第82話 花と幻
『久しぶりですね。この姿になるのは····。』
グルルルル
四本角が更に伸び、幻竜ラナシスの骨格も鱗も身体も異様に変異した。
何だあれ?変身したぞ。
俺と何千の剣を出現させて戦闘中である剣帝竜ロゾンの場所から遠目で幻竜ラナシスの容姿の変化に驚愕の眼差しをむける。
『幻竜ラナシスの幻鱗化だな。ロード種幻竜という竜種は唯一ロード種でありながらレア種になることができる特別なドラゴンなのだ。』
まじで!?。
俺は戦闘中の相手であるロゾンの説明に驚愕というか羨望な眼差しをラナシスさんに向ける。
竜種って変身できるのか!?。もしかして俺のようなノーマル種も変身したら格好良い竜になれるかも。
俺は理想な変身した竜像を想像してみる。
ノーマル種ライナ~変身っ!!。
ライナの身体が光に包まれ神々しい竜へと変身をとげる。
レア種インペリアルエクスデントスラッシュドラゴン(切り裂き延びし皇帝竜)!!。
『ノーマル種は変身出来ぬぞ。』
ヌオおおおお~~~。
せっかくのかっこいい竜姿の姿を想像していたのに。剣帝竜ロゾンの水を指す一声で一気に妄想がかきけされる。
俺の竜の長首が深く項垂れ。意気消沈しように肩を落とし落胆する。
良いじゃないか!。夢みたって!。ノーマル種が変身できないことははなっから解ってりゃああ~!。それでも変身は男の夢で憧れで浪漫なんだぞ!。変身できなくても、変わらなくても。夢を見たって良いじゃないかああ!!。うおおおーーーーーーーん!!。
ジョーーーーーーー
俺の竜瞳から激情の血の涙が流れる。
『ああ···何だか···すまぬ····。』
「········。」
戦闘中でありながらつい剣帝竜ロゾンはライナの姿を見て居たたまれなり謝罪する。
「いきますよ。姉様。」
変貌をとげた幻竜ラナシスに乗るキリネが突っ込む。
「仕方ありませんね。こうなったら全力で迎えうつしかありません。ソリティア!スキルを放ちなさい。」
『はい、お嬢様。フラワー・モンロー(豪華絢華吹雪)。』
扇ぐローズ色の翼から無数の花びらが吹雪のように流れだす。
花びらは吹雪のようにつっこんでくるラナシスの正面へと吹き付ける。
『魅華竜の翼は扇ぐと花吹雪が出るんです。魅華竜からでた華吹雪は催淫効果もありますけど。』
「くっ。」
ラナシスの背に乗るキリネは頬を染め赤く上気していた。
魅華竜ソリティアから出す催淫効果のある花吹雪に充てられしまったようだ。
『くっ、なんてふしだらな攻撃ですか!。』
ラナシスは魅華竜ソリティアの攻撃に腹立たしく憤慨する。
魅華竜ソリティアの特性は相手を魅了させることではない。魅華竜は主に竜を誘惑することに長けた竜である。しかしそれが竜だけでなく人間にも作用する。魅了誘惑型の魔法に長け。魅華竜の特性から放たれる花びらや香り分泌液には催淫、媚薬効果があり。マンネリ続きの貴族の夫婦には精力剤、或いは婦人達の媚薬として重宝されている。陰の噂では魅華竜の鱗を使って強力な媚薬薬を作り意中の相手を思い通りにするという黒い噂も絶えなかった。故にレア種魅華竜は貴族の人間達からは乱獲されやすい対象の竜種でもあった。
王の法律の制定でレア種魅華竜の乱獲は防げられたが。それでも魅華竜という竜種は自分勝手で自由奔放な性格をしており。色んな大陸、色んな土地では竜を漁って(交尾)はたのしんでいるのである。
ひらひらひらひらひらひらひらひら
花吹雪が流れおちる。
キリネは頬を赤らめ股をもぞもぞしていた。
『い、いけない。キリネには刺激が強すぎる。』
幻竜ラナシスは魅華竜ソリティアの花吹雪の方位からそれる。
さらさらさらさらさらさらさら
ソリティアの放つ花吹雪はそのまま行き場を上空を漂い散らばる。
「ちょっと、ソリティア。私の妹に何をしてくれているのですか!?。」
セシリアは白銀の眉を寄せ深いに顔をしかめる。
『仕方ないですよ。私の攻撃はそういった特性なのですから。セシリアもご存知でしょうに。』
「はあ、私の最愛の妹キリネが淫乱になってしまう前に早々に決着をつけねば。」
レイピアを構え次の行動に移す。
『キリネ、大丈夫ですか?。』
「ううん、ちょっと体が熱いけど。大丈夫。」
キリネははあはあと甘い息を吐きながら火照る体を理性で抑え込んでいた。
キリネにとってあの魅華竜ソリティアは害や毒でしかありません。
早々に決着を着けねば。
幻竜ラナシスは久しぶりに本気を出すことにした。幻竜という竜種は幻の竜と異名を持つ竜である。幻覚や幻影という意味ではなく。そのまんまの意味で幻の竜なのである。幻竜はロード種とされているが。何故レア種の枠組に位置付けられていないかと言うと要因は幻鱗化が成せるかどうかなのである。幻竜の中で幻麟化が可能なのは極本の一部であり。貴族の領主がロード種幻竜を手に入れても幻麟化が可能かどうか分からないのである。故に幻竜というロード種は当たり外れが極めて高い竜種なのである。
『フラワー・モンロー(豪絢華吹雪)。』
再び魅華竜ソリティアの媚薬効果を持つ花びらが放たれる。
『同じ攻撃はくらいません。オルドベイク(焼個の帳幕)』
幻竜ラナシスから赤みを帯びた布幕のようなものが現れ媚薬効果を持つ花びらを包み燃やし固める。
『厄介な技を持っていますね。』
魅華竜ソリティアは不快に竜顔をしかめる。
「私が隙をつくります。その隙にソリティア、貴女は魔法を放って下さい。」
『解ったわ、セシリア。とびっきりの魔法をあのオバサン年増騎竜におみまいして差し上げますわ。』
魅華竜ソリティアはローズ色の翼を広げ幻竜ラナシスに接近する。
構えたレイピアをラナシスの背に乗るキリネに打ち込む。
キン ギギィ
キリネはナイフを持ち手を変え。セシリアの細剣の刀身をナイフで受けヒルトに引っかけ抑えこむ。
「今です!ソリティア!!。」
『ラナシス先輩私の魅了魔法をお受けになって♥️。』
セシリアは魔法陣を展開する。
『ディザイア・テンプテーション(欲求の魅了)。』
魔法陣からピンクの光が放たれる。
『リフレクト・マジック(魔法反射)。』
『何ですって!?。』
ピンクの光が反射する魔法の防壁により光はそのままソリティアの背に乗るセシリアに振りかける。
幻竜ラナシスは直ぐに魔法を展開させてセシリアの魅了魔法を跳ね返したのだ。
幻竜ラナシスは一旦セシリア達から離れる。
『貴女の行動は手にとるように解りますよ。これでも伊達に年の功を重ねている訳じゃありませんから。』
幻竜ラナシスは優雅に竜の口が含み笑いを浮かべる。
『年増の騎竜が~~。』
魅華竜ソリティアは悔しげにローズ色のくちばしを歪ませる。
「姉様?。」
魅了魔法をもろに喰らったセシリアはソリティアは背に呆然とした。
暫く心ここに有らずのような感じで直立姿勢のまま座っていたが。キリネに視線を向けられるパアッと赤く頬を染めニッコリと高陽感満ちた笑顔を浮かべる。
「あっ!キリネ♥️私の最愛な妹!。好き♥️好き♥️。」
「ね、姉様っ?。」
普段は感情を上手く社交面で覆い隠すことに長けた姉が。感情を思うままさらけ出していることに妹のキリネは大いに戸惑う。
『う~ん。これはどうしたものか。』
魅華竜ソリティアは魅了魔法攻撃の失敗に被害を被った自分の主人に対して何とも言えない表情で途方に暮れる。
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