第10話 従属
「おお、貴殿がアクツ男爵か。出迎えに感謝する。私はこのたび帝国ニホン領の管理を任されることになった、クレナイル・シュヴァインだ。上級ダンジョンを攻略するほどの武を持つアクツ殿とは、今後隣領同士友好的な関係を築きたいと思っている。爵位など気にすることなく、気軽に接してくれると嬉しい」
「初めましてシュヴァイン伯爵。阿久津 光です。そう言ってもらえると助かります。こちらのエルフは家令のエスティナで、彼は外交担当のフォースター準男爵です」
俺は笑顔で帝国式の挨拶をする伯爵へ挨拶を返した後に、ティナとフォースターを紹介した。
リズとシーナは御庭番衆とともに後方で見物している。この発着場の中央に立つ俺の側には、ティナとフォースター。それにレオン率いる親衛隊が10名いるだけだ。
対してシュヴァイン伯爵の側には、文官らしき格好をした線の細い男性が立っており、その後方には黒鉄のハーフプレイトメイルをまとった騎士が20名ほど整列している。
そしてそのさらに後方には、伯爵が連れてきた2隻の飛空戦艦と1隻の重巡洋艦が停泊していた。
俺から紹介を受けたティナとフォースターは、それぞれが胸に手を当て少し頭を下げる帝国式の挨拶を伯爵へと行った。伯爵はそれに対し笑顔のまま、同じく帝国式の挨拶で応えていた。
そしてお付きの文官にもフォースターは挨拶をし、文官も友好的な雰囲気で挨拶を返していた。
傲慢な貴族が来たらどうしようか少し身構えていたけど、わざわざ下級貴族のところに出向いてきて非友好的な態度はとらないよな。こうやって表向きでも友好的に接してくれれば、俺もそれ相応の態度で接するんだけどな。いきなり見下してくる貴族の多いこと多いこと。
しかしこのオッサンすげえ太ってるな。赤いロングジャケットがやたら小さく見えるし、ベージュのヒラヒラのシャツなんかボタンが今にもはち切れそうだ。ややピンクに近い赤い髪もふさふさだけど、顔がデカイ分ナスのヘタみたいに見えるし……クレナイルというか、紅のブタって感じだな。
まあ友好的だから見た目とかはどうでもいいけどな。ティナにもちゃんと挨拶を返したし、ハマールがしっかり言い聞かせているのかもな。
さて、挨拶も終わったし悪魔城で少し会談して、日本総督府をしっかり監視してもらうよう言ったらあとはフォースターに丸投げでいいだろう。
俺が全員処刑させ機能停止した日本総督府は、フォースターの息子のクラウスが管理者代理をしているうちに総選挙を行わせ再度選ばせた。もちろん総督もだ。そして総督になった者にしっかりきっちり脅しをかけさせた。さらにドサクサで法もいじり、獣人とエルフ女性を拉致誘拐した者と、危害を加えた者は通常の刑罰よりかなり重いものになるようにした。
これで完全に防げるとは思えないけど、心理的圧力にはなると思う。さすがに数十万人いる獣人たち全てを見守るのは難しいからな。
ああ、もちろん南日本総統府でも同様の法を設定してある。
「それではシュヴァイン伯爵様。城へとご案内させていただきます」
「うむ……ああそうだった……アクツ男爵殿にはお近づきの印としてその……贈り物を持ってきておってな」
「贈り物ですか? それはそれは……お気遣いいただきありがとうございます」
フォースターが文官との挨拶を終え、伯爵をうちの飛空挺に案内しようとした時。伯爵が思い出したように贈り物があると告げてきた。
俺はオリビアから同等以上の貴族の領地に行く時は、自分の爵位に見合った品物を持参するのが常識と教わっていたので少し驚いた。
上位の貴族から下位の貴族に贈り物とかあるのかね? なんかフォースターも驚いてるし、やっぱ普通は無いのか。伯爵もなんだか言い難そうだから、内心はなぜ上位の自分がとか思ってるのかもしれない。
恐らくハマールに持って行けとか言われたんだろうな。まあもらえるなら貰っておくけどな。
「うむ。少し大きい物になるが、とても貴重で素晴らしい物だ。いま運ばせるから待っていてくれ」
「それほどの物を……ありがとうございます。どんな物を頂けるのか楽しみです」
「う、うむ……それでは運ばせる」
俺が笑顔でそういうと、伯爵は引きつった顔で頷き手をあげた。あれ? ちょっと期待しずきてプレッシャーを与えたかな? でも本人が素晴らしい物だと言うんだから期待しちゃうよな。
伯爵が手をあげると後方に停泊していた戦艦のハッチが開き、そこから一台の魔導トラックがこちらへと向かってきた。
トラック? そんなにデカイ物なのか? なんだろう? もしかして最近発売されたばかりの小型グライダーとかかな? 確か『ホーク』とかいう名前だったな。
ホークはその名の通り鷹が翼を広げた形をしていて、一人乗りの空を飛ぶ乗り物だ。鷹の背にある取手を掴んで後方に足を伸ばして乗るんだけど、もう有名な風の谷のアニメ丸パクリでさ。白ではなく焦げ茶色という違いくらいしかないんだよね。まあ世界征服した帝国に著作権なんて関係ないんだろうけど。
でも人気があり過ぎて買えなかったんだよな。一応予約してるけど入荷待ちなんだ。リズが欲しいって言ってたから手に入れたかったんだよね。贈り物がホークだったらいいな。リズが喜ぶ顔を見たいなぁ。
俺は向かってくるトラックの幌を被っている荷台を見つめ、ホークが乗ってますようにと祈りながら待っていた。
そしてトラックが10mほど先で止まり、荷台から真っ白なフルプレイトメイルを着た女騎士が4人ほど降りてきた。
その女騎士たちは全員が美しい顔立ちをしており、鎧のところどころに描かれている赤い薔薇がよく似合っていた。
彼女たちは荷台に残っていた女騎士から大きな正方形の箱を受け取り、荷台から降ろし大型の台車へと乗せていた。
その箱は2m四方はありそうな銀色の箱で、何かの金属でできているようだった。
そして荷台に残っていた女騎士たちもトラックから降り、総勢10名の女騎士たちが台車を囲むようにしてこちらへとゆっくり歩いてきた。
「シュヴァイン伯爵。おっしゃる通り相当貴重な物のようですね。俺のような新参者にありがとうございます」
俺はミスリルと思われるフルプレイトメイルを着た上級騎士が運んでいることから、予想していた以上に貴重な物なのだろうと思い伯爵に礼を言った。
でもこれじゃあ残念だけどホークじゃなさそうだ。けど、これはこれでかなり期待できる代物だと思う。
「い、いや……いいのだ。今後の友好のためにな……是非受け取って欲しい」
「ええ……ありがたく頂戴いたします……」
んん? なんか様子がおかしいな。まさかあの箱の中には爆弾が? いや、それだと伯爵も無事じゃあ済まないだろうし……とりあえず結界と鑑定を掛けてみるか。
俺は目をキョロキョロさせて落ち着かない様子の伯爵をいぶかしみ、暗殺の可能性を考えて俺とティナとフォースターを包むように結界を張った。それと同時に両手を後ろに組み、レオンたちに警戒態勢のサインを出した。
非常時に決めていたサインを受け取ったレオンたちは、左右にゆっくりと展開していった。
さらに後方ではレオンからサインが送られたのだろう。御庭番衆も動いたようだ。
そして俺は2mほど前に置かれた銀の箱に鑑定を掛けた。
【アダマンタイトの箱】
なっ、? アダマンタイトだって!? なぜこんなところにアダマンタイトの箱なんかが……まさか!? まさかまさかまさか!
「アクツ男爵殿。すまないな。どうか受け取ってくれ」
「ティナ! フォースター! 俺の後ろに! 」
「え? わ、わかったわ! 」
「は、ハッ! 」
俺は伯爵の言葉を聞いてすぐにティナとフォースターに下がるように言い、空間収納の腕輪から魔鉄の剣を取り出した。
その瞬間。
目の前の箱のから白銀の扇を手に持った、真っ赤なチャイナドレスを着た女が鷹のポーズで空中へ飛び出した。
その女は太陽をバックに満面の笑みを浮かべながら、手に持つ扇を俺へと振り下ろした。
「ご主人様ぁぁぁぁぁ! 」
「出たあぁぁぁ! 近寄るんじゃねえ! 」
キンッ!
パシーン
俺は当たって欲しくない予想が当たったことに動揺しつつも、ハマールの扇。『嵐刃の銀扇』を剣で受け止めた。そして扇の特殊効果である風刃も結界で防いだ。
やられた! この女アダマンタイトの箱にずっと入ってやがった! だから探知でハマールの魔力を感じ取れなかったんだ! まさかこんな手を使ってくるなんて! クソッ!
「ああ……私の不意打ちがまた防がれるなんて……ハァハァハァ……堪らない! 堪らないわぁぁぁ! 」
「上気した顔で武器に力をいれてんじゃねえ! このド変態が! 『滅魔』! 」
「あひぃぃぃぃ……ああ……力が……死ぬ……このままでは……死……ハァハァハァ……これよ……この感覚よ……ご主人様……私を支配しておくんなましぃぃ」
「断る! ぶっ飛べ! オラァッ! 」
俺は滅魔をその身に受け力なく崩れつつも、足にしがみつこうとするハマールの腹を蹴り飛ばした。
俺に蹴り飛ばされたハマールは、数メートルほどぶっ飛ばされて後方にいた女騎士たちに受け止められた。
《ハマール様! 》
「貴様! 男爵風情が公爵様に向かって手を出すとは! 」
「うるせえ! 文句があるならいきなり攻撃してきたそこのド変態に言いやがれ! いいか! 剣を抜けば殺す! レオン! 囲め! 」
俺はハマールを抱き抱えながら激昂する女騎士に怒鳴り返し、レオンたちに女騎士たちを包囲するように指示をした。
「おうっ! 」
俺の指示を聞いたレオンが親衛隊と共に半包囲すると、ヤンヘルたち御庭番衆もレオンたちの外側から回り込み後方を遮断した。
「おいクソ豚伯爵! てめぇハメやがったな! 飛空戦艦の奴らが少しでも動けば殺す! モンドレットとの戦争を見てんだろ? 動いた瞬間てめぇも死ぬ! そしてそのまま宣戦布告して、てめぇの一族を根絶やしにしてやる! わかったか! 」
俺はハマールが呆気なく返り討ちにあったのを目の当たりにしたからか、口を開け顔を青ざめさせている豚伯爵へと警告をした。
「ヒッ!? わ、わかりました! わ、私はハマール様の命令で仕方なく! も、申し訳ございません! て、敵意はありません! 歯向かえば燃やされるのです! ど、どうかお許しを! 」
「……だったら飛空戦艦の奴らに早く連絡しろ! 」
「は、はいぃぃぃ! 」
俺が怒鳴ると豚伯爵は血相を変え、魔導携帯を取り出し電話を掛け始めた。
よし、とりあえずこれで余計な殺しはしなくて済むな。次は……
「おいっ! ハマール! いつまで寝てんだ! 剣を抜かせたらお前の騎士が死ぬぞ! いいんだな!? 」
俺はレオンたちに包囲され、剣に手を掛けながらハマールを守るように円陣を組んでいる女騎士を見ながら、その中心で倒れているハマールにそう警告した。
「あぐっ……や、やめなさい……貴女たちの敵う相手ではないわ……剣から手を離して下がりなさい」
「ハ、ハマール様! しかしこのままでは……」
「いいから……下がりなさい! 」
「クッ……承知しました」
「ハマール……メレスの屋敷の時といい、いったいどういうつもりだ? そんなに死にたいなら今すぐここで殺してやるぞ? 」
俺は女騎士たちを下げ一人になったハマールに剣を向け、死にたいなら殺してやるぞと問いかけた。
「違うの……ご主人様を殺す気なんてないのよ。私はただ、あの時ご主人様に支配された感覚が忘れられないだけだったの……もう一度あの絶対的な死と隣り合わせの感覚を体験したかったのよ……あの感覚を思い出す度に身体が疼いて……寝る時もご主人様のことで頭がいっぱいなの……私の身体を魂を……ああ……どうか支配しておくんなましぃぃ! 」
「まさかハマール公爵が……あのハマール公爵が……」
「だから言ったろフォースター。ド変態だって。しかしどうしたもんかな……ティナ。どうしよ……」
俺は後ろでドン引きしているフォースターに言った通りだろと告げ、この後どうしたらいいかわからなくなりティナに助けを求めた。
さすがに殺す気はない。ハマールの攻撃は速かったが殺意もなく、魔力もほとんど込められていなかった。その証拠に銀扇の特殊効果である風刃は一枚しか出現しなかった。あれは確か魔力を多く込めれば込めるほど、出現枚数が増える代物だったはずた。
つまりハマールは最初から、俺に滅魔を撃たせるために攻撃を仕掛けてきたってわけだ。
もうやだこの女。このまま帰してもまた同じことやりそうだし、その度にこんな騒ぎになるのは勘弁して欲しい。
「シーナ以上のマゾを私にどうしろって言うのよ。もう望み通り支配してあげればいいんじゃない? ハマール公爵、それなら満足するんでしょ? 」
「ええ、ええ。私がご主人様に従属することを認め、支配していただければこれほどの悦びはないわ」
「う〜ん……支配に従属ねえ……」
なんか頷いたら見えない鎖で繋がれるような気がする。もしかしたら今より酷くなるかも……
考える時間が欲しい。けど、このまま帰すのは怖い。またいつ来るか怯えながら過ごすくらいなら、従属させて命令に従わせた方がコントロールできるかもしれない。
不意打ちよりはマシか……
「わ、わかった……ハマールを支配する。その代わり俺の命令には絶対に従えよ? 」
「は、はい! ありがとうございますご主人様! 私を受け入れていただきありがとうございます! 近づくなという命令以外であれば何でも従います! 」
ぐっ……読まれてたか……
「はぁ〜……わかった。で? 具体的に支配するって何をすればいいんだ? 」
「わ、私をスキルで無力化した後に、ご主人様の思うがままにいじめて欲しいのです。なんとなく殴りたくなったなど最高です。抵抗できない私をとことん追い込んで欲しいのです。この身体も力づくで好きになさっていただければ……ああっ! 熱い! 考えただけでもうびしょ濡れです! ご主人様ぁぁぁ! 」
「だあぁぁ! 寄るな! ティナ! ティナ! 」
俺は腕の力だけで這い寄ってくるハマールから逃げ、ティナの背に隠れた。
怖え! マジで怖え!
ていうか気が向いたら殴って欲しいとか、力ずくで貞操を奪えとか無理すぎる! 男嫌いなんじゃなかったのかよ!
「はいはい。ハマール公爵落ち着いて。あら? このスカーフの中のこれは……あの時の隷属の首輪? 」
「ええそうよ。あの時の私とご主人様の主従の証よ。でも陛下によって外されてしまったの。従属の証にもう一度ご主人様に嵌めていただきたいのよ」
「あ〜あの時のな。ハイハイ、もう一度嵌めればいいんだな? 俺もその方が安心だからそうするわ」
本人が嵌めて欲しいってんなら大歓迎だ。俺のいうことを聞かせる保険ができるしな。
「ああ……ありがとうございます。ご主人様。新しい首輪と鍵はこちらです。さあ、早く! 」
「うっ……ティナ、押さえておいてくれよ? 」
俺は恐る恐るハマールから鍵を受け取り、首に巻かれたスカーフの下にある隷属の首輪を手に取った。首輪は効力を失っており、外れないように後から南京鍵のような物で固定しているようだった。
俺は鍵を差し込み隷属の首輪を外し、ハマールから新しい首輪を受け取りその首に嵌めた。そしてその際に、俺の命令には絶対服従するようにと言って魔力を首輪に流し起動させた。
「ああ……これでご主人様の奴隷に……歴史あるハマール公爵家当主の私がチキュウの民に力で支配をされて……ハァハァハァ……ご主人様……命令を……ここで抱かせろと命令をしてくださいまし……抵抗して首輪で苦しむ私を殴り、力で無理やりに……さあ! ご命令を! 」
「しねえよっ! 命令だ! 今日のところは艦に戻って帰れ! 」
「そ、そんな! ぬ、脱ぎます! だから私を抱いてくだ……あぐっ……ぐうぅぅ! 」
「ほらっ! 女騎士たち! お前達の主が死んじまうぞ! 早く艦に乗せろ! 」
俺は後方で微妙な顔で成り行きを見ていた女騎士たちに、ハマールを回収するように言った。
《ハマール様! 》
「ご、ご主人……様……また……会いに……来ます……から」
「くっ……事前に連絡しろよ! 絶対だぞ! 命令だ! 」
「は……はいぃぃ! 」
俺は慌てて駆け寄ってきた女騎士たちに抱き抱えられ、そのまま全力で艦へと連れ去られていくハマールに事前に連絡するように言って見送った。
後方を塞いでいたヤンヘルたちは慌てて飛び退いている。わかるよその気持ち。
それから俺は5mほど先で魔導携帯を持って震えている豚伯爵へと視線を移した。
「おい豚! てめぇには特大の貸し一つだ! お前のとこのビルにうちの出張所を作れ! そしてフォースターの望むことに全て応えろ! できなきゃハマールに命令して焼豚にしてやる! 返事はっ! 」
「は、はひっ! しょ、承知いたしました! 至急ご用意いたします! な、なんなりとお申し付けください! 」
「ならさっさとハマールを連れて帰れ! 」
「は、はひぃぃぃ! し、失礼いたします! 」
俺に怒鳴られた豚伯爵は文官と護衛の騎士たちを連れ、飛空艦へと全力で走っていった。が、豚伯爵が途中で転び、ハマールと同じく騎士たちに担ぎ上げられていた。重そうだなあれ。
「コ、コウ! なんだよアレ! やべえ! アレはやべえ女だ! ドン引きしまくりだぜ! 」
「コウさん! 兎はあんなのじゃないですから! 兎は違いますからっ! 誤解しないでくださいですぅ! 」
「だから言ったろリズ。あいつはやばい女だって。それとシーナ。シーナが今のところ違うのはわかってるから大丈夫だよ」
俺が豚伯爵を見送っていると、後方で見物していたリズとシーナが駆け寄ってきた。どうやら二人ともハマールのヤバさにドン引きしているみたいだ。シーナは危機感を覚えたのか、一緒にされないよう必死になって否定している。
「い、今のところってどういう意味ですぅ!? 兎はあんな風になったりしないですぅ! 」
「アレがシーナの未来かよ……あたし友達のままでいられるか不安になってきたぜ」
「リズさん酷いですぅ! 兎とリズさんはズッ友だって言ってたじゃないですか! そもそも兎はあんな風にはならないですぅ! ハマール公爵には愛がないですぅ! 」
「あははは! 冗談だって! あんなのにならないように、あたしがしっかり調教してやるからよ! こうバシンッてな! 」
「リズさんに叩かれるのは嫌ですぅ! コウさんだけですぅ! 」
「ハイハイ。二人とも初めて見て色々ショックなのはわかったから、とりあえず仕事に戻りましょ。フォースターさんも、シュヴァイン伯爵との件はお願いね? 結果的には優位に立てたから良かったんじゃないかしら? 」
「え、ええ。そうですね。まさか上の立場になるとは思いませんでしたが……」
「俺という犠牲があってのことだというのを忘れないでくれよ? ああ……憂鬱だ……」
俺はポーカーフェイスを崩し、ものすごーく微妙な顔でティナに答えていたフォースターにそう言って肩を落とした。
「ふふふ、コウも災難よね。でも来るのがわかってれば対処のしようもあるわよ。スキルを受ければ幸せだって言ってるんだし、来たら滅魔を撃ってあげればすぐ終わるわ」
「そ、そうだね……それもそうか。まともに相手をするから気力を削られるんだよね。うん、なんてことないな」
そうだよな。来るのがわかってればなんてことない。突然現れるから色々削られるんだ。まあダンジョンの魔物みたいなもんだな。
でもいい女なのにほんともったいねえよな。あのチャイナドレスなんかすげえ似合ってたし、ムチムチしたあの太ももにチラリと見えた繁みも……またノーパンだったな……そういえば身体を好きにしていいとも言ってたな……ハッ!? 駄目だ! 手なんか出したら抜け出せなくなる! 忘れろ! あの身体は忘れろ!
俺は危うく下半身に意識を乗っ取られそうになったところで、理性を発動させることに成功したのだった。
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