池袋エレクトロ・ザ・ワールド

たんたん

第1話

2009年。

池袋。

土曜19:03。

春風がふきぬける、サンシャインの外階段。そこはオレの指定席。

乙女ロードを眺める。

お目当てのグッズをハンティングしておおはしゃぎの腐ガールズ。

穴場の東方ショップでお宝をサーチするオタクボーイズ。


いつもの場所、いつもの風景。

オレは、オレの時間を、はじめる。


取り出すはノートPC、Toshiba製RX1。

ドイツ制オーディオインターフェース、phaseXをPCにセット。

制作済みのアイマスMAD、“とかちファンタジア”のFlashファイルを準備する。


NEC Aterem WM3500にて無線通信開始。

ニコニコ動画のマイアカウントにアクセス。

“とかちファンタジア”をアップロード。


ダンサブルなビートにあわせ亜美真美が踊る動画は、あっという間にニコ厨の注目を集めた。100、200、次々にマイリスが増えていく。


エイフェックスツインばりの低音を再現するため、TR-909の実機をわざわざ使ったかいがあった。


「へ~。クールなMADじゃん」


背後から女の声。

振り向くと、10代後半と思われる少女が立っていた。

肩まで派手に露出したTシャツ。太ももあらわな超ミニデニム。

褐色の肌、大きな瞳、あつい唇。


「お!けっこうイケメンじゃん。よかった~。あたしね、逆ナンはイケメンだけ、って決めてるの」


女は一方的にペラペラとしゃべる。


「あたし、“踊ってみた”やってンだ」


オレのPCに手を伸ばし、URLを勝手に打ち込む。


「これ、あたしの動画」


どこかの公園で、この女が踊っている動画があらわれた。

曲は「チルノのパーフェクト算数教室」。

胸がユサユサと揺れ、くびれた腰はリズムに合わせてセクシーに回転する。


「あたし、キョウコ。君は?」

「ジュン」

「何歳?あたしは16だけど?」

「17」

「そ。よかったらフレンド申請しといて」


そう言い残し、キョウコとかいう女は風のように去っていった。

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