6話 竜雲海沖海戦 4
アースティア暦 1000年・西暦2030年・4月3日・午後13時00分頃・日本国・東シナ海近・コヨミ皇国・南西国藩領及びローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第9航空団那覇基地所属の101小隊、202小隊、303小隊を率いて居る指揮官たる神谷晶一等空佐は、海自への現場到着を報せるべく無線通信を入れた。
「此方は第9航空団・那覇基地所属の第一小隊サシバ01の神谷一佐っ!」
「あさくら号救出派遣艦隊へっ!」
「現在、我が那覇第一航空隊の第一小隊、第二小隊、第三小隊共に客船あさくら号の航行して居る海域から15キロ地点にて旋回待機中っ!」
「其方の指示があり次第、7分ほどで攻撃を仕掛けられるっ!」
「こちら救出派遣艦隊・旗艦いせの鈴置一佐だっ!!」
「空自航空隊の支援派遣に感謝する。」と鈴置は締め括る。
続けて古谷一吉二佐が現在の状況説明と鈴置一佐の命令を伝えるべくマイクのトークスイッチを押して語り出した。
「今現在、我が方は武装勢力艦隊に対して民間船に対する攻撃を中止するように警告した。」
「そして、その結果、我々の要求は拒否された。」
「由って最高司令官たる安元総理大臣から命令を受けて居る艦隊司令の鈴置一佐からの命令を伝える。」
「全ての全兵装の使用を許可する。直ちに貴隊は、現海域に突入し、出うる限り敵航空隊を撃滅すべしっ!!!」
「数は推定200機以上で、敵の航空戦力は、竜に跨った騎士と見られる。」
「貴隊の健闘を祈る。以上っ!」
「了解っ!!」
神谷一佐は、海自との交信を終えると、随伴して居る部下達に無線機を通じて、命令を発した。
「聞いての通りだ、野郎どもっ!!!」
「これより民間船の救出の為、航空支援を開始するっ!」
「各隊っ!初撃は一斉にミサイルで攻撃するっ!!」
「残りの居残った敵はバルカン砲で撃ち尽くすぞっ!!」
「ある程度の敵を減らしたら撤退する。」
「残りは、海自の護衛艦隊が掃討戦を行う予定だ。」
部下である長谷川と速水の第二・第三小隊が後に続いて答える。
「サシバ02、了解っ!!」
「サシバ03、了解っ!!」
神谷一佐が率いるF‐15J戦闘機隊は、その一路を現場海域へと向うのだった。
さて、この戦闘に何故、航空隊が必要かと言うと、フェリーに送れる救援隊が護衛艦隊がワンセットしかない事。
幾ら防空能力が高くミサイルや砲弾が命中率100パーセント近い艦船が有っても弾薬が無限では無いからだった。
異世界の国家の位置と軍事の事情が分からない今は、極力燃料と弾薬の浪費を避けねば成らない。
敵航空機と敵艦隊を空自の力を見せつけた上で黙らせ、それでも抵抗を続ける様ならば、敵艦隊を護衛艦隊で、必要最低限の戦闘で制圧すると言う思惑があるのであった。
空自航空隊が迫る中、アディーレは戦局に疑問を持ちながらも勝利を確信した。
「・・・・勝った。」
だが、その時に遥か遠くから「ゴオオオオォォォォォォーーーッ」と言う大きな轟音が空と海面を駆け巡った。
「行くぞ野郎どもっ!!」
「ターゲットインサイトっ!!ミサイル一斉発射っ!撃てええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
F-15戦闘機のロックオンの音が、コクピットに鳴り響く。
放たれた鋼鉄の空飛ぶ槍は、音速で指定された目標へと機械的に判断をしながら敵の懐へと飛び込んで行く。
そして、竜騎士15名が一瞬にして、一斉に「ドゴオォォーン」と言う強烈な爆音共に爆散するのだった。
帝国の竜騎士達らは、何も出きないまま、目にも留まらぬ速さでミサイルが命中し討ち取られてしまう。
「何だ?!何が起こった?」
「分かりませぬ。」
「竜騎士達らが、突然に唸る様な轟音と共に爆発したとしか・・・・・・・」
アディーレは飛来した物体が何かは分からず戸惑った。
更に悪夢は続く・・・・・続けて、ミサイルの第2派が飛んで来たのだった。
「こちら第二小隊サシバ02。第二波攻撃のミサイル命中、続けてドッグファイトにて、敵右側を貫きます。」と長谷川健児一尉が、指揮下に在る第二小隊と共に、敵の右翼側に向かってバルカン砲を撃ち捲る。
「よーし、上出来だぞっ!健児っ!!!」
「速水っ!!左側どうだ?」
「こいつ等完全にカモ同然ですよ。何に追われて居るのかさえ、分かって居ないようですね。」
F-15戦闘機に由って、次々帝国軍の飛竜が撃ち落されて行く。
ミサイルの攻撃を受けた騎竜士達は悲鳴を上げる暇も無かった。
F-15のバルカン砲の追尾攻撃を受けた者は、混乱の中で落命して行った。
「残弾と燃料を考えると、そろそろ頃合いか。全機に告ぐっ!作戦目的を達成したっ!!
「予定通り撤収するぞっ!!残りは海自さんの仕事だっ!!」
一通り敵の掃討を終えると神谷一佐達の航空隊は機体をクルリと反転させて、派手な飛行機雲を靡かせながら基地へと帰還の途に着いた。
一方的で暴力的までな攻撃に、帝国海軍は一瞬攻撃の手を緩めた。
帝国軍の飛竜隊は、その数を100機まで減らされて居た。
一方のコヨミ水軍は紅葉が空に舞う鋼鉄の鳥で、帝国海軍が怯んだと見て、此処は攻勢命令をとの決断を下し、全軍に命令を発した。
「今だっ!竜騎士が怯んで居る隙に、手前の艦隊だけでも沈めろ。」
「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーおーーーーっ!!!」」」」」
第3艦隊と7隻の竜空母艦隊を指揮して居たべン・ジョンとパシリ等は、謎の攻撃に混乱をし始めていた。
それ処かコヨミ水軍が、ここぞと言わんばかりに攻勢を強めて来て居る。
「一体全体、何が如何なって居るのだ?」
「私にも、何が何だか・・・・・・・・・」
海上自衛隊側にも動きがあった。
護衛艦隊の全ての兵装が一斉に帝国艦隊の第一艦隊と第二艦隊、そして、未だに攻撃を続け様として、大空で舞って居る100機まで、その数が減った竜騎士航空隊に照準を合わせ始めた。
同時にイージス艦であるこんごうとちょうかいの2隻が、CICの指揮の元で帝国竜騎士隊に止めの一撃が放たれ様として居た。
「こんごう、ちょうかい共にスタンダードミサイルを敵航空部隊に指向っ!!」
「垂直式ミサイル発射装置開放っ!!」
「誘導電波照射装置配分っ!!」
鈴置一佐は戦闘を長引かせない為に、手加減をする事を控えていた。
敵も航空護衛艦とは違う方法とは言え、航空機を搭載して居る。
思わぬ失態が海自艦隊に降り掛かるかも知れない。
先ずは第一に、敵航空戦力の壊滅。
次の目標として、第二に選んだのが武装勢力艦隊の無力化を狙って居た。
射撃管制官が、ミサイルの的をどの敵に当てるかを決まり終えると、声荒げて砲雷長に言った。
「スタンダードミサイルSM2発射用意ヨシっ!!」
「サルヴォーッ!!!」
「ドゴオオオォォォーーン」と言うミサイル発射音と供に、飛び出したミサイル達は、未だこの海域の上空に多数残って居るであろう竜騎士航空隊に向って飛んで行った。
「何だ、あれは?」
「こっちに向ってるぞっ!」
「よっ、避けられないっ!!」
「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」
迫り来る謎の空飛ぶ槍に、大空で逃げ惑う彼らは恐怖した。
ミサイルが縦横無尽に飛び回り、容赦なく竜騎士航空隊に命中し、撃墜されて行く様を見ていたアディーレは、呆然として眺め見て居るしか無かった。
帝国軍の最底辺では有るが、一瞬にして、この世界でも一、二を争う軍事力に優れた戦力が一瞬にして全滅したのだ。
彼女の理解を超えた出来事に頭を抱えて混乱していた。
「各艦っ!主砲およびアスロック発射っ!よーいっ!」
「各艦っ! 主砲及びアスロック発射っ!よーいっ!」
しらね、せんだい、まつゆき、あさぎり、あまぎりのアスロックSUM8連装発射機が左側に一斉に回頭する。
「アスロック発射っ!目標っ!空母艦隊っ!主砲は威嚇砲撃指定目標と同じ目標っ!」
「アスロック発射っ!目標っ!空母艦隊っ!主砲は威嚇砲撃指定目標と同じ目標っ!」
「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!」
垂直発射管のアスロックとSUM8連装発射機が割り振られた竜空母艦隊の直前で、水中の中へと水没し、一斉に竜空母艦へと突撃する。
その数秒後、竜空母艦の船体中央で、大爆発を起こして、大きな水柱を上げた。
護衛艦隊は、帝国海軍の第二・第三艦隊に容赦なく砲撃を浴びせた。
それでも反撃を止めないので、最後にはマストに砲撃を加えて航行不能に陥らせた。
「一体、何がどうなっているのだ。ニホンとか言う国の戦艦はバケモノなのか?!」
彼女は周囲の様子を冷静に見て居た。
この間にも、味方の戦艦は砲撃の手を緩めていない。
アディーレはドンドンと音を放ち、全てのマストの柱が倒されて行く姿を呆然と眺め見て居る事しか、出きずにいた。
帝国将兵達は、信じられないと言う顔して、真っ青な顔付きに成って居た。
この世界の大砲は狙って当たる物ではなく、当然ながら命中率が悪い。
海上や水上で在るのなら尚更である。
そして、尚も彼らの悪夢は更に続いた。
鈴置一佐は、ヘリコプター搭載型護衛艦の甲板に出ている艦載機に発艦命令を出した。
「AH-64D隊各機へっ!!全機発艦せよっ!」
「SH-60K哨戒ヘリは、陸自隊員と海自特別警備隊を乗せて、別名有るまで待機っ!」
AH-64D・戦闘ヘリコプター・アパッチは、いせから一斉に飛び立つと、護衛艦隊の主砲とミサイルで、更に数減らされて居た飛竜隊への攻撃を開始した。
誘導弾と30ミリ機関砲の威力は絶大である。
動きが早い戦闘機、後の帝国内では鉄竜と言う名前が付けられるが、その鉄竜とは、また違った強さを誇るアパッチに竜騎士達は恐怖した。
飛竜の数が多ければ、恐らくアパッチの方は、苦戦をしたかも知れない。
「これが最後の通告だっ!これ以上の抵抗は無駄だっ!」
「白旗を揚げ降伏する事を求める。従わなければ全艦を撃沈するっ!」
ニホン国軍なる軍の司令官は、帝国海軍に対して最後の通告をし、降伏を求めて来た。
最高指揮官たるアディーレは迷った。
だが、彼女は名誉や栄達を重んじる他の帝国貴族とは違って居た。
常日頃から彼女は、現実に起きた事を重んじて来た。
だが、今起こって居る事が、余りにも現実離れした出来事で在るが故に、判断に困って居た。
其処に更なる追い討ちが掛かって来たのである。
「アディーレ様。本隊の先方隊の5隻が、コヨミ水軍に船体突撃され、白兵戦闘の末に拿捕されたと報せが、我が艦への通告として、信号旗で報告して参りました。」
「何だと?!」
コヨミ水軍は、帝国艦隊の混乱の隙を突いて、少ない水軍船を用いては居たが、帝国海軍の戦列戦艦5隻を見事に拿捕して見せた。
一方の副司令官たるベンジョンはと言うと・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそっ、此処は撤退だっ!」
「アディーレ様は、如何なさるのですか?」
「知らんっ!!!」
「竜空母と飛竜の殆んどを殺られたのだっ!此処は急ぎ撤退して、この事を帝国東方制圧軍総司令官で有らせられるゾイザル殿下に、急ぎっ!ご報告しなければならないっ!」
「小娘の一人や二人の生死よりも重要な事だっ!」
(それって、単に逃げる為の口実じゃ・・・・・・)
「パシリよ、サッサと逃げるのだっ!ほら早くっ!(でなければ、わしの命と出世が無くなるっ!)」
「はっ、はいっ!了解でありますっ!」
悲しいかな中間管理職と下っ端とは、常に上官には逆らえない性であり、世の習いでも在るのだ。
そんな訳でベンジョンは、スタコラサッサと逃げて行くのである。
それに付き従った船は、僅かに4隻だった。
そして、この撤退劇の報告は、すぐさま周囲を見張りをして居た後方の艦から手旗信号で報される事と成った。
「申し上げますっ!」
「後方の戦艦から報告ですっ!ベン・ジョンソン様と指揮下に在る艦隊は、撤退を開始したとの事ですっ!」
「なぁにっ!?あっああ奴めっ!指揮官である、この私を見捨てて撤退だと?」
「アディーレ様、如何致しますか?このままでは・・・・・・」
彼女は祖国の王侯貴族至上主義の中でも、部下や領民を大事にする珍しい人格を持って居た人物だった。
「此処は仕方があるまい。大事な将兵の命には変えられまい。」
「では・・・・・」
「遺憾ながら降伏する。白旗を揚げなさい。」
「はっ!!」
こうして、ローラーナ帝国海軍東洋方面艦隊の第120艦隊は、約8割近い損害を受けて、指揮官アディーレ・グレッサ辺境侯爵(少将)を残して撤退した。
交戦した4000人の帝国軍の内、撤退したのが440名、戦死者60名、軽傷者400名、
約3000人近い将兵が、日本国・自衛隊の手に由って捕虜に成ったのだった。
その他には飛竜30匹と7匹のシードラゴンが捕獲され、居残ったアディーレ達帝国海軍の全ての艦隊に白旗が掲げられて居た。
敗北した帝国将兵である本人達でも信じられない戦果である。
かくして、日本の異世界に措ける初の武力衝突は、日本側の一方的な勝利に終わった。
この出来事が、後に異世界の国々に波及して行く事に成って行くのであった。
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