第33話

《雪華side》

 お姉ちゃんがここ最近遅くまで、勉強をしている。

 高校受験があと少しで始まるから、追い込みの時期なんだって言ってた。



 わたしは部活の練習に少しずつ参加するようになり、三年生になった春には試合に出られるようになりたい。

「ケガをして、雪華が作戦を立ててくれた試合の結果、めちゃくちゃ勝率が高いね」

と、同級生によく言われる。

 ただ作戦を考えるのが、昔から好きなだけだったのに……なんか不思議な気分だ。

 かなり観察眼が鋭いから、アドバイスを始めたらめちゃくちゃ強くなっている。

「雪華はどこに志望校、行くの?」

 進学塾で同じクラスの子にそう聞かれた。

「え~。バスケが強くて……めちゃくちゃ近い場所?」

「お姉ちゃんの志望校、めちゃくちゃバスケは強いらしいよ?」

 都立神村北高校――お姉ちゃんが第一志望にしている高校で、母さんの母校でもある。

 わたしも同じ高校を目指そうかな?

 でも、強豪の私立高校からもスカウトが来そう。

 そんなことは考えたくなかった。



 塾からの帰り道。

「雪華~。お疲れさん」

「え? 悠里ゆうりくん!?」

 悠里くんとばったりと会った。

 幼なじみでお姉ちゃんと同い年、いまはお姉ちゃんのクラスメイトだ。

 わたしの片想いの相手だった。

 でも、引退試合のあとに悠里くんに告白したんだけど……あっけなくフラれたんだよね。

 たぶん、悠里くんはお姉ちゃんが好きなんだと思うんだ。

「悠里くん。高校は決めたの?」

「都立高は難易度を落としていく。それで、学年トップを狙ってるよ? 桜木学院は今度の連休でやることになるけど」

「お姉ちゃんとはどうなの? 好きなんでしょ?」

 いきなり話しちゃったけど、悠里くんは真っ赤な顔をして口をモゴモゴしている。

「おい……それは、小夜には言わないでくれよ? 卒業式に告白しようって思ってんだよ!」

「りょーかい! 卒業式まで、お姉ちゃんには黙っとくね」

 そして、悠里くんとは別れて、帰ることにした。

 家に帰ると、母さんとお姉ちゃんが勉強をしていた。

「お姉ちゃん、母さん。ただいま」

「おかえりなさい。雪華、さっきまで永莉えりちゃんが勉強を教えに来てたの」

 いとこの永莉ちゃんは家庭教師として、お姉ちゃんの勉強を二学期から教えているんだ。

 お風呂に入ってから、もう遅いので寝ることにした。

「おやすみなさい!」

「おやすみ~。雪華」

 来月十日に十四歳の誕生日を迎える。

 雪華という名前は同じ漢字を使い、雪華せっかという雪の言葉を由来にしているから、雪の降る日に生まれたの。

 今年はその日はお姉ちゃんの私立受験の日だ。

 ――がんばれ、お姉ちゃん。

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