6:六日目
六日目:休息-乙女、蓮蝶の手記
瑠璃蜘蛛が夕映えのところの侍女と一緒にいなくなってから、すでに六日目だ。
夕映えは、かわいらしい子だが、お嬢様育ちで、一人じゃ何もできない子だから、私のところの侍女を貸した。
護衛は、瑠璃蜘蛛にすっぽかされた彼女の護衛の貴族の優男が勤めているようだ。瑠璃蜘蛛のことは良く知っているが、あの優男じゃあ、荷が重いとも思う。そもそも、あの娘は、そんじょそこらの優男に心奪われるような娘じゃないし、むしろ、あんなそぶりで、優男をやりこめてしまいかねない部分もある。
その優男、今は、傷心した者同士夕映えとソコソコうまくいっているようだが、さっさと瑠璃蜘蛛のことは忘れて、夕映えにでも乗り換えたほうが、あの男にとっては幸せじゃあないだろうか。
まあ、それは、夕映えにとってもだが――。
思えば夕映えも、つくづく男の趣味の悪い娘だ。ああいうロクデナシに関わっちゃいけないと、何度いったらわかるのか。
大体、一日目夜の襲撃には、夕映えのところのロクデナシが絡んでいるような気がしている。あの男には、一度召しだされたことがあるが、生意気なだけでくだらない男だから、袖にしてやったものだが、そういえば、あの男は、王族か何かだったときいている。夕映えもよせばいいのに、どうしてあんな男に懸想したものなのだか。多分、襲撃されたのは、あの男の命を狙ってのことだろう。なにせ、今、少しでも継承位をもっているだけで、命を狙われるといわれているのだから、あの男だって、一応は、王家の血が混じっているのだろうし、今では、あんな男の命といえど、千金の価値があろう。
夕映えには、あんなクズに懸想してもどうしようもないと散々伝えたのだが、どうもあの子は、危ない男に惹かれるようで困る。お嬢様育ちで夢見がちなところがあるのは、彼女の魅力の一つだが、地に足がついていなくて、見ているこちらが心配になるのだ。
それに比べて、瑠璃蜘蛛は、なんでも自分でできる子なので、それはそれで安心とはいえる。あの子がいなくなっても、彼女がお役目中に逃亡したと考えるものは少ない。それは、あの子の性格をみな知ってるからで、彼女なら遅れながらでも、神殿に向かってくることが予想できているからだ。夕映えの侍女が、瑠璃蜘蛛と一緒にいるなら、何の心配もないだろう。その点については、夕映えに重々言い含めて、安心させた。
ただ、瑠璃蜘蛛が、あのロクデナシと一緒にいるとしたら、それはそれで心配だ。きっとあの男、足を引っ張るだろうし、何よりも、行く先々でどんな障害が現れるかわからない。神殿までの道程は、確か、七部将の将軍達が制圧しており、彼らは中立を保っていると聞くから、大掛かりな行動はできないだろうけれど、あの男一人殺すのに大掛かりな仕掛けは要らないだろう。
夕映えから聞いたところによると、我々と一緒についてきているあの男の守りをしている男の元には、いつも伝令が駆け込んできているようだが、まだ芳しい情報は何も得られていないようだ。
私としては、夕映えの侍女と瑠璃蜘蛛の無事を、女神様にお祈りするばかりである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます