19話 ゼロから始める異世界の外交政策 4
話は少し戻り、ローラーナ帝国暦600年・アースティア暦1000年・西暦2030年・4月7日・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ロートレア地方・ドラグナー皇国(おうこく)・首都・新王都・ニューサリヴァン市・ニューサリヴァン港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先の龍雲海沖海戦の敗戦の後に、ベンジョンこと、ベン・ジョンソンは、4隻の帆船型の戦列戦艦を率いて命からがら数日前に出港したドラグナー皇国の新王都サリヴァン市のサリヴァン港に戻って来ていた。
どの兵のも血だらけのボロボロ、顔には黒ずんでいるのが殆どだった。
港にある海軍基地に着くと船を降りるなりバタリと倒れこみ、緊張が途切れたせいも有ってか、死んだように眠ったと言う。
一方、ローラーナ帝国海軍・東洋方面艦隊所属・第120艦隊の無残な帰還を見ていた者が二人いた。
一人はニューロートレア城で、もう一人は港で直に見ていた。ニューロートレア城はサリヴァン山脈を利用して作られている。
ニューロートレア城の中は広く、東西に7キロ、南北に10キロと広大である。その北東の丘には小さな城壁が築かれ、庭付きの屋敷が建っていた。此処にはとある高名な魔導師の女性が幽閉されていた。
彼女は気まぐれに、ニューロートレア城の城壁を散歩して居た際に港町の方向を眺めて見て居た。
「あれは・・・・・・」
「何だか面白い事態になりそうね。そう言えば、リナは、あの子の方は元気かな・・・・・・・」
この人物が何者かなのかはもう少しだけ待って貰いたい。
そして、もう一人はと言うと、これからの歴史のうねりに関わる人物で、この国の第一皇女にして姫将軍たるヴァロニカ・サークラ・レアモンであった。
「帝国海軍の戦艦が、こうも簡単にズタズタのボロボロに成ろうとは・・・・一体、彼らに何が有ったのだ?」
帝国海軍艦の悲惨な末路に驚くばかりの彼女だった。彼女も間も無く歴史の面舞台へと立つ事に成るのである。
更に数日後、ローラーナ帝国暦600年・アースティア暦1000年・西暦2030年・4月13日・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ローラーナ帝国領・シャッポロ属州領・旧シャッポロ王国の王都・オタル市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ベンジョンは龍雲海沖海戦での傷が癒えた彼は、帝国東方軍総司令官である第五皇子ゾイザルの呼び出しを受けて、帝国東方制圧派遣軍の本拠であるオタル城へと召還させられる事と成ったのである。
ベンジョンは文字通りに首が飛ばされる思って、ここ数日の間は、生きた心地がせず、常に顔が真っ青に成っていたのである。
「ぐぬぬっっ、このままではっ私の命が・・・・・」
ベンジョンがビクビクとする中で、遂にその時がやって来た。
帝国東方制圧派遣軍の本拠であるオタル城。
其処には、この城の主にして帝国東方軍総司令官である第五皇子ゾイザル・セイダル・ローラーナ27歳が統治を任されていた。
帝国では13歳を過ぎると成人の儀を終え仕事見習いや上部の学校などへと出されるのが一般的だ。
何も能力も無く、跡継ぎではない人間は大抵軍人に成るのが当たり前だ。
10年以上勤めれば主要都市で市民権が得られ、15年で官僚や政治家等に成れる事も出きた。
それ以外は特定の年数を勤めれば大金を手にして故郷や町で仕事を始める等して悠々自適な生活を送る者も居る。
最も良い暮らしをする方法は、戦争で大手柄を挙げて地方の領主になるか、地位の高い者に擦り寄って賄賂やお零れを貰いつつ、権勢を極めて貢がれた大金で贅沢な暮らしをする事だった。
さて、帝国皇族はと言うと成人になると特定の最前線に派遣される。
補佐を付けての条件付きはであるが、地方での実務を任されるのだ。
これは王侯貴族等に対して、将来に向けて、経験を積む言う意味で統治や軍の指揮を任される為である。
ゾイザルは、周りの帝国で定番と言うべき悪い大人達を手本に育てられてきた。
それ故に帝国は最強、帝国人は絶対であり、世界に覇を唱え、世の絶対の支配者であると教えられ、その事を彼は信じて疑わなかった。
そんな彼でも愚者で操り人形に成る様なバカでは無かった。
16歳に成る頃には、政務や軍務を理解し始めており、17歳には当時シベリナ連合の一画であったドラグナー皇国(おうこく)を100万人以上の兵を送り込んで、たったの5ヶ月で首都まで迫り降伏させてしまう。
多くの市民を奴隷にし、彼の国の特産動物で、貴重な戦力であったワイバーンを始めとする飛竜やドラゴンブリダー、聖龍と言う特殊なドラゴンと竜使いを戦力に組み込んだ。
そして、ドラグナー皇国の王族や一部の貴族が保有する魔導空挺戦艦の命令指揮権をも手にしての破竹の勢いである。
そして、今そのゾイザルの地位を脅かす敗戦の報せが舞い込んで来たのである。
ベンジョンとパシリが、城の謁見のまで跪いて居る。
戦での怪我や疲れのせいで、ここ数日間の間、病室で寝込んで居た。
そのせいで、謁見でゾイザルに会う為の、替えの服を用意が出来ておらず、打ち首の可能性すら有ったので、どうせなら薄汚れた格好で如何に酷いめに有ったのかを訴える言い訳の材料にしようとこずるい浅知恵に打って出たのであった。
彼の着ている鎧や衣服は、如何にもな感じで煤だらけで有り、これから会うゾイザル対しての恐怖から、汗がダラダラと溢れていた。彼らはコヨミ皇国との海戦での敗走で処罰をされるの事は、ほぼ間違いないと脅えて居るのである。
本来なら帝国内でも小競り合い程度に戦線で敗戦しても、滅多な事では処刑や左遷、投獄や財貨没収等の処罰には、成らないのだ。
だが、今回は違った。謎の鋼鉄の船と鋼鉄の戦艦群を操るニホン国なる国の海軍に負けたと言う事実である。
そればかりか、これまでの軍船での海戦で勝って来たと言う帝国が、大敗北と指揮官を見捨てて逃げ帰ったと言う事実が彼らの処分を重い物にしかねない状況だったのだ。
ゾイザルが謁見の間に現れ、ベンジョンの周囲には将校ほ始め、武官や文官などのゾイザルを補佐している者らが、ズラリと立ち並んで居る。
ゾイザル横には専属の秘書官が、この度の龍雲海沖海戦に付いての報告書を手渡して居た。
ゾイザルは報告書を見て内容を精査するに連れて顔をニヤけさせていき、処分に付いて決めた様だった。
彼の胸中に緊張が走った。
だが、その通達決定は、想像をしていた事よりも意外なモノになったのである。
「ベンジョン。貴様の不手際に付いて、俺は何も問わないぞ。艦隊や竜空母の全てを失ったとしてもな・・・・・」
沢山の将校や文官が居並ぶ謁見の間で冷や汗を掻きつつ、ベンジョンは平伏したままで顔を引きつった顔で心の声で言った。
(私の名はベン・ジョンソンと言っているのに、どうして高貴な方々は、私の名はをベンジョン扱いするのだ。ぐぐぐぐっっ。)
ゾイザルの話は尚も続いた。
冷やかな目をしつつも、彼は何所か楽しそうだった。
「それにしても、謎の鉄船に謎の鉄造船の海軍艦隊、そして、それを率いていたと言うニホン国なる未知の謎の国家。くくっ、実に愉快ではないか。」
「近頃の我が帝国は、連戦連勝の上に引き分け以外は、負けと成った戦は国境や威力偵察程度の小競り合いが良い所だ。」
「此処に来て歯応えが有りそうな国が、まだこの世界に在るとはな。なぁ、ガイウスよ、貴様はどう思うか。」
ゾイザルは 帝国東方制圧派遣軍団の将軍の一人であるガイウス・バリリウスにニホンと言う国家の対応の意見を求めた。
「はっ、率直に申し上げますと、ニホンなる国に付いて我が帝国軍の全ての情報機関や東方に詳しい者達から既に聞いて周った所によると、誰も知らないとの事です。」
「何と、誰も知らぬと申すか。益々持って面白い。」
「皆も思わぬか?我が帝国の世界制覇と創造神アーライト様を称えるアーライト教の教えによる世界統一まで後僅かだ。」
「俺が与えられた仕事であるシベリナ地方とコヨミ地方の征圧までもう一息だ。」
「既に大陸保有数一と言われ、魔法技術大国であるダバード・ロード王国の魔動機械兵団の半数は壊滅し、その隣国のアルガス公国騎士団は保有していた古代武具を奪い誰も届かぬ場所に隠し封印。使い手であったアルガスの各騎士団長どもは、悔しい想いをしている事だろう。」
「そして、彼の騎士団は、弱体したも同然。忌々しいアセリナ王国の聖天使騎士団も連日の戦争で、主力の女天使共が減りつつある。」
「そいつ等の動きを封じてしまえば、残るは普通の人間の男ばかりで雑魚も同然、残るラクロナ王国は、伝説の宝具が封じてあるクリスタルは、我が諜報隊との奪い合いで行方知れずとなった。残るはそれほど強力でなく名ばかりの騎士団率いるアリスとか言う小娘のみ。」
「北方のドラグリア白龍大帝国の白龍大帝のロリハバァは、南のドラグナー皇国との関係と同胞達の頭数が目減りする事を気にして本気に成れずいる。」
「その上ご自慢の白竜騎士団が、我がホムンクルスドラゴン兵団に圧されボロボロ、残るオローシャ帝国は自衛に徹して攻勢に及び腰。」
「コヨミの侍どもは勢いが良いだけの猪。先読みの巫女姫がいるお陰で持ちこたえているが、それも何時までも持ち堪えられかな?」
「彼の国も堕ちるのも時間の問題だ。本国も北欧の盟主であるアルビオン王国の聖騎士王の小娘が粘っているが兵力がギリギリな上に、我が帝国軍の軍勢が各方面から攻め入られ、各国がバラバラに対応するしかなく、苦戦を強いられて居ると聞く。」
「南方に目をやると謎の島国が現れ混乱をしているが、我が国の南方制圧軍と同盟国がミンフィル王国が小賢しい用兵戦術で我が軍を追い返し苦戦を強いられているが、それも時期に大軍の援兵が送り込まれて決着が付くだろう。」
「残るアセニア亜人連合国は、鎖国ばかりの蛮人共に過ぎない。其処へ現れた謎の国家、彼の国が我らと戦うか、従属するか、滅びるか、自らの殻に閉じ篭るか、じっくりと見定めてやろうじゃないか。」
其処へガイウスが苦言を言って主を窘める。
「殿下、あまり油断めいた発言は、兵ばかりでなく諸侯貴族ら全てがが敵を侮る結果となり良くないですな。」
「ガイウス、俺は何も油断はしていないぞ。だが、ニホンとやらバカでないならすでにコヨミの皇后やその娘たる巫女姫と結託している可能性がある。いや、俺がコヨミ皇族の女どもの立場なら既に動いているな。」
「成らば如何いたしますか。」
「ニホンに関する情報を集めるのだ。そして、その情報を元にして次なる策を考えるのだ。」
「御意に・・・・・・・・」
「さて、俺は執務室で書類仕事が有る。ニホンとか言う国の事はお前達で何とかしろ。」
ゾイザルはそう言い残して謁見の間から立ち去って行った。
(ぐぬぬっ、皇帝陛下の威光が無くばっ!見てくれだけのタダの皇子の小僧の癖にっ!)
ベンジョンは、毎度、毎度のお約束である名前を間違われて血管がぶち切れそうであった。
「はぁ~、また、あんな化物じみた軍を相手にさせられるかも知れないのか。ヤッパリ私は上司に恵まれていないな。」等とパシリが愚痴っていた。
こうして、帝国も日本の調査に乗り出したのである。
だが、その結束力は悪く、大軍を有する烏合の衆に過ぎないが、その兵力の数は侮れない物が有った。
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