第82話 幻妖現る
「あー疲れた……」
荷物を放り出してベッドに座り込む圭人。
「遅かったな」
隣に座るガスカルドがエロ本を見ながら尋ねる。
「あーちょっと帰るなりひと悶着があってな……」
圭人がそこまで言って……動きが止まる。
「そいつは大変だったな……」
エロ本から一切目を離さずに答えるガスカルド。
先ほど迷宮で出会ったタルキンのガスガルドがベッドの上で待っていたのだ。
白いポンチョを着たガスカルドの姿を指さして凍り付く圭人。
(な……なんでこいつが居る?)
唖然とする圭人。だが、ガスカルドは気にせずにエロ本を読み続ける。
「しかし、巨乳が好きだな。おじさんとしては巨乳にこだわり過ぎるのはよくないと思うぞ。貧乳には貧乳の良さがあるのだからな」
そう言ってガスカルドがページをめくる。
「だが、色で差別しないのは評価できる。人間は肌の色で差別するやつが多いからな。肌の色よりも体の相性が重要だからな。乳とか尻とか足とかそれが太いだの細いだの大きいだの小さいだのは些細なことだ。そういう差別はいけないぞ」
「まあ、言わんとすることはわからんでもないが……」
言われてようやく冷静になる圭人だが、とりあえず聞くべきことを聞こうと口を開く。
「なんで俺の部屋にいるんだ? 」
「うん? まあ、心配になってな。一応大事にはなってなかったみたいだな」
「……ありがとう」
答えになってないと知りつつ圭人は落ち着いて考える。
(落ち着け……千載一遇のチャンスだ……)
どうやってコンタクトを取ろうか悩んでいた相手が目の前にいるのだ。
今を逃したら迷宮に入る手立てを失う。
「なあ、来たついでに頼みがあるんだけどいいか? 」
「いいぞ。聞くだけ聞こう」
「お前が居たら迷宮には入れるのか? 」
「うーむ……ちょっとなんとも言えないな」
エロ本のページをめくるガスカルド。
「ところによると言ったところか。場所によってはわしでは何にもできんところもあるから一概に言えん」
「……例えば今日行った迷宮は?」
「それぐらいなら可能だ」
とりあえず入る道を確保できそうなのでぐっと拳を握る圭人。
「じゃあ、道案内とか「コンコン」はーい! ちょっと待って! ちょお! 隠れてくれ!」
突然のノックに圭人は慌ててガスカルドを隠そうとする。
「ちょっと待て変身するから」
「頼む!」
ぽんっという煙が出たのを確認して戸を開く。開くとチチリさんが居た。
「もうすぐご飯だから下に……」
いつものニコニコ笑顔のままチチリが凍り付く。
「どうしたんですか?」
「ああ……うん……ごめんね……そのーなんか話し声が聞こえたけどだれかいるの?」
「いえ? 居ないっすよ」
「あーそうなんだ……とにかくご飯だから……」
気まずそうな顔で戸を閉めるチチリ。
「ふーあぶなかっ……」
圭人はくるりと振り返って凍り付いた!
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