『青き戦士』第3章:放逐されし者達(エグザイルズ)

(1)

私は神のフリなどしていない。

私はずっと……人間のフリをしていたのさ。

マーベル・コミック「スーペリアル・アイアンマン」より


「ここ……どこだよ?」

 目が覚めたのは独房らしき部屋。

 とりあえず、状況を把握。

 外の様子。ほぼ見れない。鉄の扉の下の方には食事の出し入れ口らしきものが有る。

 広さ……。日本で云う4畳半プラストイレ。トイレは和式……。って、待って……水洗じゃない……。

 シャワーなし。床はトイレの周囲以外は畳。腐りかけてる。

 部屋に有るのは、汚ない毛布だけ。

 ボクが着てるのは……「鎧」のインナー。

 灯りは……電球1つ。白熱電球だ。

 そして、湧いて出た疑問。

 ここは、どこで、ヤツらは、いつ、どうやって、この場所を用意または確保した?

 あと、今はいつだ?

「おいっ‼ 誰か居るのかっ⁉」

 返事……無し。

「ところで、ご飯まだ〜っ?」

 やっぱり返事無し。

「ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼」

「せからしかっ‼」

 男の声。日本語。九州訛。

「ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼」

「せからしか、ってうとるじゃろがッ‼」

「ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼ ご飯まだ〜っ? お腹すいた〜っ‼」

 ガチャガチャと云う鍵を開けるにしては、妙に手間取ってるような音がした後、鉄の扉が開いた。

「いい加減にし……」

 十数秒後。ボクは、あっさり絞め落した間抜けな看守を観察していた。

 アジア系。男性。二〇代から三〇代前半。……まぁ、声と、ネイティブの日本語を使ってた以上、予想は付いた。

 軍服らしきモスグリーンの服に帽子。

 武器は拳銃と木製の警棒。

 しかし……ボクたちの世界の平均的な日本人男性より……明らかに体格が劣る。

「まぁ、いいか……。さて、大脱走開始と……」

 独房から外に出ると、天井と床はコンクリ製。妙にジメジメしていて、床と天井には水による染みらしきモノがチラホラ。

 幅1・5mほどの通路の両脇には、いくつもの鉄の扉が有るが……良く見ると塗装の剥げや錆が目立つ。

 そして、出口を探して歩き出し……やがて、通路が頑丈そうな鉄格子で遮られている地点に行き着いた。

 その鉄格子の向こう側には……ボクの世界では見慣れているけど、こっちの世界では作られていないだろうモノが居た。

 鉄格子の向こうの床には8足歩行の地上型ドローンが有り……そのメイン・カメラは、ボクの方を見ていた。

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