第22話 悩める鈴木さんと金髪少女と先生 その12(全14話)
「岡本先輩には何度かメールでも断っているんです。でも、何だかポジティブな感じで自分にとっていい方向に解釈してるみたいなんですよ。ソフィーのポジティブとは違って、何だか怖い感じなんですよね」
「私はそんなにポジティブじゃないかもよ。アリスの方がポジティブだったりして」
鈴木さんに背を向けたままソフィアさんがそう答えると、持っていたお菓子を鈴木さんに食べさせていた。
「岡本先輩って美波ちゃんとは合わなそうだよね。でも、アリスとはもっと合わなそう」
「私にお似合いの男の人って想像つかないかも、小さい時はパパが大好きだったんだけれど、初恋ってまだしてないかも。気付いていないだけかな?」
鈴木さんはソフィアさんから貰ったお菓子を食べつつ、自分のカバンの中から新しいお菓子を取り出してソフィアさんの口に放り込んだ。
鈴木さんの相談は恋愛相談だったようなので、僕はきっと力になれないだろう。
そもそも、鈴木さんは岡本君に興味が無いようなので相談する前から答えは決まっているのではないだろうか。
それだとしたら、どうすれば相手を傷付けずに断れるのかという相談なのかもしれない。
僕はそれほど恋愛経験も多くないし、円満な破局なんて経験したことすらないもので答えにはたどり着けないだろう。
僕を頼ってくれる生徒の力になりたい気持ちはあるのだが、専門分野ではなくどちらかと言うと苦手な分野になってしまうのが辛い。
「美波ちゃんって彼氏いたことあったっけ?」
ソフィアさんの突然の言葉に僕は一瞬固まってしまった。
「私は無いけど、ソフィーも無かったよね?」
「うん、私たちの周りで恋人いるのはアリスだけだからさ。ナナも彼氏いたこと無いんじゃなかった?」
「ナナミンはお兄ちゃん大好きだし、部活も忙しそうなんで恋愛には興味なさそうだよね」
齋藤さんも鈴木さんも見ている限りではあるが、特定の異性と特別仲良く話している姿を見たことが無かった気がする。
ソフィアさんは誰とでも仲良くなれる人なので、特別な相手が出来た時にはどのように変わっていくのか興味がつきない。
裏表のない子供だったソフィアさんも今では多少身長が伸びてはいるが、自分の興味のあること以外は特に関心を示そうとしない子供らしさも残っている。
残っているというより、成長していないだけかもしれないのだが。
「もしも、ソフィーが興味ない人に告白されたとしたらどうする?」
「相手にもよるけど、マサ君先生に告白されたら即答で断る」
「それは私もだわ」
二人ともこっちを見てニヤニヤしているのだけれど、会話はすべて聞こえているのです。
もしかしたら、この二人は僕に聞こえないようにしていたのかもしれないけれど、あれだけ楽しそうに話していたら聞こえない方がおかしいと思う。
視聴覚準備室は二人の話声とエアコンの音が聞こえるだけで僕たち三人以外は誰もいないのだから。
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