外伝6話 あの人達の後日談と前日談の1コマ
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月23日・午前10時30分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本国・九州島地方・福岡県・福岡市・臨時捕虜収容所にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「移転ですか?」
帝国海軍の指揮官であるアディーレとミルディーナは、法務省と外務省の職員から来月には、福岡市の郊外にある4棟のマンションに周辺の境を大きな壁を囲って仮設の捕虜収容所として使われている施設から移転すると説明をされていた。
次の移転先として、広島と岡山の間にある備後灘と呼ばれる瀬戸内の海域にある島々を一括りに纏め上げた場所が在る。
今その島々は、過疎化の影響で人が1人も住んで居らず、完全な無人諸島と成っている諸島が在った。
人口減少と若者などが中心に都会へと移動して行く。
更に高齢化で徐々に過疎化の進んでる小さな島には、利便性の悪さから人が徐々に消え去っていた。
無人と成ったせいで、使われなくなった役場関係の建物や数多くの民家が残っていた。
今やその管理が国に委託される始末。
管理の都合から、それらの諸島を合併区画とし、その名を瀬戸内諸島と命名していた。大小の八つの島からなる群島で、人が去ってから今年で丁度12年。
島の土地を相続する者は誰も居らず、時より近くの小学校から高校までの学生が何らかの行事で使われたり、夏の間だけ宿泊施設としての利用以外に使い道が無いの所であった。
政府は此処を捕虜収容所として使う事を閣議で決め、国会でも承認を得ていた。
小笠原の近くにも新たな島が発見され、近々新領土として宣言をする予定で居るのだ。
其処を捕虜収容所にすると本土からの距離と長く、島の生活維持の為に、多くの予算経費が掛かり過ぎると言う事で、協議の結果、此処に決まったのであった。
「はい。ですので身の回りの荷物が溜まって居ましたら、7日後まで纏めて置いて下さい。来月の1日の午前9時には、この場所を出発しますので・・・・・」
「分かりましました。皆に伝えておきます。」
アディーレとミルディーナの二人は、引越しの準備に入った。荷物はそれほど多くは無いが、最低限に揃えて貰っている日用品と家財道具など、何時でも運べる様にするのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月1日・午前9時30分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本国・備後灘近海海域付近・瀬戸内海・瀬戸内諸島・捕虜収容所にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
荷物は運び出され、残っている物は日本の有名な引越しアートセンターと言う会社が丁寧に運んでくれるそうだ。
帝国の軍人らは、用意された大型バスで福岡駅まで移動する。
警察が厳重な警備をし、報道陣もシャットアウトされ、新幹線で岡山駅まで移動させられると、下車してからまたバスで移動する。
港に着くと政府がチャーターフェリーに分乗して、海保と陸自の護衛を受けて島に向った。
道中の彼らは、同じように、この地を通り過ぎて行った皇国の姫君と同じ反応をしていた。高速鉄道に地下トンネル、海に架かる巨大な橋を目を丸くして見ていた。
まぁ、日本の町並みには、大分慣れて来てはいるのだが、それでも新しい物を見た彼らのカルチャーショックは相当なものであった。
「我らは本当にトンでもない国と戦ってしまったのだな。」
「はっ!本国の者達が、次にどんな行動を取るのかが心配で有ります。」
「領地に残った妹達が、何かの騒動に巻き込まければ良いが・・・・・」
アディーレには妹が3人ほど居る。
何れもローラーナ帝国の首都である帝都・ローラマ市から付いて来た者達で、彼女の事をとても慕って付いて来て居た。
帝都の方には、法衣貴族としての役割も在るので、両親と兄の二人が居残って居た。
アディーレは、大陸の辺境領に残った妹達が帝国の戦争政策に巻き込まれるのを恐れていた。
その事に関して、何も出きないのを悔やんで居るのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・5月14日・午前10時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・コヨミ半島・コヨミ皇国・皇都・星都市・星都城・皇王執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「しかし困ったものだ。」
先月から始まった連日の会議、会議。
其処では、帝国講和派の提唱する皇国の3姉妹の帝国の有力者への政略婚の話である。
その事に頭を抱えている力仁は、何か良い手は無いかと苦心していた。
特に紅葉は、講和派との諍いを起しているし、彼の者らからは国を意のままに出きない厄介な邪魔者としての扱いで、帝国へと厄介払いする積もりなのだ。
更には、厄介なコヨミ皇族の血の力の力を持っている血筋の直系者を外へと放り出そうとして居た。
力仁は紅葉が我が身を守れる程に腕が立つ事は承知して居るし、いざと成れば日本の保護下に入れば良いと考えていた。
しかし、下の・・・・紅葉の妹達はそうはいかない。
長女は何とか言い訳をつけて、実家に居られ様にすれば良いし、何時でも逃げ込む為に、日本がこの世界で困らないように相談役・・・アドバイザーとして日本の影響下のある所へと居ろと言ってある。
その為にも、紅葉の身を出向の扱いで、今はコヨミ皇国日本使節団として、福岡市に設置されたコヨミ皇国外務連絡事務所に出向させる手続きを済ませ、派遣させていた。
紅葉自身は、日本政府によって竜史の側に置かれていた。
日本政府は彼女の扱いに困り、面倒なので交援省の大臣に押し付けていた。
それも含めて紅葉は、その状況を面白がり、話し相手兼相談相手の竜史をからいながら交流を深めていた。
しかし、紅葉の下の姉妹達となると嫁か何らかの職に就けなければ、只の部屋住みとして厄介ものだ。
彼女達が厄介者として扱われば、講和派等の者達は、コヨミ皇室とコヨミ皇国政府に圧力を掛けた上で、帝国への平和の使者を謳い、紅葉の妹達を帝国との非戦の証にと、政略婚を目論む可能性は大いに高いと言えた。
紅葉の妹らの内、次女の清香は17歳で、黒髪のポニーティルで、ちょと気が強いクールな毒舌さん。「くっ、殺せっ。」と言うセリフが似合いそうな子である。
三女の麻衣はツインテールで、小悪魔的な性格をしたおませさんで、耳年増の14歳。この二人とも紅葉と違って、並みの兵士より強いが、数に押されて囲まれると遺憾ともし難い。
悩んでいる力仁の其処へと、彼が結婚前に男して喰われて以来、最も苦手な怖~い奥さんが現れた。
「あなた。」
「ああ、葛葉か。なぁ、清香と麻衣の二人をどうしたら良い。このままでは講和派の提唱する外交政策に使われてしまうかも知れん。」
「そうねぇ・・・・・・・・」
葛葉が暫く黙り込んだ。先読みの力で、何かを未来の先を事を見ている様だった。
「あなた、お告げの結果が出ましたわ。あの二人の娘達を養子に出してしまいしょう。」
「はぁ?養子だとぉ?」
奥さんの予知能力と突飛もない発想に驚く所か、呆れてた感じの顔付きをして居る。
「そうよ。どうせならニホンにでも頼みましょうよ。」
「しかしだな、ニホンには預かって貰える様な貴族や良家と言った家柄の家や、友人や知り合いとすら呼べる者すら居ないのだぞ。」
「それに急にそんな話を持ち込まれても、頼む相手やニホン政府にも迷惑だろう。うーむ、取り敢えずだ。お前の予知では、どんな人物がいるのだ?」
「行き先に付いては、複数の可能性が在るので何とも言えませんわね。」
「それでも問題ないと私の先読みの力では出て居ますわ。」
ハッキリとした人物は分からないらしい。
引き受けてくれる家が複数ある可能性なので、出きるとしか言えない葛葉。
「う~む。まぁ、大事な娘の為だと言えば、彼の国も相談くらい乗ってくれるだろう。言うだけ行ってみるか。」
「とても良き縁で結ばれているとも出て居ますし、きっと大丈夫よ。」
そんな訳で紅葉の妹の二人を日本の何処の家に養子か、疎開したいので、何とか預けられないかを聞いて見る事にしたのである。
その翌日、コヨミ皇国の皇都である星都市の東にある日本大使館に、力仁国皇と葛葉皇后の名前で、皇国宰相である四条由美が日本の外務省に皇女である次女と三女の二人娘を養女として預けるか、疎開者とする形で、何処かで預かって貰えないかと、問い合わせたみた。
すると・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うーん。コヨミ皇国の皇女二人を養子か、疎開させらないかだと?」
総理の安元は、皇国の国皇と皇后から突拍子もない事を言われて、どうして良いのかが分からずに居たのである。
話している相手は、高橋官房長官と諏訪部外務大臣の二人だった。
諏訪部は、外交使節団の出発前の忙しい中で、最後の詰めの会議をするべく、首相官邸に来ていた時の事だった。
「安元さん。俺もこの件は、如何するのかの判断に困ります。」
「そりゃ、そうだ。俺だって困る。それにしても、何でまた、養子なんだ?留学や疎開なら理解が出来るんだが・・・・・・・・・」
「諏訪部さんの話を聞く限りでは、政情が良くない上に、皇室や徹底抗戦派閥勢力と敵対する派閥が居る様ですね。」
「国皇としての立場は在りますが、親としては、大事な娘さんを安全な土地へと、逃がしたい様ですね。」
高橋は、一通りの話を聞いた上で、大方の事情を察した様である。
「うーん。でもなぁ・・・・・・・・・」
其処に諏訪部が更に付け加えて言う。
「先方も養子にしたいのは、何も身勝手な理由で無いようです。」
「それって、あれか、例の力か?」
「それも有ると思います。それは兎も角として、周辺国の王族や諸侯に養子として行かせるには不安が有るのでしょうね。」
「その点、日本なら安全な上に、全てが平民の国である為に、娘達が日本の庶民の家の子として養子出されれば、皇女としての価値が下がると考えた苦肉の策の様ですね。」
「なるほど、別の意味で傷物とする算段ですか?」
「無茶で突拍子も無い発想ですが、良く考えていますね。」
高橋が納得した顔付きで頷く。
「それに必要な養育費や経費も持つと言って居ます。」
「家も手狭なら建て替えの予算を組むと、これまた親バカ・・・・・・と言うか、娘思いな事で・・・・・・・・」
どうやら力仁国皇と葛葉皇后の二人は、迷惑を掛ける事に成る引取り先に対して迷惑料と娘達に対する為のお金は惜しまない様のであった。
「だが、誰でも良いと言う訳にも行かない。しかも莫大なお金が絡む事柄だ。お金は政府が責任を持って預かるとしてもだ。」
「行き先は俺達の中で、探したほうが良いな。」
「万が一にも養育費をねこばばをされたりしたら大変だっ!!」
「ついこの間のニュースでは、誤入金した地域支援の給付金が、数千万円がネットカジノでスッカラカンにされると言う珍事も起きて居る。」
「預けるなら裏が取れている家柄と信用の措ける人物でないとな。」
「なぁ、高橋、諏訪部。お前達の親戚か閣僚の誰でも、その親戚で良い。受け入れても平気そうな家は在るか?」
「申し訳ありませんが、どの閣僚も年老いた両親がいる位で、とても学生くらいの、それも年頃のお嬢さんを預かれる様な人達は居ませんね。」
「閣僚関係の親戚でも無理かも知れません。俺達も、もう直ぐ60代後半の両親がいますし・・・・」
「だよな。みんなは、もう直ぐ40歳近い者達ばかりだ。とてもお預かりできる家は・・・・・・・・・・」
「家が・・・・・・・」
安元は何かを忘れている様なと少し言葉を無くす様にして、考えて行く。
「こう成ったら、国内の資産家の家でも当たり・・・・・・・」と高橋が言い掛けた時である。
「あっ、一人だけいたぞっ!」と、暫しの沈黙の後に、安元はハッと気が付く。
3人が皇国の国皇と皇后の無茶な頼みに真剣な表情で悩みながら「うーん。うーん。うーん。」と言いながら眉間に皺を寄せて悩んで居ると、突然、安元が声を上げたのであった。
「そんな人が居ましたっけ?」
「ああ、俺もそんな人物は思い当たらないな。」
高橋と諏訪部の両名は誰なのか分からない様だった。
「居るだろっ!!流石に今回の案件は無茶かも知れんが、彼の家は丁度、子育ても終えたばかりだ。」
「それに迷惑料も含めた多額のお金が支払われる。」
「決して、悪い話では無い筈だ。」
「それって・・・・・」
「まさか・・・・・・」
二人は、流石に此処に来て何所の誰なのかが、ようやく気付いたらしい。
「取り敢えず連絡をしてみよう。」
安元は決断すると、手元の電話で電話帳から見つけ出した電話番号に電話を掛けるのであった。
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月23日・午前11時00分頃・ユーラシナ大陸・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・日本国・ 群馬県・霧野市・高見家にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この日、高見家の側に黒塗りの公用車と引越しのトラックが業者が来ていた。
竜史の身の回りの荷物と家財の一部を仕事先の福岡市の官庁関係者専用寮に運ぶ為である。
しかし、当の本人は今日は来ていない。
この一月ほど、東京と福岡を行ったり来たりとして居るし、最低限の仕事のレクチャーと、挨拶周りに追われていた。
それに紅葉の相手で、視察と称する国内の物見遊山の相手すらさせられて居た。
内閣のお歴々の面々からは皇女接待、皇女接待と冗談めいた事を言われて若い彼を揶揄って居た。
何所の職場でも若者は弄られるのは、宿命みたいなものである。
さて、黒塗りの車で来ていたのは、何と皇女の紅葉であった。
日本で目立たない様に、東京のデパートで購入した薄い赤い色のスカートと白い上着を着ていた。
そして、高見家に挨拶に訪れていた。
訪問がアポ無しの行き成りだったので、紅葉が訪問すると竜史の母親であるすみれは、何も言わずに迎い入れてくれた。
「テレビで見た写真より実物で見る方が、ずっと可愛い子ね。」
高見家の一階の居間で向かい合い、初めて会った二人。
なのに紅葉は、すみれのサッパリとした性格と自由さに、何故か初めて会う気がしないのである。
「えっと、今日お伺いしたのは、霧野織が大変に歴史ある物だと聞いて居たので祖国の役に立てないかと、近くまで立ち寄った事も有りまして、視察の序でに、竜史のお母様に、ご挨拶をと思いまして。」
「でも建前でしょ、それ。」
笑顔で言い当てられた紅葉は、思わず「えっ」と思ってしまった。丸で母である葛葉と話している感じがしていた。
(そうか、お母様と似た性格の方なのね。)
「失礼しました。息子さんを厄介な事に巻き込んでしまった事と、私が胸を張って息子さんをお守りしますと言いたくて・・・・・・」
「ふ~ん。まっ、良いわよ。あの頑固でめんどくさがりのドラ息子を宜しくね。紅葉ちゃん。」
「序でに言うと、あの子の一生なんかの面倒を見てくれると助かるんだけど・・・・・・」
ちゃんづけで呼ぶのは、最初の親友の姉くらいで久方ぶりであった。
すみれは冗談で一生なんて言ったが、何と無くそんな気がして居たりする。
この子は近い将来、家に嫁としてやって来そうだなと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「堅い話はもう、良いわ。其れよりも、お昼くらい食べて行ける?」
「はっ、はい。」
「外に居る人達は?」
「護衛の人達は近くの食堂に行きましたわ。」
「そう。多分筒元食堂かしら?じゃ、ふたりで食べましょうか?」
「はい。でっ、できればお手伝いを・・・」
恥かしそうに昼食の手伝いを申し出た紅葉。
「良いわよ。皇女様でも出来る事をさせるわね。」
「できれば、此方に来た時や、暫く居るので時間の有る時にでも料理を習いたいのですが・・・・・・・・」
「ふーん。」
すみれは何かを感じ取って居た。
何かあると・・・・・・でなければ、嫁に来ない赤の他人のお嬢さんが料理を習いたいと言い出す筈がないのだ。
「これからもニホンとは行き来する機会も有りますし、祖国から特別外交官として出向扱いと成ったと父からも手紙で知らせが来ております。」
「騒動に巻き込んだ身としては、良く顔合わせをする竜史に、せめて彼の食べなれた物でも作って上げたらと考えて居ます。」
「故郷の味なら、忙しい彼の力に成れるかも知れませんし・・・・・・」
「そうね、あの子は向こうで、自炊すらせずにロクな食事をしなさそうだしね。」
「良いわよ、貴女に仕込んで置けば、あの子の食事の偏りも防げそうね。」
「はいっ、頑張らせて頂きますっ!」
丸で嫁入りするかの様な意気込みの感じで気合の入る紅葉。
ぱあっと満面の気合の入った笑顔でやる気十分な顔付きをしていた。
其処へ電話が呼び出し音が鳴り響く。
慌ててすみれが出ると安元だと言うのだ
「もしもし、お久し振りです。安元です。すみれさん。」
「はい、安元さんお久し振りですね。あの子は頑張って居ますか?」
「はい。徐々にですが、本人なりに頑張って居ますよ。」
「所で今日は折り入って頼みたい事が有るのですが・・・・・・・・」
急に余所余所しくなる安元。
「何でしょう?」
「実はコヨミ皇国の紅葉皇女殿下の妹君の二人をご養女か疎開先として件を高見家でやって頂きたいと思いまして、お電話した次第でして・・・・・・・・」
「・・・・・養女?流石に私でも、急にそんな話をされてもね。」
「そうでしょう。コヨミ皇国の国皇と皇后のお二人は、是非、日本で頼みたいと言われて居りまして・・・・」
「こんな頼み事は、内閣の閣僚か、その親族ではと、一旦は考えたのですが、どの家も高齢者が多く、唯一、高見君の家がそれに該当すると思い至ったと言う訳でして・・・・・・・」
「ああ、そう言う事ですか?」
「あっ、そうだわ。ちょっと待ってて下さいね。」
「はい。」
すみれは電話を中断して居間に向った。
「ねぇ、紅葉ちゃん。貴女の妹達が、家の子に養女しませんかって、安元さんが言ってるんだけど、どう思う?」
「えっ?」
流石に優秀な先読みの力を持つ彼女でも、読もうとする気が無ければ、その未来は見えないのだ。
「知らなかった?」
「その事は流石に知りませんでした。多分、お母様が思い付いたのかと・・・・・・」
「なら、問題無いわね。」
「えっ、でもご迷惑では・・・・・」
「困ってるんでしょ、貴女達のご両親は?」
「恐らくは・・・・帝国へ嫁に差し出せって息巻いてる講和派の領主達が居るのが問題かと、私もその対象ですが、長女なので、色々と言い訳が出きますし、でも・・・妹達は・・・・」
「それだけで十分よ。」
紅葉から聞いた事情を察したすみれは、即決だった。
「もしもし、安元さん、その話をお受けします。」
「ああ、やっぱりダメでしたか・・・・って、えっ?受ける?」
安元はやっぱりダメだと思い諦めの言葉を言いかけると、お約束の乗り突っ込みの言葉を言ってしまう。
「はい。」
「でしたら、此方で必要な手続きをして置きます。」
「日本に来る期日が決まりましたらお報せします。」
「詳しい事は、決まり次第と言うことで、それでは失礼します。」
受話器を置くとすみれが居間へと戻った。
「あの~」
「気にしないでね。あの子が居なくなって、家も人寂しくなるから丁度良いわよ。」
「済みません。もっと巻き込んでしまって。それと多分ですが、多額のそれも国家予算並みの養育費が支払われると思います。迷惑利用込みで・・・・・・・・」
申し訳なそうに言う紅葉。
「お金持ちね。それって税金なの?」
「いえ、コヨミ皇室で持ってる各種貨幣等に使う鉱山からのお金です。」
「ふーん、まっ、良いわ。それよりも私達、これから家族になるんだから料理をしっかり仕込まないとね。」
「はっ、はい!。」
こうして高見家は、何故だかコヨミ皇国の親戚に成ってしまったのである。
すみれが受け入れを決めた決定的な理由として、すみれと紅葉の出会いが有った事とすみれが紅葉の事をとても気に入ったからでもあった。
「貴女のお母様とは良い友達に成れそうね。」
「あはは・・・・・」
不吉な事をサラリと言われた紅葉は冷や汗を掻いていた。
そして、養女の一件の事を、肝心の竜史は義妹達に出会うまで知らされる事は無かったのであった。
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