瀾(六)

「何のつもり?……えっ?」

「二〇、一九……」

 私は、大声で秒読みをしながら……起爆装置付の爆薬を手に高く持ち……そして佐伯に向けて投げた。

「ま……待ちなさい……それ……まさか……それと……」

「八、七、六……」

 私の背後には「国防戦機」。前には佐伯。その間には爆薬。

 地面が割れ、地下水が吹き出す。

「余剰エネルギー放出。背中・脚背面。出力最大」

 私は思いっ切り横に飛ぶ。

 爆薬が爆発。

 同時に、佐伯が呼び出した大量の地下水が水蒸気に変り……突如として大量の水蒸気が出現した事で生まれた衝撃波が、爆発を打ち消す。

 更に、その衝撃波は勢い余って……。

 轟音を検知した「鎧」の聴覚センサは一時的に外部の音を遮断。

 「鎧」のヘルメットの視覚センサのレンズにヒビが入る。

 地面から大きな振動が伝わる。

 気を失っていたかも知れない。

「ヘルメット脱装」

 「鎧」の制御AIは……まだ生きていた。

 どうやら……私は……地面に座り込んでいるようだ……。

 立ち上がろうとする。

 出来ない。

 しかし、腕は、まだ動く。

 「鎧」のヘルメットを脱ぎ捨てると……。

「とんだ……お嬢さんね……。あなたの目論見通り……あのデクノボーは倒してあげたわ」

 良い報せと悪い報せってヤツだ。

 良い報せは……まだ……私の目と耳は正常らしい。

 悪い報せは……目の前に佐伯が居た。

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