209.アキラ、ボチュる。


 その聞きなれない声に、驚く。いったい、誰の声なんだと、辺りを見渡す。




「ウミャウミャウミャ。」




聞いている限り、敵意はなさそうだ。となると、もしかして、この声は・・・。




その予想のハチを見つめる。




「ハチ! ほら、もっとお食べ。」




と試しに肉を追加してみると、




「ボチュ!アリャガチ!ウミャウミャウミャ。」




そう反応する。やっぱり、声の主はハチのようだ。




ついに、我が友、ハチとの会話に成功する。古来より、人と深い繋がりがあったイヌ属。




ウサギちゃんと話せたのだから、いつかは話せると思っていたが、まさかついに、その時が来るとは、感慨深い。




でも、なんというか、想像していたハチ像より、愛嬌がある。可愛いな、ハチ! 




次いで、精霊さんが、




「宿主、これよりオオカミの思考をラーニングします。」




と言う。




これにより、もっとコミュニケーションが行えるようになったら、いろいろと楽になりそうだ。それにしても、ハチにボチュと呼ばれている事実に、少し笑いそうになる。




「ボチュか・・・。」




そう呟くと、その声が聞こえていた様で、皆が、残念な人を見る目で見てくる。




「ボチュ・・・お食べっ!」




そう言って、イリスが焼けた肉をくれる。おまぁ・・・と思いながらも、それに齧りつくのであった。




 そして、食後。ハチと片言ではあるが、戯れる。




「おお、ハチ、お腹いっぱいになったか・・・おお、ヨシヨシ。」




と腹をナデナデしてあげると、




「ボチュ、キミティアキミティア。」




そう言って、デローンとなる。やっぱり、ボチュは固定なのね、と思いながら可愛がる。




そうしていると、片づけを終えたまゆきが、近づいてくる。




「ハチ、可愛いですね。」




そう言って、ハチを撫でる。すると、ハチから衝撃の一言が飛び出る。




「マユキ、キミティ・・・。」




えっ!? 今、なんて!! 




それを確かめるように、もう一度腹を撫でる。




「ボチュ、キミティ。」




まゆきがつられて、もう一度撫でると、




「マユキ、キミティ。」




なんで、一番付き合い長いのに、俺の名前はボチュなのと、疑問だけが残る。




ちなみに、ほかの皆の名前も、多少、片言だが覚えていた。しかし、なぜか僕だけは、ボチュ。




この差は一体、なんだろうかと考えるが、まぁ、答えは出ず。多分、ボスと呼ばれているのだろうと、自分を納得させるのであった。

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