241 ラクトと長老の会話

 「いま、ルフ帰ってきましたよね!」


 ステラが長老の家から出てきた。いくつかの返書と思われる書簡を持っている。


 「うむ」

 「この、居間に置いてたのを送ればいいですか?」

 「そうじゃ、よろしく頼む」

 「分かりました。ちょっと行ってきま~す!」


 書簡を持って、ステラは走り去っていった。


 「というか、なにしとるんじゃ?」


 ステラを見届けた後、長老がラクトに言った。


 「あぁ、ちょっと、マナトの家でも寄ろうかなと」

 「おっ、そうじゃったか。ちょうどよかった」

 「えっ?」

 「いま、ルフが帰ってきたことで、各国や各村からの書簡が送られてきておるじゃろう」

 「認知革命の、賜物ってヤツかい」

 「んっ!?」


 長老がビックリして、ラクトを見た。


 「お主、いま、なんと?」

 「いや、別に、なんでも」

 「……まあ、ええわい。ちょっとマナトに見てもらいたいものもあってな。後でわしの家に来るように、言っておいてくれぬか?」

 「おう、任しとけ」

 「悪いのう」


 長老はラクトに礼を言うと、今度は、先っぽに綿のついた棒を持って、ラハムの葉っぱを優しくポンポンと叩き始めた。


 「長老、それ、なにしてんだ?」

 「ここは砂漠が近めじゃからの。砂漠からの風で、細かい砂が葉っぱに付着してしまっておるから、ポンポンで砂を取っておるのじゃ」

 「へぇ。意外と面倒だな」

 「ほっほ!それがまた楽しいんじゃが’のぉ」

 「ちなみに長老さ、メロ共和国の交易って、行くことになりそうかい?」


 ラクトは気になって、長老に聞いた。


 交易会議などで皆に意見を求めたりもするが、基本的に、どの国や村に交易へと向かうか、それを決めているのは長老だった。


 「ん~。どうじゃろうなぁ」


 長老はポンポンしたまま、少し考え込んでいた。


 ――ファサ、ファサ。


 葉っぱが綿に当たる度に上下に揺れる。


 「正直、まだ決めかねておってなぁ」

 「あっ、そう」

 「実は、メロの国に、セラとジェラードを行かせておってなぁ」

 「へぇ!」

 「いま、帰ってきたルフに、2人の書簡も入っておるじゃろう」

 「そんなこと、してるのか、いま」


 交易する際、キャラバンが行く前にルフを飛ばし、事前に国や村とやり取ることで、実際にその国や村に赴いた際、交易品が違うなどのトラブルが極めて少なくなったらしい。ちなみにこれもマナトから聞いた話だ。


 しかし、交易前に人が国に行って、その国の情勢を調べるというのは、聞いたことがないとラクトは思った。


 「……長老、それって、メロの国だからやってることか?」

 「ん~、まあの」

 「メロの国内の、なにかを調べているのか?」

 「おっ!?」


 すると長老はポンポンをやめて、ラクトをじ~っっと見つめた。


 「ど、どうした?長老」

 「お、お主、頭よくなったのぉ……!」

 「なんじゃそりゃ!」

 「ほっほ!わしは嬉しいぞ」

 「よけいなお世話だ!」

 「メロに行きたいのか?」

 「い、いや、別に……そろそろ行くわ」

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