は次々に脱いだ手袋をアイシャお嬢様に投げいれる。
投げた手袋はアイシャの胸にあたりそのままポトッと膝の上に落ちる。
パシッポテパシッポテパシッポテパシッポテパシポテパシッポテパシッポテパシッポテパシッポテパシッポテパシッポテパシッポテパシッポテ
竜騎士科の令息生徒が投げ入れた手袋がアイシャお嬢様の膝の上にに落ち続け。あっというまにアイシャお嬢様の膝の上が見事な手袋のタワーが出来あがっていた。
わあ~~凄い!。手袋ってこんなに積むことできるんだ。
アイシャお嬢様の膝上で見事な手袋のタワーを垣間見て俺は素直に関心する。
「アルビナス騎竜騎女学園の一年、お前に決闘を申し付ける。」
「決闘?。」
アイシャお嬢様は首を傾げる。
「そうだ。お前が強いということは竜騎士科でも解っている。しかしお前の騎竜であるノーマル種が最初の校庭で俺達竜騎士科の騎竜に喧嘩を売ったことがあった。それに関してだけは俺達は絶対に許さない!。」
ブルーの制服着た一人の竜騎士科の令息生徒はアイシャお嬢様に喰ってかかる。
「喧嘩を売るって····。ライナはそんなことをしてません!。」
アイシャお嬢様は激しく否定する。
ギャアラギャ!ギャアギャ!ラギャガアギャアラギャギャ!ギャアギャ!ラギャガアギャアラギャギャアガアギャアガアギャアラギャ!ギャアラギャギャア!ラギャ!
(そうですよ!。ただ黙れ!と言っただけなのに何でそれが喧嘩売ることになるんですか!。失礼しちゃうなあ、もう!。)
俺も同じくアイシャお嬢様と一緒に反論する。
本当に変な言い掛かりはやめて欲しい。これ以上他校の生徒と揉め事には勘弁して貰いたいよ。全く。
「え?ライナそんなことを言ったの?。」
アイシャお嬢様は俺の言葉に空気が一瞬凍りつく。
ギャライガアギャアラギャギャアガアギャアギャアギャアギャアラギャガア
(え、あ、いや、その、心の中ですよ。はい、本心で言っておりません。はい。)
俺は気まずそうに竜言語で言い淀む。
「兎に角、お前のノーマル種が一年の氷結竜をまかしてしまったことは全竜騎士科に伝わっている。このままでは我等の誇りに関わる。よってアルビナス騎竜女学園の一年。俺達はお前に決闘を挑ませて貰う!。」
竜騎士科のブルーの集団は満場一致で頷く。
「何を考えているのですか!。竜騎士科の皆さん!。」
オリンが隣で激昂したかのように叫ぶ。
突然やオリンの態度にアイシャはきょとんとした顔を浮かべる。
「どうかしたの?。オリン。」
「どうもこうもないです!。竜騎士が騎竜乗りに決闘を挑むなど前代未聞です。そもそも騎竜乗りの決闘と竜騎士の決闘は全然意味合いが違います。騎竜乗りはレースで勝敗を決めますが。竜騎士は純粋に戦闘です!。そんなことざきる訳でないでしょうに!。それすらも忘れましたか!貴方達は!。」
「ち、そうだった···。なら、騎竜だけでも構わない。俺達はお前のノーマル種と俺達の騎竜が決闘さえ出来れば気が済むんだ。」
決闘って·····この数をですか?。
ブルーの制服を着た竜騎士科の令息生徒の集団は見積もっても100人位いた。つまり彼らの騎竜である100匹の騎竜と俺が決闘しろと?。そんな無茶な。俺はレース専門であって。戦闘に関してからっきしのど素竜である。それを100匹倒せとそれは人間で言う100人斬りをするようなものである。それは最早猛者である。
「お断りします!。ライナは戦闘の決闘するためにいるわけじゃないんです!。私とライナはレース以外の決闘はやりません!。」
アイシャお嬢様はキッパリと断言する。
アイシャお嬢様は純粋な戦闘である竜騎士科の決闘に異を唱えた。良かった。アイシャお嬢様は純粋に戦闘狂になってなくて。学園長の狂姫ラチェット・メルクライならよろこんでこの竜騎士科の決闘を承諾しただろうけど····。
「くっ、だがこのままでは我等の面子が立たない!。」
竜騎士科の令息生徒達もこのまま引き下がれない様子である。
正に収拾つかない状態である。
ドシン ドシン
突然中庭の地面が地響く。何処からともなく竜の脚音が聞こえる。
「おい、あれって·····。」
竜騎士科の集団とアイシャ達の会話を聞いていた竜騎士科の生徒の一人が指をさす。
「クラウンだ!。シャンゼルグ竜騎士科最強の男。」
「ゼクスさんと無双竜ザインも一緒だ。」
周りのギャラリーが突然の竜騎士科最強の来訪したことに騒ぎだす。
騒ぎに反応した竜騎士科の集団は後ろを振り向くと確かに竜騎士科、学園最強の男と最強の竜がいた。
ドシン
無双竜の脚が竜騎士科の集団の目の前で止まる。
「大分揉めているようだな····。」
「ゼクスさん····」
竜騎士科にとって全学年の権限を持っているクラウンの称号を持つ男を前にして竜騎士科の集団は皆萎縮する。
鎧のような甲殻に覆われた巨体を動かし。無双竜ザインは鋭い竜瞳を竜騎士科の集団に向ける。
竜騎士科の集団は一瞬無双竜ザインの睨みにびくつくがすぐに気を取り直す。
「ゼクスさん。クラウンである貴方でも俺達の意志はまげられない···。」
「ああ、止めるつもりはないさ。ただ落としどころを教えてようと思っただけだ。」
「落としどころですか?。」
竜騎士科の集団のリーダーは眉を寄せる。
「そうだ。竜騎士は騎竜乗りとでは純粋な戦闘である決闘は出来ない。なら合法的にそれらを行われる場でやればよい。」
「と言いますと?。」
竜騎士科最強の男の意図に竜騎士科の集団は皆首を傾げる。
ゼクスはニヤリとした笑みを浮かべ口許を開く。
「建国記念杯だ。あれなら竜騎士も出場できるし。合法的に戦闘も行えるだろう。」
「建国記念杯?そうかっ!?。」
竜騎士科のリーダーははっと閃く。
「ただな。三竜騎士もそのノーマル種に興味を持ったようだから建国記念杯に出場するかもしれない。もしお前達が決闘と生じて彼らのレースを邪魔しようものがやめた方が懸命だぞ。」
「三竜騎士ですか····。」
三竜騎士という言葉に竜騎士科の集団の令息生徒の顔色が皆渋る。
三竜騎士はシャンゼルグ竜騎士校の学年の中でも随一の実力者である。竜騎士科最強のクラウンの称号持つゼクスの次に実力を持った竜騎士と騎竜である
「たしかに学年最強である彼らがこのノーマル種を倒してくれるならば我等の面子も保たれましょう。」
竜騎士科のリーダーは何かに納得したように頷く。後方の集団も三竜騎士という名を聞いて大人しくなる。
「ノーマル種、命拾いしたな。」
「氷結竜を倒したからっていい気になるなよ。学年最強である彼らが挑めばお前は終わりだ。」
ぞろぞろぞろぞろぞろぞろ
竜騎士科の集団は次々にノーマル種の俺にたいして捨て台詞を残して去っていく。
何かやたらと捨て台詞残していくなあ。
俺は竜口をはあとため息を吐く。決闘の嵐が止んだことに深く安堵する。
『災難だったな。ノーマル種。』
ゴツゴツした鎧のような甲殻の鱗に覆われた人化してない竜が俺に労いの言葉をかける。
ギャアラギャガアギャアラギャギャアギャアガアギャギャアラギャギャアガアギャアギャアギャア
(ありがとうございます。ノーマル種のライナです。主人である此方はアイシャ・マーヴェラスです。)
「知ってる。有名だからな。」
ゼクスはアイシャに視線を向ける。、
「建国記念記念杯に出場するきはあるか?。でなければあいつらは納得しないんだろう。」
「建国記念記念杯ですか?。」
アイシャお嬢様は王都にある聞いたことのないレース名に眉を寄せ首を傾げる。
「建国記念杯は建国記念日にパレードと一緒に行われるレースよ。ツーマンセルで竜騎士でも出場できる特別なレースなの。」
坦々と王都出身で詳しい騎竜乗り科一年のオリンが説明する。
なるほど。王都を建国を祝うレースか。なら王都を守る竜騎士が出場してもおかしくはないな。レースではこの異世界では神竜聖導教会の戒律で男は出場できないことになっているが。建国を祝うレースなら竜騎士が男でも出場できるのだろう。
「はい、レースなら出場します!。」
アイシャお嬢様は笑顔で返事をする。
まあ、竜騎士科や騎竜乗り科に睨まれている以上俺には拒否権ないしな。もうやるしかない。
何か本当に気が休まる日がないな。
レースの騎竜としてスローライフが味わえないと解っていたけど。ここまでトラブル起こるか?。もう今年はノーマル種の厄年だ。そうに違いない。人間トラブルというか竜トラブルというか絶えない時点で俺は今年は厄年であると確信する。
「なら、いい。俺もザインもあんたのノーマル種に興味あるからな。」
「ライナにですか?。」
「ああ、まあせいぜい俺達を飽きさせないでくれよ。」
ゼクスは軽く手振りの挨拶をするとザインと一緒に校舎の方に去ってしまう。
「ご免なさいね。アイシャ。竜騎士科と騎竜乗り科の揉め事に巻き込んでしまって。」
オリンは素直にアイシャに謝罪する。
「いいよ。ライナ、一緒に建国記念杯頑張ろうね。」
ギャアラギャ····
(そうですね····。)
話の流れてきに三竜騎士という学年最強とも戦わ、なくてはならないようで本当に億劫である。
はあ····休みたい·····
俺は全然休んでない気がする。王女様の子守に模擬レースやら喧嘩やら決闘やら息つく暇もない。これから来るであろう災難の数々に俺は正直萎えそうになってくる。
こういう時は何処かにいる美女に我が竜の背中に豊満な胸を押し付けて貰いたいよ。
ライナの長首を上げ空を見上げながらもそんな煩悩丸出しの想いを巡らせる。
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