誓いを残して貴女は消えた—SAIKAI—

如月李緒

前章 嘘と希望と再会に

プロローグ

第0話 神の遣わした者たち

 全世界の人間がSecretNumber(通称:Sナンバー)によって存在を証明し、体内、基本的には左手首付近にマイクロチップを埋め込むのが当たり前となった現代。


 チップのない人間は無償でチップが埋め込まれ、ナンバーも与えられるが、それによって人権を得るとともに様々な義務や責任を負い、過去の経歴を消すことも偽証することも難しくなってしまったこの時代でも、いやそんな時代だからこそ、現実ではない世界、ゲームや二次元といった世界が人気を博し、中でも実際にその世界にいると錯覚できるタイプのゲームはどの世代にもうけた。


 何度でもやり直せるゲーム、何度でも作り直せるデータ、リアルではできない色々なこと。


 しかし、簡単にデータを消したり作り直したりできてしまうために、悪質なプレイヤーも後を絶たなかった。


 アカウントを凍結しても、ブラックリストに入れても、アカウントを新しく作り直されれば規制はできずイタチごっことなってしまう。


 そんな中、Sナンバー連動型サービスと称して始まったのが『AllWorldOnline』だった。Sナンバーとサードネームを管理している世界管理機構が提供する新サービスで、世界管理機構が初めて娯楽に参入したことで大きく話題となった。


 Sナンバーとサードネーム(という名称で呼ばれ、パスワードの代わりとなる物)の2つが個人情報の開示及び確認をするための登録キーとなっているこの世界だが、個人が知っているのはサードネームと世界管理機構内部のデーターベースからSナンバーを検索するためのSecretShortNumber(通称:SSナンバー)であり、Sナンバー自体は個人の知り得る物ではない。これらを使った管理をし、Sナンバーで情報を管理している"世界管理機構"だからこそ可能な管理方法であった。


 サードネームは名前とは別に与えられている物のため、家族や本人しかサードネームを知ることはない。また、面倒な手続きさえ行えば変更が可能であり、流出の心配が少ないだけでなく、いざという時のセキュリティも万全という御触書きなだけあって、世界管理機構以外の運用が禁止されている。(そもそも運用ができないのだが。)その他の情報管理については国家等に一任されているが、その情報を世界管理機構に送る協定が全世界でなされている。


 昔、その協定を破り、情報を秘匿した国があった。結果、その国は。亡命者は他の国で生きることとなり、その国の跡地は現在世界管理機構管理地となっている。


 その後も数回協定が破られることがあったが、その度にその国は世界地図から姿を消し、世界管理機構管理地となった。そのため、今ではその協定を破る国もいなければ、戦争をする国もない。





 ある人は言った。


「世界管理機構を敵に回してはいけない。あれは神の遣わした者たちだ」と。


 それを否定するものはいなかった。なぜなら、世界地図から消えた国々の中には国があったからだ。

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