182 長老の家にて③/村を発つ

 「おう、動物飼ってるのか、マナト」


 長老とマナトの会話を聞いていたムハドが、マナトへ聞いた。


 「はい。交易からの戻りの時に、スナネコの子供を拾ったんです」

 「へぇ。あっ、そういえば、一緒に飲んだとき、そんなこと言ってたな」

 「交易が長期になりそうな時は、ステラさんに世話をお願いしてまして」

 「そっか。交易のためにか~。……いいなぁ、俺も交易に行きてえな~」


 ムハドが羨ましそうに、つぶやいた。


 「大丈夫じゃ、ムハド。お主の代わりに、お主の隊の副隊長達が、奮闘してくれておる、ほっほ!」


 長老が、高笑いした。


 「さっさと書庫に戻って、作業の続きをやらんか!それが終わったら考えてやらんでもない」

 「えぇ~!!いつ終わるんだよそれ!」


 ……なんだかんだで、仲良いってヤツだな。


 ムハドと長老のやり取りを見ながら、マナトはしみじみ思った。


     ※     ※     ※


 翌早朝。


 日の光がまだ弱く、明るい星が、かろうじてチラホラと見える中、キャラバンの村の、砂漠へと続く道の手前あたりには、複数の商隊の姿があった。


 「おう、おはよう。お前らも、今日が出発か」

 「ああ」

 「どの村に行くんだ?」

 「俺たちは……」


 男子キャラバン達が話し合いながら、木製の台車でゴロゴロと荷物を運んでいる。


 「……ふぁ~」


 女子キャラバンの一人が、あくびをしながら、ラクダ達に荷を取り付けている。


 皆それぞれ、交易に向け、準備をはじめていた。


 そして、その中に、ケント商隊もいて、ミトとラクト、マナトが、それぞれ連れてきたラクダに荷を取り付けていた。


 といっても、今回は運搬依頼のため、自分達の必要荷物以外は、積んでいるものはなかった。


 「う~ん!」


 ラクトが背伸びした。


 「よぉ~し!行くぜ!まずは鉱山の村だな!」


 ラクトが砂漠の遥か向こうを、手をかざして眺めながら、テンション高めに言った。


 ……ラクトって、ホント、朝から元気だなぁ。


 「……」


 対して、ミトは黙々と準備していた。ちょっと、ぼ~っとしている。


 「おっす、ケント」


 別の商隊の隊長が、ケントに声をかけてきた。


 「おう」

 「今回は、どの村に行くんだ?」

 「鉱山の村と、岩石の村の運搬依頼だな」

 「あぁ。通常の依頼も解禁されたんだな」

 「みたいだな」


 2人が話していると、別の商隊の一人が、出発準備が整った旨、隊長に報告しに来た。


 「んじゃ、お先に!」

 「おう!」


 ケントと話していた隊長は、自分の隊に戻り、号令をかけた。そして、キャラバンの村を出発し、どんどん砂漠を進んでゆく。


 「私たちも行きましょう!」

 「よし、出発だ!」


 また、続々と、別のキャラバン達も、交易に打って出ていった。


 「俺たちも、行くぞ!」

 「はい!」


 砂漠へ、果てしない砂の世界へと、ケント商隊も、足を踏み入れた。

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