漠然とした思考

僕は考えている。でも、何を考えているのか僕には説明が出来ない。この現象は子供の遊びとよく似ている。ブロックで何かを作っているけど、結局それがなんだったのか完成しても分からない。ただ、そこには確かに漠然とした何かがあって、明確にそれを観測した訳でもなければ、口頭で述べることも出来ないけど、その見えないし説明が難しい透明な何かを僕は考えている。考え終わった頃にはあわとなって消えるのだけれど。これは、何も考えていないのと何が違うのだろうか。

瞼とスマホが落ちる夜の自室には隣接した妹の部屋とその隣の残り2人の部屋があり、辺りは寝息くらいしか聞こえない…はずだけど、今日は少し耳鳴りが酷くてそれが頭蓋骨と脳の隙間に入り込んでまた僕をくすぐっている。

昼間の疲れが抜けていない、今日は久しぶりに動いたせいで、僕は矮小な筋肉痛に悩まされている。


眠りからあけるとあなたのLINEを見る。それと共に僕は思い出す。今日があなたの誕生日だと言うことを。僕は2時間前にその姿を示していた吹き出しに返信をする。

(おはよう。誕生日おめでとう)

あなたからの返信は更にもう少し遅れて、僕が病院に行く用意をしている時にぽんと現れる。耳鳴りはもう少ししかしないし、あの日、いやに暗かった天井が清潔な病院の天井のように──あの美しい死の匂いが焼き付いた高い天井が僕の目の前に屈んでいるような心持ちになるくらい真っ白なように見えた。

テレビは相変わらずギャーギャーとうるさい。本当は騒ぐ以外にも脳のあるバカのフリをした人間が身振り手振りで人に笑われている。散らかった部屋は僕にダンスを踊らせる。ぎこちないステップを踏ませ手を上にあげさせる。このまま歌を歌ってしまおうか、そうすれば楽になるだろうか。あなたを迎えに行こうか、そうすれば愛は目に映るだろうか。あなたからの電話がなる。そして、僕は家を出る。これは旅立ちと言うほど大袈裟ではないけれど、お出かけというほど軽い意味ではなかった。

空は曇っていて真っ白な天井の続きを演じていた。長袖はまだ暑い。半袖がまだ僕を離したくないみたいだから僕は家に1度戻って半袖を抱くことにするよ。



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