73 告白

 「……そうですか。そうですよね」


 ルナも、どこまでかは分からないが、察している様子だった。


 「話すことによって、危険があるかもしれないんです。なので、今は、それだけしか……」

 「分かりました。大丈夫ですよ」

 「すみません。……えっ、ちなみに、他のメンバーも、そんな感じで疑ってたりしてるんですかね?」

 「あっ、いや……」


 マナトの問いに、ルナは手を左右に振った。


 「私は、ちょっと、気になりましたけど、他のメンバーは、たぶん、大丈夫だと思います」

 「そうですか。……あぁ、よかった」

 「まあ、でも……」


 ルナはマナトを横目で見つつ、ちょっとなじるような感じで言った。


 「正直、ジンの出現で、それどころじゃなくなったから、あまり気にかけてない感じになってるんだと思います。この状況じゃなかったら、もしかしたら、問い詰められてたかもしれないですよ」

 「……やっぱり、そう思います?」

 「はい」

 「……あはは」

 「ウフフ」


 2人は、小さい声で笑い合った。


 和やかな、夕方の淡い空気感が、マナトの個室にも満ちていた。


 ……あぁ、贅沢な時間だなぁ。


 完全に、日本での、精神をすり減らしていた日々の反動でしかないが、マナトはこういう、何事もなく時間がただ過ぎていくことに、無常の喜びを感じていた。


 平和な、この世の春のような時間を満喫するというのは、やはり、人間に与えられた特権であるとも、マナトは最近、思うようになった。


 それに、ほんの少し、過去を乗り越えることが出来た気がした。


 勇気。少しだけついた気がする。


 「あの、その……」


 少し沈黙が続いてしまっていたせいか、ルナは、何か、次の言葉を、次の話題を探しているような、そんな感じでモジモジしている様子だった。


 マナトは、ありのまま、思いあまる心のままに、ルナを見つめながら、言った。


 「ホント、幸せなんです、こういうの」

 「えっ……」

 「ホント、今のこの時間が、ずっと、続けばいいのになぁって、思っちゃいますよね」

 「……」


 ルナの顔が、みるみる、外の空のように真っ赤になっていった。


 「あ、あの……その……」


 明らかに、動揺している。


 「私も……あの、そう……というか……私、えっと……」

 「ど、どうしました?」

 「ちょ、ちょっと!トイレに!」


 ――カチャッ!


 ルナはちょっと顔を隠しがちに立ち上がって、足早にマナトの個室を出ていった。


 「……あぁ!」


 マナトは事態を把握した。


 ……もしかして、ちょっとした告白みたいな状態になってた!?


 ルナが出ていってすぐ、わあわあと、ミトとラクトとウテナの声が外から聞こえてきた。

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