第19話 死者蘇生
「生き返らせることが出来る……ですと?」
バラシアは眉をひそめながらそう言った。
出来るわけがない。そう言いたげな表情だ。
「えーと……ペレス殿、さすがのさすがに冗談だよな」
「本気だぞ。生き返らせることは可能だ」
「マ、マジなの?」
「う、嘘だー」
アイシャ、レミ、ミナの3人は驚いている。
「お主、死人を生き返らせる事が出来るのか? なんでもありじゃな」
いつのまにか近くに来ていたメオンがそう言った。
「しかし、なぜ死を望む奴が死者蘇生の術を使えるのじゃ?」
「別に若気の至りだ。9000年ぐらい前には生き返らせたい誰かがいたんだ。もう顔も名前も思い出せないけどな」
「ほう」
「ところでお前、さっきまで壁の辺りでなんかやってたけど、あれなんだ?」
「珍しいものを見つけたのじゃ」
「なんだ?」
「教えぬ」
つれないやつだな。別にそこまで興味があるわけではないからいいけど。
「……それで、あなたは本気で言っているのですか? 生き返らせる方法はあると。賢者である私がどれだけ研究しても見つからなかったのに」
「お前が研究した時間と言ったって、せいぜい十年、二十年だろ。俺は500年は研究した」
「では、どうすれば死者蘇生が出来るというのです?」
「お前の母親が死んだのはいつだ。時間が経ちすぎると復活は不可能になる」
「20年前です」
「なら全然大丈夫だ。生物は死んだら200年ほど経って、次の生物へと転生する。そのあいだ、天界で保管されることになっているが、その期間なら蘇生が可能だ」
「ペレスさん、さっき500年研究してって言ってたわよね。それって……」
「ああ。死者蘇生の術の開発に成功したとき、俺の生き返らせたい人が生き返る事は、もう既に不可能な状態になってたな。あの時は結構絶望してたような気がする」
「なんか、ごめんなさい。辛い事、思い出させて」
別に今はその事についてなんとも思っていないがな。
「生き返らせるには必要なものが2つある。生き返らせたい者の死体の一部、もしくは血縁関係にある者の体の一部。これは用意可能だろう。お前の髪の毛とか爪とかをもらえればそれで十分。それから莫大な生命エネルギーが必要となる。ドラゴン1体を生き返らせえるのには、人間約100万人を生贄にする必要がある」
「なんかさらっと凄いこと言ったぞ!」
「……100万人、人間を殺してこいと? 構いませんが、かなり時間を要することになりますよ?」
「あー、早とちりするな。不老不死の俺がいれば100万人分の生命エネルギーを1人で補える。つまりお前が爪もしくは髪の毛を提供してくれたら、すぐにでも蘇生できるぞ」
「……分かりました。ではやってみてください」
バラシハは髪を1本千切り俺に渡した。
「あ、そうだった。お前の母親が魂ごと殺されたとかなら蘇生できないけど、大丈夫か?」
「魂ごと? いえ、そのようなことはないです」
「じゃあ、やれるな。さっそくやろう。あー、素手でやるのは時間がかかるな。メオン、お前の杖を貸してくれ」
「これは祖母から預かりし大事なものじゃ。気軽に他人に渡してよいものではない」
「別にいいだろ、ちょっと借りるくらい」
「駄目じゃ」
けちな奴だな。
「あ、私の杖、貸してもいいよ」
ミナがそう言ってきた。こいつも魔法使いだし杖を持っていたな。でも……
「お前の杖は品質が悪そうだから、いらない」
ミナの持つ杖は、簡素なつくりの木の杖だ。この程度の杖では逆に持ったほうが、効率が悪くなってしまう。
「ひ、ひどい! 誕生日にお母さんに買ってもらった大事な杖なのに!」
ミナはだいぶショックを受けたようだ。てか、メオンもミナも人に貰った杖使っているのか。こういうのは色々買って試してみて、自分で合う物を見つけるものなんだがな。
「とにかくメオン貸せ」
「駄目じゃといったじゃろう」
「早くしてくれませんかね。杖は私のを貸しますから」
バラシアがイライラしながら、そう提案して来た。
「なんだ貸してくれるのか? 人間に触られるのは非常に不愉快ですとか、言ってきそうだと思っていたんだがな」
「不愉快ではありますが、そこまで神経質ではありません」
「そうか、なら借りる」
俺はバラシアの杖を借りた。
髪を床に置いて、死者蘇生の魔法を発動する。
俺を中心に光の円が出来る。半径3mくらいの大きさだ。
「この円の中に入るなよ。生贄になるからな」
「ぬお!」
円の中にいたメオンが驚きながら瞬時に外に出る。
そして数秒後、俺の体から生命エネルギーが吸収されていくはずなのだが、
「あれ? 出来ないな」
吸収されていかない。どういうことだ?
もう一度やってみる。
しかし、うまくいかなかった。
「うーん……?」
「どうしたのですか? やはり、死者蘇生が出来るなどと言うのは、口からでまかせだったのですか?」
「いや、やっぱり間違ってないよな。これで出来るはずだから……うーん……となると、一つしか理由は考えられないな」
俺は考えて1つの結論に達した。
「お前の母親は、最初から死んでいない。今もこの世のどこかで生きている」
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