彩血

彩血(あやち)

インク、特に万年筆のインクのこと。

万年筆は鮮やかに彩り美しい血で文字を綴り、血が尽きて掠れ、血を満たされ肚に抱えきれないものを吐き出す。

麗しくも切なく妖しき、命なき血の背徳よ。


・血

 綾血は、万年筆の中を満たし、先から滲むインクを血に喩えた未言です。

 ペン先の窪みに沿って滲むインクは、指先に垂れた血が指紋や爪の輪郭を辿るのにも似て、手入れした紙を染めるインクは、手当てして布に吸い取られた血によく似ているのです。


・誓い、誓約

 誓いとは、血交いに音が通じます。血を交わして成された誓約はとても重い意味を持ちます。

 また万年筆の水性インクは、少し前には公式文書を記すのに相応しいとされていました。

 その誓約を、綾血は担っているのです。


・婚約

 誓約を担うことから、綾血は婚約も象徴します。特に色鮮やかな綾血であれば、婚約を祝う文字や絵を書くのにとても良いと思います。


・届出

 婚姻届、出生届などは、今でも手書きが基本です。それは戸籍として管理される重要性を持つので、綾血はそれらを綴るのに使われれば、人の世の縛りだけでなく、命の誓いとしても成り立たせるかもしれません。


・色インク

 綾血は、どうしても黒インクよりも、様々な色インクをイメージさせます。特に万年筆のインク色は多種多様で、集めるだけでも楽しいものなので、沼にはまると大変なのです。


・罰

 綾血は誓約を象徴するため、それを破った時の罰もその裏表として象徴しています。

 万年筆のインクは、指し染めてしまうと中々綺麗になくなることはなく、それは裁かれて償ってもなお残る罪の意識や偏見に似ています。

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