107.アキラ、薄味を感じる。
泣きやんだミユは涙を拭いながら、僕のスマホをじっと見る。写真をパシャリと取る。その音にミユはびっくりして、声を出す。
「わぁ、なんですか!」
そんな驚いている彼女に先ほど取った画面を見せると、口を大きくあける。
「わ、私が居ます。こんなにくっきり、鏡でも見ているようです。」
大層、驚いている様子にもうたまらなくゾクゾクするアキラなのであった。
一日中、走っていたので段々と眠くなってくる。隣に座っているミユは僕にもたれ掛かりながら、スゥーと寝息を立てながら寝ている。
その顔は安心しきった顔で、気持ちよさそうに寝ていた。脈に触ると、トクン・・・トクン・・・と静かに波打つ。
これは信頼してくてるって思っていいのかと少し考える。その考えに精霊さんも、
「同意です。」
そう言ってくれる。故に、ここまで身を委ねてくれるのも納得できる。
この信頼を裏切らないためにも、アンレでの計画をなんとしても成功しなければならないと決意するのであった。
「そのためにも今は、」
「寝ることをおすすめします。」
そう精霊さんが告げて、僕は半寝する。
もちろん、警戒のためハンターセンスはレーダー並みに反応させて就寝するのであった。
翌朝、何やら誰かに見られているような感覚で意識を完全に覚醒させる。目の前にミユの顔が至近距離であった。
前にもこんなことあったなと思いつつも、
「い、いつから見てたの?」
そう恐る恐る聞く。
「・・・・・・起きましたね、主。」
そう言って、ニッコリとミユが笑う。
美少女の意図がわからない笑みってなんだか、怖いなと感じながら、馬に跨りアンレを目指す。
もう少しで着くと、ミユがそういうので馬を全力で走らせる。遠くの方に町が見え始める。
「ああ!!見えました、アンレの町です。」
そうミユが言い、その町で一際目立つ、石造りの建物を指さす。
「あれは町の有力者が住む、イベラ邸です。中に住んでいる人は嫌いなのですが、あの垂直にそびえ立つ石造りの壁は私は好きです。」
そう言ってミユが個人的見解を述べる。まぁ、町のランドマークとはそういう物好きを産むものなのかと思いながら、その石造りの壁を見るのであった。
アンレの町に着くと、さっそく食堂らしき建物に立ち寄る。どうやら、ミユはここの地元民のようでよく利用する料理屋に案内してくれた。
二人はフードを深くかぶり、店に入り、注文をする。
「ここの店は、素性のわからない人にも料理を出してくれるので、好きです。私もこの町では、異端者の孫というわけで、あまり歓迎されていないので、別の店では料理を出してもらえないこともあるんですよ。」
そう小声でつぶやく。どこでも、科学を志す者には風当たりがきついのだなとこの時は思う。
そしてミユが店主に注文をする。しばらくした後、料理が出される。
それは見るからに煮込み料理であった。
食べてみると、まぁ煮込んでますねという感じの薄味であった。
空腹なのでそれでも、おいしく感じ完食するのであった、もうちょっと塩っ気がほしかったなと内心思いながらその店をあとにするのであった。
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