38話 自衛隊西方への大遠征。発動!輸送艦隊護衛大作戦・・・・・・なのです! 8

 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月31日・午前9時05分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・パイプ・ライン大河河口付近地域・ラクロアナ王国・シャン・ライア州・ロウデニィオン市内・宿屋ローライナにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




ラクロアナ王国で、日本を知って居るのは、ラクロアナ王政府と王都のアデニューム市とアデニューム州内に、ドナルク川の河口のあるニュウヤーク市の在るニュウヤーク州の州政府と国民達等が知って居た。


 それは今月中に行われたラクロアナ王国・ロシア共和国・日本国から成る三カ国の暫定協定の締結会議が、王都のアデニューム市で行われた。


 これはラクロアナ王国の軍や国民が、ロシアとの様々なトラブルを避ける為に開かれた会議であった。



 日本の外務省と交援省が仲介の音頭を取って、滞りなく締結されて居る。


 この時に外交団を乗せて来た護衛艦と巡視船、ロシア側は駆逐艦と警備船で現れたので、王都から河口付近に至る地域では、ちょっとした大騒ぎと成った。 



この時フラン王女は、出きうる限りの御持て成して出迎え、歓迎するなど、政務の成れない彼女の精一杯の事を父に成り代わって行った。


 日本とロシア側は、初めて訪れた国なので、レビル国王に挨拶をと、二か国の使節団の面々は、国王の謁見を申し込んだが断られてしまう。


 これはコヨミ皇国側でも知らなかった事だが、どうも最近のレビル国王は、長年の無理が祟って具合が宜しくないと言うのだ。


 其処でその話を聞き付けた日ロ使節団は、日露双方の医官が派遣され、病状を診察した所、過労な上に肺炎になり掛けて居たとの診断が成された。


 急いで治療の為の応急処置を取り、病状が落ち着いたら札幌の病院に移さないかと提案した。



 他にも腰の具合も良くないとも聞くと、尚更に札幌の設備の整った病院に入院を勧める。



フラン王女は入院費用は、必ず工面するので何とか助けて欲しいと頼むと、外務省と交援省の両職員は、何て父親思いの健気な王女だろうと感じ入り、その場に一緒に居たロシアの外交団の一団と共に感動したと言うのだった。


 何時の世でも医療費は掛かる。この世界でも変わりはないのだ。


 特に医者には気軽に掛かれる制度や保険もこの世界には存在して居ない。



 其処で日本が、国王の医療費を3割ほど補助すると言う形を提案した。



本当ならラクロアナ王国と王室に目一杯に貸しと恩を売れば良いのだろうが、フラン王女は妙な所で義理堅かったする。


 ロシア側は、港町に日本と共同で医療支援の医院を建てると事と定期的な医師の派遣を決めていた。


 まぁ、彼の国も恩を売りたいのは分かる気がする。今後の為にもと言う考えだろう。


 こうして、寸での所でレビル国王は命が助かったりする。



 皆さん、肺炎や喉の炎症などの病気の初期症状は舐めてはイケナイ。



 予防を含めた早めの診察と治療をお勧めする。



 仕事の都合でその様な病状を見逃したりして亡くなる方も結構な確率で居るからだ。




「アレは一体、何処へ行くんだろう。」




「さあ、州や軍、それに王国政府から何も知らされて無いわね。」



ラクロアナ王国の人々は、ニホンとか言う未知の国家の国力と技術に驚嘆をして居る中で、密かに動く帝国の密偵らの動きがあった。




「こんにちは、今日は良い天気ですね。女将、部屋は空いていますか。」



「ええ、空いていますよ。部屋へは、あの者がご案内を致しますわ。」



一見して、何の変哲のもないありふれたやり取りの会話に聞える。


 旅の行商人と町宿女主人の応対にしか見えないが、二人の雰囲気は、何処か普通には見えないものが有った。



「そう言えば、港や町ではお祭り騒ぎ見たいですね。何かご存知無いですか?」



「ああ、何でも何所か他国の海軍の艦隊が、このラクロアナ王国領内を流れているパイプ・ライン大河を通過するらしいのよ。」



「ほう、それにしては、ドえらい騒ぎですな。」



「信じがたい話なんですけど、何でも魔法を使わない巨大な鉄船が通過するらしいわね。」



「何処の国だか知っていますかな。」



「ニホンとか言うらしいわ。」



「そうですか、いやいや珍しい事もありますな。どうもありがとう。」




「いいえ、ごゆっくりどうぞお客様。そこの貴女、お客様をお部屋にご案内して差し上げて。」



「畏まりました。」




行商の男は、回りに見ない様に預ける荷物の中に、それなりのお金をそっと入れて渡した。


 そう、この二人は帝国の密偵である。



 帝国の密偵は、あらゆる手段や方法によって各国の中に溶け込みながら潜んで居るのだ。


 ある人は行商人。

 

 ある人は娼婦。


 ある人は教師。


 はたまたある人は学生・…等と言った具合に、何処にでも潜んで居る普通の人に成り済まして、普段はひっそりと隠れ暮らして居るのだった。



 行商人に化けて居る密偵の男は、同じく密偵で、この宿で使用人に化けて暮らし居る女に、案内された部屋に一緒に入り込む。


 部屋に入った女は、使用人の態度から密偵の女の顔付きと口調に変わる。




「で、港の様子は、どうだったの?」



「スゴイ騒ぎだ。」



「そう、貴方が見たのが近頃噂が絶えないニホン軍ね。」



男は既に港を見てきたらしい。


 さっきのやり取りは、演技の一環だった様だ。



 この二人は怪しまれない様に、動いて居るので、隙を伺いながらあらゆる情報を集めていた。


 今回は行商人の男が港近くを素通りするフリをして、ダバ派遣艦隊の動きや港の様子を見て来たらしい。



 反対に宿屋の女使用人は、直接見聞きする事を避けて、そんな騒ぎに興味を示さない働き者の一般人を装いながら、別ルートへの情報を受け渡す繋ぎ役に徹して居るらしい。




「それで、ニホンは何しに西へ行くのか分かる?ゾイザル殿下やローラーナ帝国東方制圧派遣軍・上層部は、それが知りたいと思う筈よ。」




「それは分らない。どんな国でも情報は何所かで筒抜けになる筈だ。それなのにニホンは、どうやったか知らないが、ニホンの情報だけが噂以上のモノが手に入らない。」




「そうね、わたし達、女の密偵網でも同じよ。潜入して居る先の住人の振りをしてあらゆる方面で、情報を掻き集めているけど、全然って訳よ。一体、どうやって情報の流失をやって居るのかしらね。」




これは日本が通信器を含めた現代的な方法と手段で連絡を取り合ってる為だった。


 伝馬や伝令と言った手段が、主流であるこの世界では、日本の情報を素っ破抜く事は、殆んど不可能な話だった。


 通信機器の一つに、魔動水晶と言う物を使っての通信が有るのだが、距離が限られる上に、高価で生産数が限られ、国によっても保有数も限られて来る代物。


 帝国を含め、主な国では、密偵機関は下方組織に当たるので、滅多な事では使わせては貰えないだろう。




「まあ、良いわ。其れよりも、この時期にニホン軍が、パイプ・ライン大河を遡上する理由が全く分らないわ。」



「もしかして、こちらの情報が漏れたのかしら?」



そう、ローラーナ帝国東方制圧派遣軍・上層部の一部の作戦参謀者達は、ラクロアナ王国に取って重要な対帝国との防衛拠点にして、経済的に需要な都市であるゼングリラ市とロウデニィオン市を攻め込む為の準備やパイプ・ライン大河周辺での侵攻作戦も画策していた。





それが何所かで漏れたのだろうかと、男の脳裏にそう浮かんだ。




「まさか、有り得ない。」


「それならグリクス地方軍団のガミトフ・バイマン中将閣下が計画しているアルガス公国・ブラキュリオス湖のレジェンダリア諸島を攻め落し、北部侵攻計画が漏れた方を怪しむべきでは?」


 彼は有り得ないとその事を否定した。




「それもそうね。ガミトフ中将閣下がそんな間抜けでは無いと思うけど、この手の話はある日突然に素っ破抜かられる事も有るわ。」



「どちらにしても、良く調べてから、事の詳細をローラーナ帝国東方制圧派遣軍・上層部、それとゾイザル殿下やヤーズ侯爵様に報告しなくてはね。」




 女も彼も帝国が絶対の覇者であり、それを上回る存在なんて有り得ない。



 大なり小なり差は有れども、国家組織は帝国以外変わりないと思っていた。それにゾイザル等は、日本に関する情報を未だ正確に掴めずに居たのであった。




 密偵女は男との話を切り上げて、接客の応対に優れた使用人の態度に戻り、去り際の挨拶をして部屋を去って行ったのだった。


 こんな光景は、この世界に広がる闇の一端に過ぎない。




一方、パイプ・ライン大河を通中のダバ派遣艦隊の旗艦かがでは、周囲に気を配りながら順調に、二つの都市に挟まれた大河中央付近水域を通過して行く。




「置鮎一佐。これからもこう言った挨拶は、港事に大きな港付近を通る度にやり続けるのですか?」副艦長の笹沼が、ふと思った疑問を聞いて来た。




「いや、ロウデニィオン市や対岸のゼングリラ市に対してだけだ。河口を我々海自が通過したと言う断りを入れたと言う建前の為だ。」




「建前ですか?」



「そうだ、此処から先の国には、このラクロアナ王国のロウデニィオン市の軍の責任者から日本がこれから艦隊を通ると言う通知がされて居る筈だ。」



「実は紅葉皇女殿下は、近隣の王侯貴族の子息や子女に知人や友人が多いらしい。」


「この王国にも友人に手紙を出されていると事だ。コヨミ皇国からも手を回されている。だから問題無いんだよ。」



「そうでしたか。しかし、今回は大変な任務だと思って居ます。」


「何せ海自の初、日本に取っても初の異世界の海と川を進んで行く大航海に成る筈です。」



「船で始めて行く土地や海に大河と言う物は、船乗りには、堪らないものが有りますね。」




そう、旧海軍や海上自衛隊も含めて、遠洋航海や練習航海で遠出するのは珍しくない。


 それは何所の国の海軍でもだ。


 ただ違うのは、全く異なる世界で、地球系列国家内の中で、初の異世界遠征航海と言う事だった。



「ああ、そうだな。穏やかな大河の水面を眺めて居る心が表れる様だか、この世界は、創世記時代から含めると何度も大戦が起きて居るらしいな。」



「今行っている帝国と反帝国連合との戦争だけでも600年だ。一見して平和な町を見て居ると、とてもそうは見えないがな。」



「ええ、高見君や羽佐間幕僚長の予見が取り越し苦労になれば良いのですが・・・・・」



「そうだな、そうならない事を祈りたい物だよ・・・・・・・」



穏やかな異世界の町並みと自然の風景を目にしてつつ、平和でないと言う事実は、自衛官等に取っては信じられないと言った感じだった。



 南スーダンやソマリヤ、内戦後のカンボジア、アフガンとイラク以上に過酷な状況の世界や地域に挑む彼らは、気を締めて掛かる派遣艦隊の隊員達。



 その彼らが自衛隊にひいては日本国に取って、この世界で初めて本格的な戦争に参加する事に成る。



偶発的なと言う言い訳を付け加えてなのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月31日・午前14時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・アルガス公国・アーダマ州・アルガス公国首都・公都・リガ・ミリィー・ディーナ市・ラーデイァシュ城・公王執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 この日、ブレックス・ファーミラ公王は、東の動きに付いてを執務室で女性閣僚であるベルナ・トーチカ外務大臣から報告を受けていた。


 在コヨミ皇国アルガス公国大使から東で起きた一連の騒動や新たに外交を求めて来た日本国なる異界転移国家に関する報告書と意見書、それに日本国から親書も外務省経由でベルナ外務大臣の下へ届けられて居た。


 ベルナの下に来た自分への報告書は読み終わり、ブレックス公王の下に訪れそのまま会議と言う流れと成った。



 それと、ブレックス公王宛てに手渡す予定の報告書の内容も凡そ同じ物だろうとベルナは予想して居た。 



「陛下、最近 ダバード・ロード王国 のアーヤ女王陛下が、何某かを企んで居る様子有ると、我が国のダバード・ロード王国駐在大使から報告がありました。」


「それと関連して居るらしいとの報告が、コヨミ皇国の我が国の駐在大使から報告書が届けられております。」


「それら加え、二ホン国から国交を結びたいとの親書が来ております。」



 ブレックスが報告書や各種書状や外務省関連の書類に目を通す。




「どうやらアーヤ殿は、ニホン国との国交の準備を本格化させつつ在る様だ。」


「ダバード・ロード王国内のアイリッシュ湖に浮かぶガイダル諸島の飛行場跡地の施設を改修作業や魔導機兵の無償提供等をして居るらしい。」



「わたしも報告書を読みましたが、思い切った事を為さいますね。」



「それが彼女の魅力でもある。豪胆で慎重、誰もがとても真似できない事だ。国王としもな。」


「所でそのアーヤ殿とコヨミ皇国のクレハ皇女の双方から日本国の艦隊がダバード・ロード王国へ向う為に領内を通過すると言って来て居る。」



「万国共通の慣例上、他国の軍船が例え帝国軍籍で有っても通過するだけなら問題は有りません。」


「それで陛下は例のお話・・・お受けするのですか?」



「ふうむ・・・・・・この地を訪れる彼らをこの目で見てからにしようと思う。」



「それは・・・・・・」



若い女外相は、公王の考えに少々驚き、言葉を詰まらせた。



「それは一体どうしてなのでしょうか?」と言いたかったがその前に公王が先に話を進めた為に言い損ねてしまったベルナ。



「やはり、直に見て見ないと何とも言えない。報告を聞いたり、資料を見るだけでは、我が国の未来を託すに足りえるのか、手を組む友人に足りえるのかとね。」



「それに南部方面のキナ臭い噂も絶えない。」



「やはり、そのキナ臭い相手とは、我が国とその周辺国と対峙している帝国のグリクス地方軍団の事ですか?」



「ああ、そうなのだ。それが気掛かりで、とても心配な事なのだ。そして、それを放置した儘で、ニホン国へと隠密裏に訪問などは、とてもな・・・考えられない・・・・・」



「それでは、こうしては如何でしょうか?」



「ルオ・ウオーミング宰相殿に、日本艦隊の寄港予定地であるグラダマ市で歓迎の晩餐会を開いて貰います。」


「その晩餐会にニホン軍の将校らを招待。断れない様に手を打つべく、宰相、市長と軍部の将校ら主催のアルガス公国の初来訪記念の晩餐会と称して、招待する形でパーティー会場まで来て貰うのです。」


「其処へ陛下が極秘のゲストとしてやって来たと言えば、彼らと言えども会うのを断れ無いでしょう。」



「少しだけ、印象を悪くするかも知れんが、彼らの都合と我らの都合も考えれば仕方の無い事だろう。」



「万が一グリクス地方軍団が、我が国の何れかの地域へと侵攻すれば、二ホン軍の協力を得られるかも知れません。」



「だが、それを選ぶのは彼らだろう。彼の艦隊の目的はあくまでダバード・ロード王国へ向う事だ。それに私は彼らと会って決めたい。」




「共に歩んで行ける隣人に足り得るのかを・・・・・・・・・・」




「承知しました。ではルオ様と軍の主だった者達と図って、陛下とニホン軍との接触を極秘裏に図りたいと思います。」



「任せる。」



ブレックス公王は、日本との国交開設をするべく、アーヤ女王からの誘いである日本行きを未だに迷っている様だった。



 その理由として、アルガス公国の南部地方のパイプ・ライン大河の向こう側の帝国軍の動きである。



 同地方はキナ臭い雰囲気が漂っている為、自国を留守にする事を躊躇って居たのである。


 

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