77 ジンの情報/帰還のルート

 「ジンに遭遇したんですか?」

 「いえ」


 マナトが問うと、フィオナが答えた。


 「私たちは基地内にいただけよ。でも、最前線にいる部隊は、ジンと交戦があったわ」

 「!」


 ジンと交戦……周りのメンバーに緊張が走る。マナトとミトとラクトにとっては、なおさらだった。


 他の宿屋を利用している客達も、フィオナの言葉を聞くと、マナト達の近くに寄ってきて、フィオナの次の言葉を待っていた。


 「そ、それで、護衛のみんなは!?」

 やや興奮した様子で、ミトが問いかけた。


 「被害状況は、詳しくは分からないわ。多数の負傷者が出てるってことくらい……でも、幸い、死者はいないみたい。それに、王宮護衛の黒い2人が善戦して、ジンを後退させたそうよ」

 「おぉ!」


 周りの者達からも、おぉ〜という声が漏れていた。


 「最前線からの伝者のヤツが、えらく興奮気味に、そのこと語ってたからな」

 ケントが言った。


 「ええ、実際に戦いを見ていたんだもの。そりゃ興奮すると思うわ。普段は王宮の門の前で、ぼ〜っと立っているだけだけど、実力は相当だったようね」

 「あの衛兵達だ……」


 ……あの無口な2人、そんなに強かったのか。


 「まぁ、こっちだって、ちゃんと準備して今回の討伐にあたってるからな。医療隊もいるし、対策はちゃんと出来てるんだろう」

 「結局、ジンは、はるか南方に向かって消えて行ったそうよ」

 「とりあえず、難は去ったと考えていいだろう」


 ケントとフィオナが言うと、喜びと安堵の声が、周りから聞こえてきた。お互い手を叩いている者達もいる。


 そんな中、何ともいえない、神妙な気持ちでマナトは聞いていた。


 すると、ラクトが手をあげた。


 「ジンは、どんな姿をしていたんすか?」

 「その伝者の情報によると、ジンの身体は人の2倍ほどあったらしいわ。その割に細くて、長い手足に、浅黒い肌で、赤紫色に輝く目だったそうよ」

 「へぇ……」


 ラクトはミトとマナトと視線を交わした。


 ……ジン=マリードしか比較対象はないが、とりあえず全然違う。


 「護衛団は今日から数日、念のために、ジンが消え去っていった方角の少し手前のほうで駐屯することにしたそうだ」


 ケントは周りを見渡した。


 「護衛のみんなが外で厳戒態勢を敷いている今のうちに移動するしかないと、俺は思う」


 皆、うなずいた。異論はない。


 「よし。んで、帰還のルートなんだが……最短のキャラバンルートはジンが去った方角に少し近い上に、今なお盗賊が横行してるらしい。やはり帰りも、西のサライを経由した迂回ルートで帰還を目指す」

 「私達も、西のサライまでは共行するわよ。そこまで行けば、私達の国まですぐだからね。最初はここから直で戻るつもりだったけど、この状況じゃね。安全第一で行きましょう」

 「はい」

 「了解です」

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