第151話 海王竜リヴァイン

大きな巨大な白い貝殻を下敷きのベットにボリューム感溢れる胸に真珠色の髪と瞳を宿したパール・メルドリンは礼儀正しく座っていた。

目の前には人魚族による華麗な舞いが披露されている。

玉座と言えるべきか更に天井やホールではないが。珊瑚礁が積み重なった高台に人魚族の中で高貴な出で立ちをした人魚族の女王が鎮座する。その隣には沢山のヒレ帯びた巨大な海洋型の竜が興味無さげに横になっていた。


「パール、どうかしら?。我が踊り子達の舞いわ。」

「あ、はい、とても素晴らしいです。叔母様。」

「お姉様と呼んで。」


その人魚族の女王は叔母さんと呼ばれるのを嫌なのか。お姉さんと呼ぶようにマウンドをとってくる。


「す、すみません。お姉様。」


言い替え改めてパールは謝罪する。

承諾もせずにほぼ誘拐当然に拉致られたパール・メルドリンは途方に暮れていた。メルドリン家で母様が心配し。捜索隊がだされてるかもしれない。でも今自分が海底の底にある都市にいるなど誰も知るよしもないだろう。自分が人魚の血を引いていることは解っていた。現に海中にいるのに普通に息ができているのだから。人魚族の女王であるサラス・アビラニスは私を次期女王にする気であり。何でも私のご先祖にあたるセレスラヌ・アビラニスこそ人魚族の先代の女王であり。その正統な女王継承者は自分にあるというのだ。ご先祖様に関して私としては本当に無関係であり。正統な女王の血を引いていると言われても今更人魚族の女王にされても困る。


アイシャどうしてるかなあ?。私がいなくなって心配しているかなあ?。私が人魚族の女王になり本当に人魚になってしまったら。もうアイシャとお茶会することもレースに一緒に出場することもできない。段々自分に置かれた状況に気が滅入り涙が出てくる。


「泣いているの?。」


声をかけられ悲嘆に暮れそうになったがパールは思い止まる。顔を上げると目の前に私の従姉妹?にあたる女王サラス・アビラニスの娘ファソラが立っていた。薄いベールの衣を纏い。胸を貝殻だけを覆うようなほぼ素肌のような姿をしていない。女王の娘として凛とした立ち振舞いをしており。他の人魚族と違い真珠色の長い髪はバッサリとショートカットに切られている。それでも私から見てもとても美しい王女である。例えるなら気高くも透き通る海に咲く一りんの華のような感じである。この娘を次期女王にすればいいのに叔母様に対して内心そう不満をもらす。


「お母様に関して申し訳ないと思っているわ。無理矢理連れてこられて迷惑でしょ。」

「そ、そんなこと·····。」

「貴女、ちゃんと本心をさらけだした方がいいわよ。でないと貧乏くじを引くことになるから。後悔する前にね。でも次期女王の座に関してはご免なさい。私には動向できないわ······。」


ファソラは何か言いたそうで重く唇を閉じる。


「いいえ、大丈夫です。私も何とか女王の件は断るつもりです。親友に何も告げずにいなくなるのは嫌ですから。」


パールはきゅっと唇を締め。立ち向かう決意を露にする。


「そう、貴女に水精のご加護ありますように。」

「水精?。」

「貴女達の所で言う水の精霊よ。私達人魚族にとって水の精霊は特別だから。」

「そうなんですか。」


人魚族が水の精霊と関係あるとは初耳である。どちらかと言えば海に関して関係がある気がする。海に関する精霊とかいないのだろうか?。


『ファソラ、何処か行くのか?。』


興味無さげに無関心な態度で寝そべっていた海洋型の巨大な竜(ドラゴン)は大きな身体を揺り起こす。幾つものヒレをひらひらさせ。海洋型の巨大な竜はファソラに青く輝いた竜瞳が注がれる。


「ええ、少し都を散歩するわ。毎度お祭り状態にも飽き飽きなのよ。」

『ならば我も行こう。こうも騒がれると。正直好かん。』

「リィヴァイン、貴方も大概ね。」


ファソラは深いため息を吐く。


「パール。何か欲しい物はある?。」

「特に無いわ。手紙とかある。お母様とアイシャに連絡とりたいんだけど。」

「お母様がそれを許すとは思えないけれど。解った。善処してみる。」


ファソラは珊瑚礁の積み重ねってできた宮殿を出る。天井など存在しない珊瑚礁の宮殿を海洋型の巨大な竜は泳ぐように上がる。女王はそれを気にも止めず。新たな女王への歓待に力を入れていた。


人魚族のネウに案内され。人魚族都市オーシャンパールの正門につく。門の前には美人の人魚族の門番がたっている。

二人は俺達に気付くと警戒心ではなく奇妙なものを見るような眼差しを向ける。


「ネウ、その方達は?。」

「私の知人よ。通していいかしら?。」


人魚族の美人の門番は俺をスルーして人間であるアイシャお嬢様とシェークさんを睨む。その後、竜であるレイノリアと水空竜ソイリに視線を移し。最後に銀晶竜のソーラさんに視線が向けられると美人の人魚族の門番は強張ったように硬直する。因みにノーマル種である俺は完全にスルーである。


「今は大切な海冠式よ。部外者をいれる訳にはいかない。特に人間は。」

「固いこと言わないでよ。」


なにやら人魚族の門番とネウがもめはじめる。

パールお嬢様を人魚族の女王に即位させる為に人間の侵入は邪魔になると人魚の女王は判断したのだろうか?。こうなると強硬突破の手段を取らなくてはならなくなるけど。大丈夫か?。そうこう言っている内にアイシャお嬢様とシェークさん水空竜ソイリ、青宮玉竜レイノリアでさえ臨戦態勢をはじめる。銀晶竜のソーラさんはいつものニコニコ顔を浮かべているが。奥の内にはとてつもない圧を秘めていた。


不味いなあ~。このままだと人魚族とひと悶着になりそうだ。人情沙汰もとい人魚沙汰になりかねない。


俺は穏便にすます方法を瞼を閉じて思考する。


ポムポムポムポム・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カーーーん!!


俺は閃いた。嫌、閃いてしまった。最悪な方法を。はっきり言って倫理的に抵抗ある方法ではあるが致し方ない。人魚族との対立をさけるために俺は一肌、嫌、鱗肌を脱ごう。



ギャ ギャギャギャア

「うっ、く、苦しい···。」


俺は腰を落とし竜の素手を腹にあてる。腹痛に苦しむ演技をする。


「ライナ、どうしたの?。」


演技だと知らずにアイシャお嬢様は心配そうに俺に駆け寄る。我ながら迫真の演技力である。自分の才能が恐い。


「ライナ、大丈夫ですか?。」


レイノリアも心配して声をかけてくる。


ギ·····ギャギャ····

「も····漏れる····。」


俺は苦しそうに今にも出すもの出そうな苦悶の竜顔をさらす。


「困ったわ。トイレあったかしら。」


シェークも困った顔をする。

そもそも海中にトイレがあるかと言えばあっても水中なので色々と意味が無い気がする。


ギャア!!ギャア!!ギャギャアガアガアギャア~~~!!

「漏れる!!漏れる!!。う○こが漏れるううう~~~!!。」


ギャアああああああーーーーーーーーーー!


俺は地獄の苦しみ似た呻き声をあげ竜の身体を激しくよじる。



ドッ ドドドドドド~~~☁️☁️☁️☁️☁️☁️!!!!


俺は大声で漏らす宣言を吐きながら門番をすり抜けて人魚族の都市を疾走する。


「あっ!待て!そこのノーマル種!。」

「近衛人魚隊!。その不法侵入のノーマル種を捉えて。」


美人の人魚の門番達は慌てて仲間を呼び。ノーマル種の後を追いかける。



「ど、どうしよう。早くライナをトイレに行かせないと。」

「あんな足手まといはほっとくのです!。いても役には立ちません!。」

「ソイリ、ライナは役立たたずじゃありません!。」

「困ったわね·····。」


四人ともライナの突飛な行動に途方に暮れる。


「このまま女王の宮殿に向かいましょう。どうやらライナは陽動を買って出たようですから·····。」


ライナの意図をいち早く察知した銀晶竜のソーラはみんなにそう告げる。


「あれ、陽動だったんですか?。私はてっきりあのノーマル種が何か悪いもの食って腹壊したかと思っていました。」


水空竜ソイリはポカーンと口を開け。あの役立たずなノーマル種がこんな機転を巡らすなど。思ってもみなくて驚いていた。


「だからライナは役立たずじゃないのです!。」


青宮玉竜レイノリアはソイリにそう反論する。


「取り敢えず門番いなくなったから私達宮殿に向かわない?。」


案内人魚のネウはみんなにそう提案する。


「そうね。私達はパールお嬢様を救わなくてはならない。ライナの行為を無駄にしてはいけない。」


ノーマル種のライナが健気に自分達の突破口を作り出したことにシェークは感謝の意を込める。


「ライナ····おっきい方はちゃんとトイレでしてね····。」


アイシャお嬢様だけは立ち去り際そう呟く。アイシャお嬢様だけはライナの意図を全然理解していなかった。





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