第22話 母の墓

 俺達は竜王の巣を出て、エルテンへと向かった。

 到着するまで結構時間がかかった。意外と遠かった。


 エルテンは特にこれといった特徴のない平凡な町だ。

 元々、バラシアとお母さんはこの辺に住んでいたらしい。


 殺されたのもこの町付近だからあまり良いイメージがないらしく。かなりバラシアは不機嫌そうである。


 母の墓はこの町の近くにある、森の奥深くに作ったらしい。


 墓まで辿りつく、その墓を見て俺は、


「結構綺麗じゃないか」


 と呟いた。墓が結構手入れされている感じだったので、少し予想と違ったためそう言った。もっと荒れている感じだと思っていた。


「定期的にここに来て、掃除をしています。ちょうど15日ほど前に掃除を行いましたので、汚れてはおりませんよ」


「へー」


 定期的に竜王の巣の外に出ていたのか。


「それじゃあ、墓を掘ってみるか」


「掘るのは全て私がやります! あなた達はそこで見ていてください!」


 バラシアは、怒りながらそう言ってきた。

 そして、慎重に墓を掘る作業を始める。


「相変らずツンケンしてんな」


「仕方あるまい。彼女は人間を心から信用できないのだろう」


 クズがやらかしただけなのになー。まあでも、大事な人が殺されたらそうなるんかね。

 大昔の俺ならその心情も理解できたかもしれない。でも、今は残念ながら理解できないな。


「ねーねー。ペレスさん。ちょっと聞きたかったんだけどさー」


 アイシャが尋ねてきた。


「なんだ?」


「死者蘇生の力を使えるんだよね。だったらアタシが死んでも生き返らせてくれるのよね?」


「何故だ」


「な、何故って! そりゃあ一緒にいるから生き返らせてくれてもいいじゃないの!」


「お前らな。死ねるときに死んでおいたほうがいいぞ? あとで不老不死の呪いにでもかかったらどうするんだ」


「そんなこと頻繁にあるか!!」


「ま、生き返らせるか返らせないかは、その時の気分しだいだな。俺が死者蘇生してもいいなーと思っている時期に死ねば、生き返れるぞ」


「どんな時期よそれ!」


「少なくとも今は違うし、お前らとあってからはそういった気分になったことはないな」


「めっちゃ低確率なんじゃないのそれ!」


 低確率っていうかそんな日があるかどうか分からんがな。


 その後、しばらくバラシアが墓を掘り続けるのを眺めている。

 結構時間がかかるようで、だいぶ待った。


 すると、


「……ありません」


 バラシアがいきなりそう呟いた。


「母の亡骸がありません。骨や鱗は残っているはずなのに、どこにも見当たりません」


「やっぱり生きてたんだ」


「ドラゴンの骨や鱗は高く売れます! 誰かが掘り起こして売ったのです!」


「またまたそうネガティブに考える。俺の術が発動しなかったから、生きているのは間違いない」


 俺がそう言ったあと、バラシアは少し考え込んで、


「……エルテンには父が住んでいるはずです」


 そう呟いた。


「父って人間のか?」


「ええ。母がどこに惹かれたのか分からないくらい普通の人ですよ。人間の寿命だともうだいぶいっているでしょうが、まだ生きていると思います」


「そうか、じゃあお前の父に会いに行こう」


 俺達は再びエルテンにいき、バラシアの父親に会いに行った。


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