第54話 因果応報

 



 ティナやオリビアに念話を送ったあと、4万以上に膨れ上がった軍をまとめてゲートでオズボードの領都へと移動した。


 魔導放送を見たリズたちは、魔帝が生きていた事にかなり驚いていたよ。


 俺は荒川さんとかもいたから、しぶといよな~って言って適当に合わせたけど。蘇生は軍の皆に隠すつもりはないけど、魔帝が一度死んだと知られるのはまずい。加護のことに繋がる可能性があるし。


 裸の付き合いをする恋人たちには言わないわけにはいかないから、領地に帰ったら皆に説明しようと思う。



 領都に着くと軍に休むように指示をしたあと、リズとシーナと弥七を連れてオズボードの宮殿に向かった。


 宮殿に向かう途中で、治安維持を任せていたうちの軍と義勇軍の兵士が街中を警戒している姿が目に映った。そして大通りには、様々な種の獣人が至るところで磔にされて死んでいた。


 街に住む帝国人は特に怯えている様子は見受けられず、夜だというのに出歩く者もちらほらといた。


 俺はそんな住民たちを見て、占領政策は成功しているようだと思いながら宮殿へと入っていった。




 宮殿に入ると入口のエントランスで、オリビアがくノ一たちとともに出迎えてくれた。


「コウさん、リズさんにシーナさんも無事で良かったです」


「オリビア、留守番お疲れ様」


 俺はオリビアを抱きしめ、感謝の言葉を告げたあとキスをした。


「ん……コウさん。改めてお父様を助け出してくれてありがとうございます」


「遅くなってごめんな。まあ元気だったよ、魔帝もな」


「そ、そうです! 陛下が生きておられたなんて、本当に信じられませんでした」


「だよなぁ。あたしも放送見てびっくりしたぜ! 」


「ですです! コウさんの言った通りしぶとかったです」


「ははは、まあそのことは後で詳しく話すよ。それよりオズボードは移動させておいてくれた? 」


「はい。静音さんが地下へ」


「ならとっとと終わらせるか。もう夜だし明日にはクラウスも来るしな」


 明日の朝にはフォースターの長男のクラウスが沖縄から来る。この公爵領はしばらく彼に統治をしてもらうつもりだ。俺が統治するよりも、同じ帝国人に統治させた方がいいだろうからな。


 そう、俺はこのオズボードの領地を全てもらう。それだけじゃない。オズボードの財産も、経営する企業も全てだ。そしてさらに隷属させた、オズボードの派閥の者たちもそのまま俺の傘下、貴族社会でいうところの寄子よりこにする。オズボードと台湾からうちを攻めた子爵は一族ごと滅ぼすが、ほかの奴らはまあ未遂だしな。助命する代わりに領地を割譲させたうえで、賠償金を払わせ今後は保有できる軍備を制限させる。


 その代わり安全保障面は協力してやる。有事の際は寄親であるアクツ家が軍を派遣し守ってやる。これは俺に隷属している当主が代替わりをしたあとに、裏切ろうにも裏切れなくさせるためだ。帝国が侵攻してくる前のアメリカと日本の関係のようにな。


 ほかにも魔帝には色々と要求するつもりだが、それは全て終わってからだ。こっちも準備が必要だしな。今は帝国貴族の権利として、占領地をもらうだけにしておく。このテルミナ大陸に領地。しかも日本から近い土地を手に入れたことで、今後また俺に敵対する者が現れればそいつの領地をすぐに叩くことができるようになるというわけだ。


 しかも手に入れる土地はこれだけじゃない。まあその辺はこれから魔帝をゆするつもりだ。今回活躍したのはうちだけじゃないからな。


 俺はそんなことを考えながら、オリビアとリズたちを連れてオズボードの待つ地下へと向かった。




 ♢♢♢♢♢




「だ、男爵! アクツ男爵! 我が輩をこんな所に連れてきてどうするのだ!? わ、我が輩はちゃんということを聞いたのだ! 殺さないでくれなのだ! 」


「あ、アクツ男爵様。私たちはあのスキルの効果により裏切ることはありません。どうか命だけは……」


 俺が地下室に入るとそこには巨大な檻と観覧席があり、静音と数人のくノ一たちがそこに座っていた。


 檻の中には静音たちにより殺された5体のオークの死体があり、その横では俺に気づいたオズボードとペドが強化ガラスの向こうで両手を合わせて命乞いをしていた。


「ああ、ご苦労さん。おかげで後方を心配せずにロンドメルの野郎を殺せたよ。魔帝も復活したし、この反乱はもう終わりだ。というわけで、用済みになったお前たちには死んでもらうことにした」


「そ、そんな! 酷いのだ! 利用するだけ利用して殺すなんて悪魔なのだ! 」


「うるせぇ! テメーが先に手を出してきたんだろうが! それもだまし討ちをしてきたくせに今さら命乞いなんかしてんじゃねえ! もういい、命令だ。俺に話しかけるな」


「「うっ……」」


「さて、静音。開けてくれ」


「御意! 」


 俺はおとなしくなったオズボードたちを横目に、静音に檻の入口を開けてもらい中に入った。


 そして死んでいるオークの口にカプセルを入れ、鼻の付近に黄色い粉末を振りかけていった。


 5匹全部にそれをしたあと周囲を見渡すと、リズを初めくノ一たちや弥七が不思議そうな顔で俺を見ていた。


「なあコウ? オークの死体になにしてんだ? 」


「まあ見ててくれ」


 俺は不思議がるリズにそう言って聖剣を取り出し、剣先をオークに向けスキルを発動した。



『死者蘇生』



「なっ!? 死者蘇生だって!? 」


「聞き間違いじゃないです? あ……魔法陣から光が……」


「コウさんこれは……え? オークから魔力が……で、では本当に? 」」


「しゅ、主君……」


「ああ、死者を蘇生させるスキルだ。ある程度肉体が残っていることと、魂が現世にないと成功しないけどな」


 俺は驚くリズたちに、魔石から魔力を吸収しながらそう答えた。


 キツゥゥ……五匹いっぺんはやりすぎた。聖剣を使っても全魔力もってかれそうになったわ。


「マジか……それじゃあ魔帝が生きてたのって……」


「それはあとで話すよ。ちょっと複雑なんだ……それより静音。彼女たちを連れてきてくれ」


「ぎょ、御意……」


 俺はくノ一たちと一緒に目を見開き驚いていた静音に、別室で待機してもらっている女性たちを連れてくるように頼んだ。


 すると静音はくノ一たちを連れ、観覧席の後ろにある部屋へと入っていった。


 それから少しして、隣の部屋からセレスティナと12人の女性が現れた。どの女性も美しかったが半分以上の女性の目は虚で、くノ一たちに支えられてやっと立っているという状態だった。


 かわいそうに……


 なんでもオズボードの豚野郎は女性が泣き叫ぶ声に興奮するらしく、セレスティナを含め側室や妾の女性たちは短剣で斬られたり刺されたことが何度もあったらしい。


 そして極めつけは飽きた女性たちをオークに襲わせ、その姿を見て興奮していた。そのあとは家臣に下げ渡し、その家臣はさらに自分の部下の性処理用の女として使わせていたらしい。


 彼女たちの手当てをしたオリビアからそれを聞いた俺は、ここを出発する前に静音にその家臣を殺すことと、下げ渡された彼女たちを集めてもらえるように頼んでいた。


 家令のペドの被害にあった少女たちはここには連れてきていない。これからやることは子供には刺激が強すぎるからな。あとでペドの死体を撮って見せるだけにしておく。


 しかしそれでもこんなにいたとはな。いまその心の傷の元凶に地獄を見せてやるからな。


「御屋形様。連れて参りました」


「ああ、ありがとう。セレスティナ、それとオズボードにより地獄を見せられた皆さん。今からアクツ男爵家との戦争に負けたオズボードと、その家令であるペドを処刑します。あなたたちの手で殺させてもいいんですが、それよりも良い方法があるのでそこで見ていてください」


 俺が怯えた目で見る女性たちにそう言うと、彼女たちの視線は一斉にオズボードへと向けられた。


 その目は徐々に憎しみに変わっていった。


 俺はそんな彼女たちをよそに、蘇生から目覚めていないオークたちの腕めがけて風刃を放ち檻から出た。


  


 風刃で腕を軽く切られたオークたちは痛みに目を覚まし、そして一瞬よろけたあとオズボードたちへと視線を固定した。


「オズボード、ペド。命令だ。自死のほか、オークへ抵抗することも禁じる」


「なっ!? こ、殺されるのだ! ヒッ!? な、なんなのだ!? く、来るななのだ! 我が輩は男なのだ! なんでおっ立てているのだ! 」


「ククク……オークには発情期DXを飲ませ、魔茸の胞子を嗅がせてある。今ごろ幻覚により見たいものを見ているはずだ。精力剤で元気になったオークが見たいもの……わかるだろ? 」


 そう、俺がさっきオークの口に入れたカプセルは超強力な精力剤だ。そして振りかけた粉は、蟲と植物の上級ダンジョンの下層に自生する強力な幻覚を見せる魔茸の胞子だ。


 そもそもオークは発情すると、男でも襲うことが希にある。そんなオークに強力な精力剤を与え、魔茸の胞子により幻覚を見せたんだ。きっとオークたちにはオズボードが美女に見えていることだろう。


「うげっ! マジかコウ! エグッ! 」


「ま、まさかです? オスが男の人を襲うんです? 」


「ひっ!? く、来るな! 私は幼女以外は……ぎゃっ! 」


「ペド! い、イヤなのだ! オークに掘られるのはイヤなのだ! こ、ここから出すのだ! テ、テレーゼ! カリナ! 夫である我が輩がピンチなのだ! 助けるのだ! なんだその目は、なぜ黙って見てるのだ! 早く助……や、やめっ……ブヒッ……」


 俺はオークに押さえつけられ、ズボンを脱がされていくオズボードたちに背を向けた。


 ウゲッ! これ以上は気持ち悪くて見てられないわ。


「静音。オズボードが気を失ったらその都度攻撃して起こしてくれ。そして悪いが彼女たちが気が済むまで付き合ってやってくれ」


「御意。しかしさすが敬愛する御屋形様でございます。彼女たちが受けた苦しみをそのままオズボードにお与えになるとは……確かに男にも一つ穴がございましたね。こんな拷問があったとは……もしもこれが美男子である御屋形様だったなら……」


「そ、それじゃあ俺は休ませてもらうから。リズ、シーナ。オリビアに弥七も行こう」


 俺は頬を紅潮させてなにやら腐臭がただようような事を口走る静音が怖くなり、隣で吐きそうな顔でオークを見ていたリズたちに声を掛けて出口へと小走りで向かった。


 背後からはオークの興奮する声と、オズボードたちの悲鳴が聞こえてくる。


「うげっ! 変なもん見ちまった! 」


「ううっ……気持ち悪かったですぅ」


「オークに男の人が……夢に出てきそうだわ」


「主君……まさかとは思いますがそういった趣味が? 」


「ねえよ! なに言ってんだよ弥七! 」


 俺は真顔で男に興味があるのかと聞いてきた弥七へ即座に否定した。


「左様でございますか……戦国時代は主君と家臣の間でそういったことが普通にあったと、そう文献に書かれておりましたゆえ……もしも求められたらと少々悩みました」


「いや少々ってなんだよ! もっと悩めよ! 違う! そういう意味じゃない! 嫌がれって事だからな? いいか? 俺にそんな趣味はねえからな? 勘違いすんなよ? 」


「……御意」


 本当に大丈夫だろうな……俺に男とする趣味があると思われてないだろうな。ドが付くほどの真面目な弥七だ。ある日自分の代わりにって美少年のダークエルフを連れてきそうで怖い。




 それから俺たちは第一師団の荒川さんやレオンや三田たち各士官と一緒に、領都の貴族用の料亭で夕食を食べながら今後の事を話し合った。


 その結果、領都にはくノ一たちを宮殿内の警備要員として残し、三田たちニート連隊800名には領都の治安維持をやってもらうことになった。グリードの義勇軍5万には、領都周辺に展開してもらうつもりだ。


 まあ三田は義勇軍の監視もしてもらう。あとから合流した奴らから、結構な数の違反者が出たからな。その中でも住民の虐殺や強姦をした者、もしくはしようとした者はリズや御庭番衆にとっくに殺されている。略奪や未遂の者は両腕を切り落とされ、この領都の城壁に吊されてる。こいつらはこれから仲間たちによる石投げの刑が待っている。その後に反省しているようなら治してやるつもりだ。


 そして打ち合わせが終わり、隷属させたオズボード公爵家の高等文官たちにクラウスが来たら従うように命令した。ロリコンじゃなかったおかげで、ペドの腹心の部下が殺されずに残っていたからスムーズに統治できると思う。


 クラウスにはオズボードの一族と、うちを攻めてきた子爵の一族の公開処刑をやってもらわないといけないからな。負担をなるべく軽くしてやりたい。


 その後ゲートが再使用できる時間を待っていると、静音からオズボードとペドが魔人化し苦しみながらオークに喰われて死んだとの連絡が入った。


 俺は静音にオズボードの遺体を撮影した後に、オークごと焼き払い地下室を封印するように指示をした。そして引き続き女性たちの世話も頼んだ。


 元妻たちの目の前で6時間近く5匹のオークに輪姦され、最後は魔人化しても抵抗できず喰われて死んだか。肥え太った豚にはお似合いの末路だったな。


 俺はもう二度とあのウザイしゃべりを耳にしなくて済むことに清々していた。


 そしてゲートを開き、第一師団を引き連れ領地へと戻ったのだった。



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