泡ぐむ

泡ぐむ(うたぐむ)

泡を吐いたり、気泡を生じたりすること。

「ぐむ」は涙ぐむと同じ接尾語で、内側から溢れだすという意味を持つ。

胸の内から、息や歌や想いが泡になって浮かんでいく。


・気泡

 泡ぐむは、水の中に泡が生まれる瞬間を指す未言です。当然、泡、気泡をモチーフとしています。

 また気泡は、ふありと上がって、生まれた場所から離れていくのものです。泡ぐむも、生まれた瞬間から離れていってしまうものに使うのです。


泡沫うたかた

 泡ぐむの読みは、泡沫から来ています。泡沫は、留めようとしてもどうにもならず、消えていってしまうもの。

 泡ぐむものは、思いもよらず生まれて、誰にも左右されずに勝手に消えてしまうのです。


・鯨の恋唄

 泡ぐむは、鯨を化身としています。

 鯨は大気を大きく吸い込んで、海の底まで持ち帰るのです。それは鯨自体が、一つの泡だとも言えます。

 また、鯨は恋人を探すために唄うのです。その唄は、どこに届くかも知れぬまま、遠く遠く、海を渡っていくのです。

 そんな行く宛もないのに、想いが行き着く先を望んで響く唄は、とても切なく愛しいですが、泡ぐむはその鯨の恋唄のように生まれるものなのです。


・歌、詩、唄

 泡ぐむは、「ウタ」と音を共有します。歌う時のふわふわした気持ちは、自分の心から泡ぐんだ想いに包まれているからなのでしょう。


・想い

 想いは人の心に泡ぐむものです。どうしようもなく生じて、自分でも捕らえておけなくて、勝手に浮かんでは消えて、浮き沈みするのが、想いなのです。

 そんなだから、泡ぐむ想いは美しいのですとも。


・祈り

 祈りは、人の命から泡ぐみ、世界へ弾けるもの。その泡が弾けて世界に触れた祈りが、願いを叶えるのかどうか、それはけしてわからないけれど、それでも祈りは泡ぐむのです。


・シャボン玉

 空に泡ぐむのが、シャボン玉です。人が作り出したきらきらした夢の泡は、子どもの期待が泡ぐませるのです。


・境界、結界

 泡とは、液体と気体の境界によって成り立っているものであり、その境界の内側に何かを内包しているものです。

 泡ぐむとは、その境界を生み出す行為でもあるのです。それ故に、泡ぐむという言霊には、境界を作り内部を隔離する、乃ち結界を生み出す力を持つのです。


・人魚姫

 泡ぐむの未言巫女は、人魚姫の姿を取ります。

 人魚姫はその最期に、全身を泡ぐませて、大気に溶けて消えて、永遠になったのです。

 その姿を取る泡ぐむも、消えた瞬間に永遠となる因果を持ちます。


・思い付き

 泡はぱっと浮かんで消えるものです。それは思い付きと一緒。

 泡ぐむは、思い付きのニュアンスも持ってます。


・希望的観測

 泡はそこにあっても、すぐに割れてなくなってしまう儚いもの。見えているのに、消えてなくなるもの。

 それは、あり得そうで、あってほしいのに、けれど実現することはない希望的観測に似ているのです。


・幻想の発生

 泡とは、儚いものであり、儚さとは現実にあり得ない幻想と通じます。つまり泡とはそれ自体が一つの幻想と言えるのです。

 そして泡ぐむとは、泡を生み出すことなので、その言霊には幻想を発生させる神秘が宿るのです。


・生命

 泡とは、動作や息から生まれます。息は当然、生きている証であります。

 そして生とは発生、死とは静止であることから、波は生にして凪は死、動作もまた生命の証です。

 泡ぐむとは、命あるからこそ起こる現象なのです。


・内在

 泡ぐむとは、泡がなにかの内側に生まれることです。それは内在していた力やモノが、なにかの拍子に顕現したもの。

 泡ぐむは、人や生命、自然や世界に内在して普段は見えない神秘を、目に見える形にするのです。

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