第九詩 水槽

ガラス越しに綺麗に生きてる君を見るのが好きだ。

笑顔で、いつも楽しそうで、優雅に泳ぎ回っているかのような君を見るのが好きだ。


でもこの声は伝わらない。水のせい?

そしてこの手は重ねられない。ガラスのせい?

ううん、違う。

それは私が私であるから。君がこちらを見つけられないから。


生きるのに必要な温度には遥かに冷たくて

生きるのに必要な酸素はとうに枯れていて


君には私がどう見えてるのかな。

ガラスの向こうに私がいることに気づいてくれるのかな。


酸素のない水槽でヒレを動かすには厳しくて

それでもどうにかヒレを動かして

やっと、やっと見てくれた。


そんな時にはもう水槽の中で浮いていた。そんな私は熱帯魚。


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