第164話 帝国の強豪


    バザルニス神竜帝国大学

      特待生特別室


巨大なホールのような教室に令嬢とその相棒の騎竜が集まっていた。天井がプラネタリウムのようにドーム状の屋根の作りとなっている。そこに軍服と学生服を合わせた独特なデザインの制服を着た令嬢六人が集まっていた。令嬢の相棒である騎竜は何故か人化ではなく竜のままで主人である令嬢の傍に寄り添っている。

彼女と彼女達の騎竜は少し高めの土台に囲うようにそれぞれ鎮座している。

彼女達の担当教師とおもわれる教師が令嬢生徒達の中心に立つ。


「それでは我が大学の特待生徒の点呼を行う。名前を呼び上げられたら必ず返事をすること。」


特待生と呼ばれた令嬢生徒は行儀よく教師の会話を聞くものや勝手な態度をとるものなどまちまちである。


「三年ロファーシア・ミリアネル。」

「はい!。」


教師の点呼に真っ白な髪と瞳をした独特な出で立ちをした令嬢が丁寧に返事を返す。


「同じく三年ベローゼ・アルバーニャ。」

「ああ。」


教師の呼ぶ声に筋肉質の令嬢がぶっきらぼうに返す。赤黒の髪を鬱陶しそうにかきむしる。


「二年、カシャラ・ミスマーチ。」

「はあ~い♥️。」


ダイナマイトボディの制服に包まれた胸を揺らし。艶かしさを秘めた令嬢生徒は甘ったるく艶のある声で返事を返す。


「同じく二年マルケ・ロゼスタ。」

「ほ、ほーい!。」


特待生の令嬢の中で彼女は最年少であり。小柄な令嬢は悪ガキのようなおちゃらけた態度をとる。相手を小馬鹿にしたような感じで返事を返す。


「一年ミャルナ・パラライチ。」

「は、はい。」


緊張した面持ちで誠実な態度で返事を返す。


「同じく一度メレン・ミラソース。」

「ふあ~い。」


全くやる気が感じられない令嬢生徒は自分の騎竜に胸を押し付けたまま。気だるそうに言葉をかえす。


「全員揃っていますね。宜しい。では今後の方針を決めたいと思います。」

「セラフィオ先生が、あの、私の妹がまだ来ていないのですが?。」


三年のロファーシア・ミリアネルは手をあげ教師に進言する。

担当教師は点呼の用紙を視線を移すとはあと一息のため息を吐き。ロファーシアに冷たい視線を向ける。


「能力の低い令嬢生徒にかまけている暇はありませんよ。それに彼女は補欠です。特待生として一応位置づけられていますが。訓練についていけなければ置いていきます。」

「そんな·····。」


ロファーシアはかなしげに俯いてしまう。


「クスクス。」


マルケ・ロゼスタはまるで小馬鹿にしたような嘲笑を浮かべる。


「それでは話を戻します。もうすぐ三校祭です。当然三校対抗レースもあります。対戦相手である二校、アルナビス騎竜女学園と王立シャンゼルク竜騎士校から合同訓練の誘いがありますが。どうしますか?。

「必要ありません!。」

「バーサラ学園長!?。」


特待生の担当教師の言葉を遮るように年配の女性が現れる。冷たい厳格な顔たちに丸く整った髪を後頭部に束ね。老いながらその瞳にはぎらつくような鋭い眼光を放っている。


「弱小相手の学園と一緒に訓練しても何も得るものなどありませんよ。時間の無駄です!。それよりも。」


バーサラ学園長はロファーシアをジロッと睨む。


「ロファーシア・ミリアネル!。ゼピロスはどうしましたか?。」


ロファーシア・ミリアネルの傍だけは騎竜はいなかった。


「はい、今日は気分が乗らないと。」

「あの竜にも困ったものですね。しかし彼はこの学園内では最強の竜です。この帝国大学は強さこそ全て。強ければ何ものにもこの大学では許されるのです。故にあなた方は常に強さを磨き。より高みへと目指してください。よいですね!。」

「「「イエスマイロード!全ては帝国の為に!。」」」


特待生全令嬢生徒は皆口を揃えて返事をする。

バーサラ学園長はそんな特待生令嬢達の姿を一瞥し。紫波を帯びた顔がニコリと緩やかな笑みがこぼれる。


「それでは解散とします!。他校との合同訓練は我が校は出席しないということで。」

「解りました。」


セラフィオ生徒は軽く会釈する。

特別室からぞろぞろと特待生令嬢が出ていく。特待生は授業も外出もほぼ自由であり。騎竜は人化して主人と一緒に各々の好きな場所へと向かう。

筋肉質な令嬢ベローゼ・アルバーニャと人化した二本の角を生やした大男が坦々と廊下を進む。


「さて、ベローゼ。これからどうする?。」


角を生やしたいかつい大男は隣に歩く筋肉質な令嬢に問い掛ける。


「学園長の命で他校との合同訓練がなくなっちまったからなあ。他校の令嬢生徒とやり合いたかったんだが。」

「ベローゼ、お前の事だ。こんなことで満足しないんだろう?。」

「へっ、当然よ。学園長は他校との合同訓練には消極的だろうけど。こう強豪の相手とやりあわなきゃ。腕が鈍って仕方ない。それに····。」


ベローゼは気むずかしそうに顔が歪む。


「それに?。」

「この帝国大学色々駄目だわ。」


ベローゼは残念そうに頭を振る。


「駄目とは?。」

「この大学のやつら全部あのいけすかねえ竜に便りきりだぜ。確かに大学内であの竜が最強であることは確かだけどよ。大学そのものがあの竜にいいなりになるのはどうなのよ。それにロファーシア・ミリアネル。」

「彼女がどうかしたか?。」

「王家7大貴族で一応うちらの特待生のリーダーを務めているけどよ。騎竜が主人に従順じゃなくて、主人が騎竜に従順なのはどうなのよ。どっちが主人か騎竜か解ったもんじゃねえ。ロファーシアは一応騎竜を指示したりもするが。当の騎竜は命令なんてあまり聞いたことないぞ?。」

「そうだな。あんな、自尊心の塊のような竜を命令できる人間がいるとは思えないが。竜にも奴に逆らえるものもいないだろうし。」


二本角の大男は大きな顎の上にある唇を強く閉める



「だからムカつくんだよ!。ああ、あの忌々しいあの竜を誰かぶっ飛ばしてくれる奴いねえかねえ?。」

「おいおい、バザルニス神竜帝国大学の6騎特待生の令嬢が帝国大学のホープである竜の敗北を望むとはよお。」


二本角の大男は呆れたように自分の主人である筋肉質の令嬢に視線を向ける。


「お前だってムカつくだろう?。あの糞竜。」

「ああ、そうだな。奴には品性も敬意も戦闘の美学もない。奴の行いはまるで気まぐれの虐殺だ。俺は強い奴により闘争本能を高まらせる種族だが。奴に限っては闘争よりも寧ろ恐怖。得たいのしれない恐怖を覚えた。奴にあるのは憎悪とか怒りとかじゃない。ただ無情の悪意だけよ。殺すという行為に全く感情がねえ。だから俺は心底奴に恐怖を覚えてしまう。奴の能力のせいもあるが。勝てる気がしない。奴に勝てる可能性があるなら白銀竜か。或いは伝説の神足る竜か?。」

「まあ、何せよ。あの竜は本当に気に喰わねえよ。」


ベローゼはちっと不機嫌に舌打ちする。


「それでこれからどうする?。ベローゼ。」


ベローゼはニヤっと不適な笑みを浮かべる。


「決まっている。東方大陸のレース巡りをするぜ!。運が良かったら東方大陸の学園の奴らとも闘えるしなあ。」

「大丈夫なのか?。バザルニス神竜帝国大学に知られたら問題にならないか?。」

「け、知るかよ。元々私は雇われた身よ。大学の下僕になったつもりもないさ。お前もついてこいよ!。我怒羅。」

「ああ、久々に血が滾るわ!。」

「へっ、それでこそ私の相棒よ。」


西方大陸の帝国大学の令嬢生徒は東方大陸にて闘いの地を求める。





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