ルー・ルー・ルー氏の依頼


何てことかしら…… 今日は楽チンな包帯巻きの後は本を読んでいい日なのに!


ルー・ルー・ルー様はなぜこんな戯(ざ)れた事を子供の冒険者に任せたのか分からないし、私が来るまでもないでしょうに……

私はルー様の診療所で働く看護師ナースゲール。


昨夜、急にルー様に呼び出され冒険者とポーションの素材を取りに行けと業務命令を受けた。


「シャティ、足元が少し滑る。気をつけなさいて」

「はい! ありがとうございますダンデスさん! 」

…… チッ! なんで知識をたまの得て良い日おやすみのひにカップルと一緒に行動をしなきゃならないのよ……


「あ、先々と行かないでくださいね? 」

私の責任問題になるので……


「…… 分かりました」

男の子の冒険者がクルッと振り返って笑う

「っっっ! 」

…… 可愛すぎて鼻血出そう……

なんて美しい男子なのよ…… この同行している冒険者の女の子が羨ましい。



「次は…… あっちですね」

男の子がまるで知っているかのように先頭を歩く…… 今日、行く場所は一応は秘境のハズ…… もしかしてルー様に聞いたのかな?

まあ、楽でいいけども。



「——— ねえ? あなた達って恋人か何か? 」

「ダ…… ダンデスさん! 恋人とか言われてますよ! 」

どうとでも言わせておけという風にチラッとこちらを見て美少年のダンデスはそのまま先に歩いて行く。

私より背丈も小さいのに冷静ね……



しかし本当になんで道筋を知っているのかしら?

————————今、私達がいる所は植物のダンジョン。


王侯貴族の方々が使用される医薬品は魔力が溜まりやすいこのダンジョンで素材が採取される。


一般の人間に荒らされないように入り口にはダンジョンへの入場を規制する為に衛兵が昼夜問わずに締め切っている。


入れないはず

ダンジョンの経路はに漏れていないはず

私は彼への興味が一滴一滴と私の心に貯まるのを感じる。



「ふわああぁー……! 本当に森の中みたいですねぇ…… 」

「ああ、 遺跡の中から大森林を見上げるような錯覚があるな。光合成もせずにどうやって植物が成長しているんだ? 」


ダンデスの言葉に違和感を覚える。

「———— 光合成とは何? 」

つい疑問を口にするとダンデスは植物が成長するのに必要な事をつらつらと歩きながら話す。


その内容は実に理論的で腑に落ちる部分が多く座りながらしっかりと聞くべき内容だった。


一つの事を説明する時には、知っておかなければならない知識は枝葉のように分かれ増える。

料理に例えると、シチューを作る手順は分かるけどなぜ・・芋の皮を剥くのか、土がまだついた皮を料理に入れたらどうなるのか、臭い肉を入れてしまうとどうなるか…… という細かな知識を私達は無意識に会得している


ダンデスは…… この美少年は植物の知識に付随する色々・・を知りすぎているように感じるわ。


光合成、日照時間、二酸化炭素…… なんて面白い話なの…


私は今日、もう一つ仕事を言われている。


それは…… ルー様の仕事へをする職員の勧誘だ。

所詮は野蛮な冒険者なのにと今朝まで憂鬱だった私を叱りたいわ。


ダンデスは歩きながら、理科という学問を内容を詰まる事もなく話す。

「すごいですね…… 酸素の仕組み…… 今まで見てきた現象を思い浮かべるとストンと納得できます」

「すごいってもな…… 小学生の学問だぜ」

「しょうがくせい…… とは……? 」


ダンデスは質問こ答えが欲しい私を避け、またダンジョンを歩き出した。


「…… 大分と苔(コケ)が多くなってきたな…… こっちで本当に大丈夫なのか? キーサーチ」

ダンデスは独り言を言いながら薬草が生える場所へと迷わずに進む。


地図を見ていつも潜る私より断然早い。


このダンジョンはもしも・・・の時の為に素材を安定に迅速に集められるように朝昼晩と魔物を国王軍の兵士が間引いてくれている。


もし魔物が再出現リポップしても生まれたばかりのダンジョンの魔物は弱く私の魔法でも対処できる。


つまり人数的な利点は関係なく、攻略スピードがとにかく早い…… なんでなのよ?


「!? ちょい待ってくれ、これは何だ? 」

ダンデスが壁にある大扉を睨む。


「あぁ、それね…… それは下の層に行く階段があると言われている扉なの…… 何千年も前に古代エンシェントエルフが閉じた…… という伝説があるわ」

ダンデスは幼子の親指程の大きさがある扉の鍵穴を中腰の姿勢で覗き込む


「おそらく…… 先にあるモノ・・をエンシェントエルフは隠したかったか、または独り占めしてそのまま扉を作ったエルフが滅びたか…… と言われているわ」

「…… これは開けても? 」

「できるものならやってみなさい。今まで誰も解錠に成功していないのよ? 無理だわ」


やっぱり冒険者は冒険者ね。

過去の知恵や私の忠告を聞かずに背負いカバンから針金やら何やら…… 見た事がないから自作道具かしら? それらを取り出して鍵穴を弄(いじ)りだした


「ダンデスさん、どーですかー? 」

「シャティ、ごめん静かに…… 」

ダンデスは耳から伸びた管…… 角ウサギの魔物の腸かしら? その伸びた先に取り付けてある小皿を扉の鍵穴の近くに押し当ててガチャガチャと無駄な事をしている。


「ほら、そろそろ行きましょう時間は有限です」

やっぱり、ダンデスと少女の勧誘はナシね……


「あ…… 」

「ん? どうしたのダンデス? 」

「開きまー…… したっと、開きました」

大扉は中央の両開き部分を薄く奥へ開いている……


「ありゃーダンデスさん、やるー! 」

「まあな、開かない鍵はあけてみたいっていうのはもはや職業病みたいなとんさね」

「ちょちょちょ! ちょっと待って! なんで開けられてるの!? 」


私の質問への答えは「意外と簡単だった」 だった。

何よ! 意外って! 扉を開こうとしてきた数百年の歴史を何だと思ってるのよ!



あ! 談笑しながら2人だけで入らないで!

ねぇ! 待って! 待ってよ!


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


ゲールさんが巨乳を揺らしながら急いで扉の中へついてきた。

今の俺より背が高いので俺の目線は丁度いい具合に巨乳を見れる位置にあり心の中で合掌をする。



————————ありがとうゲールさん。

————————走るゲールさん(の巨乳)ありがとう。



……いや、しかしやっぱり〈キーサーチ〉は優秀だわ。


信頼を得たいから高価な薬草を指定して検索していたら大きな扉の向こうを指し示していた。


鍵の解錠も簡単で、キーサーチはどの工具をどの角度で差し込むとかエスコートをしてくれた。


「おお…… 」

入り込んだ部屋で俺たちは息を飲む。

「すごい…… ですねダンデスさん…… 」

「ああ、これは…… 仕事のしがいがあるな」



扉の中の部屋は円形で壁際には水が流れる水路があり、天井はよく分からん技術で光っている。


そして……

「ダンデスさん! 取り放題ですね! 」

「ああ! 」


部屋の中は色取り取りの薬草やら花で埋め尽くされていたのだ。

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