第39話 疑心




「チェックメイトだ」


 俺は後ろに倒れこみながら失った右肩を左手で押さえようとする魔帝の手を払いのけ、右肩の切断部分に手を添えて滅魔を放ち魔帝の身体から魔力を抜いた。


「ぐっ……」


「どうだ? これが滅魔だ。魔素が無く力が入らないのと同じだが、身体から魔力が無くなると体内にある魔石の魔力をより感じるだろ? 俺がもう一発このスキルを放ったらあんたはあっけなく死ぬ。魔物と同じようにな」


「ぐっ……お、おのれなぶるか! 余は誇り高き魔人の皇帝! 退かぬ! 媚びぬ! 諦めぬ! デルミナ神の眷属たる我らに敗北はないのだ! グゥゥ……グォォォォォ……」


「おっと『滅魔』! はいはい第二形態ね。それもう見てるから。てかなんで最初からならないの? 」


 俺に右腕を斬り飛ばされ組み伏せられ身体の魔力も抜かれた魔帝が、大層なセリフを吐き目を縦に割った時点で俺は再度滅魔を放ち変身を止めた。


 変身するための魔力を抜かれた魔帝の目は元に戻り、魔石の魔力を大量に使ったせいか俺を掴もうと伸ばしていた左腕も力なく床に落とした。


「お、おのれ…………殺せ」


「賢帝とか呼ばれてる割には脳筋だな。国のトップって自覚あんのか? ああティナ! そいつらの鎧と武器を引っぺがして収納の指輪に入れておいてよ。俺も魔帝のを回収するから」


「わ、わかったわ! 」


 俺は目に力がなくなった魔帝を横目に、十二失魔将だったか失笑だったかの残りを倒し終えたティナたちに装備の回収を頼んだ。


 そして俺も空いた手でせっせと魔帝の胸にあるフルプレートアーマーの留め金を外し、ヘルムも引っこ抜いた。魔帝の全身の力が抜けているおかげで脱がし難かったし、鼻に引っ掛かったのを無理やり引っこ抜いたから鼻血が出たが無事に鎧の大部分をひっぺがすことに成功した。


 これは残しておいたらいけないからな。吸魔の短剣も4本ゲットだ! 経験値もそうだけど、めちゃくちゃオイシイな。さすがボス部屋だわ。


「余は魔王の能力を見誤った。それゆえに手塩にかけて育てた十二神将を失ってしまった。余もこの有り様よ……戦いに敗れた者は死あるのみ。ゆえに早く殺せ」


「はあ? 戦いに敗れたエルフと獣人を何千年も奴隷にしといて何いってんの? なんで自分だけ潔く死ねると思ってんの? ボケたか? 停滞の指輪の石の色も薄いしそろそろやばくなったか」


 俺はヘルムが脱げ60代後半くらいはいってそうなシワの多い顔なのに、白髪もなく燃えるように赤い髪のままの魔帝の発言を鼻で笑った。

 停滞の指輪は2等級だが、これだけ石の色が薄いとなるともうあと少しで効果が無くなるだろう。

 もともと先代からのお下がりか、どっかのダンジョンの骸から拾ったものなのかもな。バチあたりなやつだな。


「余を辱めるつもりか! ならば残りの魔力を全て消費するまでよ。余がいなくとも、数日のうちにデルミナ様より次期皇帝の指名の宣託があるゆえ帝国は滅びぬ。いずれ地球の兵と兵器とともに次の皇帝が魔王討伐の兵を挙げるだろう。我が帝国は魔王の思い通りにはならぬ! 」


「やっぱボケてたか。なんで魔帝を殺したあとに俺が逃げると思ってんだ? こっちはとっくに覚悟ができてんだよ。帝国皇帝を殺したんだ。俺のこのスキルで全てのエルフと獣人の首輪を外して蜂起するに決まってんだろ。その魔神の宣託とやらがある前に皇族は全て殺す。そしてこの大陸をエルフと獣人の王国にする。残った一般の半魔人どもは今度は獣人たちの奴隷になるかもな。そうなったら数千年の恨みだ。何人生き残るかな? お前らが人族を滅ぼしたようにいずれいなくなるかもな。そして帝国の兵士と技術者からその知識と技能を奪い、お前ら魔人に取って代わりこの地球を支配する。魔族に支配されるよりゃ地球の人族もマシだと思ってくれるさ」


「なっ!? 」


 おめでたい奴だ。帝国がずっと続くと思ってやがる。

 確かに地球の兵器に対抗する術は俺には無い。防ぐことはできてもマッハ2で遠距離からミサイル撃ちまくってくる地球の戦闘機にはどうしても手が出ない。


 でもそれならこの大陸に居座ればいい。

 ここには結界があるからな。そしてさんざん暴れて各地から集まった赤い髪の奴らを皆殺しにすれば、魔神も皇帝を選べないだろう。たとえ選ばれたとしてもまたここに来て殺せばいい。


 恐らく純粋な魔人の数は少ない。

 コイツら魔人はこの大陸にいた人族を滅ぼしたと言った。なら半魔人はどこからやってきた?

 恐らく人族の女性だけ残して戦争によって激減した数を補ったんだろう。

 だから赤い髪とオレンジと金髪の帝国人がいるんだろう。


 つまり半魔人は人族とのハーフだな。エルフとは子ができにくいし、獣人とはプライドの高いコイツらのことだ。耳や尻尾が生えるのを嫌ったのかもな。

 だから宣託を受けて皇帝になれる資格のある奴は少ないはずだ。


 信仰心の厚い国で宣託がなく、皇帝が生まれないなら支配するのは容易だ。

 あとは能力の高そうなやつに首輪をはめて、兵器を扱う技術と兵器開発の技術を奪えば亜人王国の誕生だ。


 体制が整うまでは結界が地球の国々から守ってくれる。そしてなるべく早く地球各国に再侵攻する。

 地球人にダンジョンを与えてはいけない。研究もさせてはいけない。それは俺も魔帝と同じ意見だ。

 放置しておけばいずれ必ずこっちが滅ぼされる。


 まあそう上手くはいかないだろうけどな……


 それでもここは強気にいかないと。必ず帝国の未来はそうなると思わせないといけない。


「俺にはそれができる。万が一予想外の出来事が起こって追い詰められても、結界の塔の魔力を全部抜けばいい話だ。まあこれは諸刃の剣だから最終手段だけどな」


「…………」


 魔帝は黙って俺を睨みつけている。

 俺にはそれができて帝国には防ぐ手立てがないことを自覚しているからだろう。


 魔帝からしたら想定外だったか?

 俺が奴隷解放の要求を呑ませたあと、帝国を脅して次々と新たな要求を突きつける小者だと思っていたのかもな。

 だから奴隷を力ずくで解放して蜂起させ、帝国全てと戦ってこの大陸を征服するとは想定していなかったか? 逃げて雲隠れするとでも思っていたか?


 残念だったな。俺は臆病者なんだ。

 臆病者は自分の身を守るためにはなんだってやるんだよ。

 臆病という感情の存在を否定し、虚勢を張るお前らにはわからないだろうな。

 俺はティナたちを失うのが死ぬほど怖い。

 ならそうならない為にならなんだってやってやる。たとえ悪魔と呼ばれようが魔王と呼ばれようが構わない。


「つまりここでお前が死ねば帝国も魔人も滅ぶ。俺とエルフや獣人たちのために滅んでもらわないといけなくなるからな。半魔人は数が数だし残るだろう。俺は奴隷とか好きじゃないからそういうのには反対するつもりだが、今までさんざん自分たちを虐げてきた存在が力を失うんだ。相当な差別や迫害にあうのは避けられないだろうな」


「…………」


 国民が迫害されるくだりで、俺を睨みつけていた魔帝の目が白目部分も真っ赤にし、目尻と眉を吊り上げ眉間に皺を寄せ、口を大きく開けてその牙で俺を今にも食い殺そうとするかの表情へと変わった。


 あれ? 身体には魔力が無いし魔石の魔力も減ってないのにな。おかしい、なんで変身してんだ?

 もしかして素ですか? マジで怖いんだけど。


 俺はビビる気持ちをデビルマスクで安定させ、声が震えないように魔帝に続けて話しかけた。

 ここからが正念場だ。


「さて、ここでもう一度チャンスをやる。奴隷を解放しろ。そして生活を最低限でいいから生涯補助しろ。これはこれから生まれてくる子は対象外でいい。これといくつかの俺の個人的な要望を呑めばあんたを生かしておいてやる。それ以上の追加要求はしないし二度と魔帝の命を狙わない。契約してもいい。だが断ればさっき言った計画を実行する。帝国の臣民を想い混乱を嫌った皇帝さんよ。どっちの選択が為政者として正しいかよく考えろ。奴隷を解放するか国を滅ぼし国民を奴隷とするか……選べ! 」


「…………やむを得ぬな……奴隷を解放しよう」


「そうか……『滅魔』。契約ってのをしてもらうぞ 」


 俺は魔帝の返事を聞き安堵するとともにヴリトラの魔石を取り出し、滅魔を2度放って魔帝の身体と謁見の間に魔力と魔素を戻した。

 もうアダマンタイトの鎧は着てないからな。いつでも一瞬で命は取れる。


 それにしても意地になって死を選択しないでくれて助かった。

 魔帝にはああ言ったけど、ここで殺すとバッドエンドしか見えないんだよな。


 確かにここで魔帝を殺せばこの大陸を一時的に支配することは可能だろう。

 でもそのあとは? ずっと支配されていて、知能は高くても読み書き計算以外の教育を受けていなかった獣人やエルフたちがこの地球の国家を管理する?


 無理だろ。


 俺の知るこの世界の国々はそんなに甘い存在じゃない。

 入念な計画と圧倒的武力と、地球にもともといた複数の巨大財閥の内通者がいてこそ支配できていたんだ。

 あっという間に各地から追い出されるだろう。その際に魔導兵器を奪われてな。


 俺だって英雄だなんだと持ち上げられるかもしれないし、エルフたちを独立させた責任がある。

 あとはよろしくとかいって放置するわけにはいかないし、させてはくれないだろう。


 そのうえ獣人たちやエルフの帝国人への恨みは相当なはずだ。彼らによる帝国民へのジェノサイドは必ず起こる。

 それを止める? 無理だな。当然帝国人も黙って殺されないから抵抗をする。

 隠し持っていた武器で、兵器で。地球各国にいる協力者の支援を得て、テロやゲリラ戦になって長い期間大陸は混乱するかもしれない。


 そうこうしているうちに地球各国はダンジョンで力を付け、魔導兵器を分析し開発をして次に支配しようとする時には最初より強力な抵抗をしてくるだろう。

 そして大陸の混乱に乗じて潜入するか、無垢な獣人の誰かが地球人に籠絡されるかして結界の塔を破壊するかもしれない。


 俺もティナたちもエルフも獣人も皆殺しか今度は地球人の奴隷かな。

 エルフなんて今度は性奴隷間違いなしだな。地球人は帝国人みたいにエルフや獣人は人ではないとか思ってないからな。


 一応腹案として魔帝を殺したあとにリズとシーナの大切な人だけ助け、エルフの里で蜂起して次の魔帝と交渉することを考えていはいたけど、次の魔帝も前魔帝の仇を討たないと国内をまとめられないだろう。

 恐らく俺相手に相当な犠牲を払わないと和解は難しいと思う。その間にこっちも街や貴族の近くにいる多くの獣人やエルフが殺されるだろうな。


 いずれにしろここで魔帝が折れてくれなかったら、俺の平穏で幸せな未来は無かった。

 あとは要求し過ぎずかといって舐められず、今後帝国と一定の距離を置いてお互い不干渉でいきましょうねとなれば最高だ。

 俺はティナたちとずっと家に引きこもっていちゃいちゃできる。



「ぬ? 力が……」


「魔力と魔素を戻した。魔帝がいつまでも寝ていたら、外にいる配下の者が襲い掛かってきそうだしな。いちいち殺すのもめんどくさいんだよ」


 もう背後の扉と玉座の斜め後ろの扉にわんさか反応があるからな。

 魔帝に命令されているのか入ってこないけど、魔帝の苦しむ声が響いた時は一気に外にいる奴らの魔力が増幅して入ってきそうだった。

 まあだからアダマンタイト装備を外すのを急いだんだけどな。

 でももう大丈夫だ。たとえこれからこの謁見の間に何千人が入って来ようとも瞬殺できる。


「殺すのが面倒か……恐ろしいスキルよの……この身に受けて実感した。これほどの力があれば確かに魔を統べれよう……」


「俺は魔人を統べる気なんかさらさらないね。そんな面倒なことはアンタがやればいい。俺は帝国に関わりたくないんだ。奴隷解放さえされれば俺から帝国に関わることはもう無い。地球でも日本でも、俺の周囲の人間さえ巻き込まないなら好きにしたらいい。ああ、でもダンジョンは好きに入らせてもらう。自己防衛のためにな」


「世界を欲さぬと? その力さえあれば帝国もこの地球も支配できるというのにそれをしないと? 」


 コイツ……俺を小者と見くびっていたんじゃなくて、いつかエルフと獣人を従えて帝国に叛旗を翻すと思っていたのか。さっきはそれを即時やるほどの行動力があるとは予想していなかったから驚いたのか。

 帝城に乗り込んで来たのは若さゆえの勢いだとでも思ったのかね。正解だけど。


 それにしても俺が世界をねえ……


 俺が野心を持っていると思ったから俺に世界を支配できる権力を与え、帝国無しではそれを維持できなくさせようとした。

 しかしそれが叶わないなかったから力で服従させようとしたってことか。

 それと俺を何かに使いたかったってのもあるか。


 だから対等な関係とかは最初から考えていなかったんだろうな。支配し服従させる選択しか考えてなかった。奴隷解放も俺に力を与えることになるから頑なに拒否した。


 疑い深さ。為政者には必要な能力とはいえ、それで身を滅ぼしてたら世話ないわな。


 そこまで思考して俺は玉座に座った魔帝に背を向け、ティナたちのもとに戻った。

 そして俺を見下ろし疑いの目を向ける魔帝に、俺はなに言ってんだコイツいう目を向けた。


「個人で世界を支配できるなんて思ってねえよ。それをするには必ずアンタら魔人か地球人の協力が必要になる。支配しているつもりがいつのまにか支配さることになるだろうな。俺は分をわきまえる人間なんだ。ティナとリズとシーナが側にいる。それだけでいい。それ以上は望まない。世界なんかいらないから放っておいてくれ」


「コウ……」


「ば、ばっか! こんなとこでなに言ってんだよ! 世界よりあたしが欲しいとか……ばか……」


「コウさん……世界より兎を……」


 俺は隣でそっと俺の手を握り目をウルウルさせているティナと、顔を真っ赤にさせてうつむいているリズ。そしてなぜか泣いているシーナをチラリと見て、好感度限界突破ぁ! とか考えていた。


「フム……その目……今は本気でそう思っているようじゃな。今はな……よかろう。そこのエルフたちを助けるのが目的であり、帝国を利用し敵対しないというのであれば今は魔王を信じよう」


「疑い深いんだな。だったら契約のスキルだったか? それに盛り込めばいいだろう。俺もそれ相応の要求をするけどな」


 ティナが言うには契約のスキルはユニークスキルでかなりレアだけど、過去に大商人クラスが持っていたらしくその能力は割と知られているらしい。


 スキルの能力としては契約できる内容は10項目までで、複雑な内容の契約はできない。

 例えばいつまでに何かをするとか、二度とこういうことはしないだとかそういった短い内容のみとなる。

 新たに契約する際は実行し終えた契約の数だけ追加できる。


 そして契約を違えた場合のペナルティだけど、恐ろしいことに心臓に激痛が走るらしい。死にはしないそうだが、契約を実行するか契約相手に破棄してもらうまでは不定期にこの激痛が一生起こるそうだ。

 不定期ってのがエグいよな。それに死なないとは言うけど、もともと心臓に疾患があったり弱い人間は普通に死ぬと思う。


 たとえ短い内容の契約しかできなくてもこれはかなり強力なスキルだと思う。

 そしてこれは神の呪い的な物らしく、どのようなスキルをもってしても解呪は不可能だそうだ。

 お互いの同意が無ければ成立しないのが唯一の救いだな。まあそれでも隷属の首輪よりは遥かにマシだけどな。

 しかし魔人が神界の神が作った神の契約スキルを使うのかよ。神様これいいの?


「契約のスキルはそこまで万能では無いゆえな。しかし負けた以上今は魔王の言うことを信じ言う通りにしよう今はな」


「将来どうにかする気満々な物言いだなオイ! 残念だったな。俺は魔族なんかこれっぽっちも信じてねえから警戒は怠らねえよ。それにやたらと何かに俺を利用しようとしていたようだけど、俺はアンタらの思い通りにはならねえよ」


「フッ……まあそのことはよい。いずれ協力せざるを得なくなるであろうからな」


 え!? なにそれ! すげー嫌な予感するんだけど! 聞くの超怖い!


「き、気になる言い方だな。いったい何を俺にさせようとしてんだ? 」


「まだ確定ではないからの。そのうち教えてやろう。それまで精々長生きをせよ」


 なんなんだよ! 超気になるじゃねえか!

 でも今すぐって訳じゃなさそうだな。気になるけど教える気はなさそうだ。

 外に漏れたらマズイ事とかか? 地球は魔素が濃いからダンジョンから魔物が飛び出してくるとかじゃないだろうな? マジでそうなったら国が滅びそうだ。


 いずれにしろ備えは必要になりそうだな。


「この野郎……まあいい。それより早く契約を。奴隷解放は即日やってもらうからな。猶予なんか与えたらやましい事やってる奴らは処分しかねない。貴族なんか特にな。魔帝には全国民にすぐに周知してもらう」


「即か……混乱は必至よな。国が滅ぶよりはよいか……臣民にはデルミナ様の名で伝えればよかろう。デルミナ様も魔王が現れたことを知ればお赦しくださるじゃろう」


 それでも地球各国に連れていかれている奴隷はダンジョンで処分される可能性もあるが、俺一人の力じゃここまでが限界だ。不本意だが魔人の信仰心と魔神の威光に頼るしかない。


 デルミナとかいう魔神も、眷属が一度魔王により滅びかけているらしいから反対はしないだろう。

 というか神からしたら、占領した世界の先住民なんてどうでもいいと思ってると思うんだよな。


「で? 契約のスキルは魔帝が持ってるのか? 」


「いや、宰相が得ている。いま呼ぶゆえしばし待て」


 魔帝はそう言って収納の指輪からメモ用紙と少しゴツイ携帯のような物を取り出し、メモを見ながら人差し指でボタンを一つずつゆっくり押していった。


 その姿に世界を征服した皇帝としての威厳は無く、携帯を使い慣れないただのお爺ちゃんのようだった。

 しかも老眼なのか携帯を近付けたり遠ざけたりを繰り返している。魔人も老眼になるのか……


 リズが小型魔導通信機の普及は最近になってからだって言ってたな。ティナはそういうのに疎いから知らなかったらしいが、誰か早く大画面のかんたん携帯を魔帝に作ってやれよ。


 それにしても緊急時とかどうすんのかね? 誰か呼んで呼びにいかせた方が早くね?

 すぐそこの扉にわんさか人がいるよ?

 というかボタン一つで呼べるようにしておけよ。


 俺たちは魔帝が電話を掛け終わるのをイライラしながらもずっと待っていた。


 あっ! いまチッ!とか言った。多分最初から掛け直したな。


 コイツめんどくせぇ〜!




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