95.アキラ、原木を切る。

 解体して、内臓肉と内臓を取り出した死体を家まで持って帰る。




血や内臓を取り出したおかげで、大分軽くなっている。




家につくと、アルテシアとイリスに頼み、洗浄と冷却を手伝ってもらう。まず、アルテシアも水魔術で死体を隅々まで洗浄し、イリスの氷魔術で死体を冷却する。




ふたりとも、鹿を獲ってきたことを喜んでいた。鹿肉の処理を済ませる。現在、部位ごとに解体してカチコチに固まった状態で保管されている、食べるのは明日からのようだ。




 さて、夕食を待ちながら、弓矢の整備をする。減ってきている矢を新しく作っていく。今朝は獲物の収穫はなかったが、実際は羽根は何本か獲得していた。




その羽根を新しく作っている、矢の後方部分に取りつける。そして、先を火で炙りながら尖らせていく。時折、微調節をしながら作っていく。大分、慣れてきた作業である。




「夕食できたよ。」




テラがそう告げると、きりのいいところまでして、食事の席につくのであった。




 「アキラ様、あとどれくらいで作ろうとしてるものは、完成しそうなのですか?」




皆が聞きたがっていた質問をアルテシアが代表して聞く。建物を作るってのは宣言していたが、その用途はまだ教えてなかった。




「う~~ん、あと4分の3くらいかな。今の家だと手狭だから、その掘立小屋で男用のスペースを新たに作ってるんだ。着替えの時とか僕、居場所ないから。」




皆、一応理解してくれる。




「もちろん、手伝ってくれたし、好きな時に隣の小屋に来て大丈夫だからね。」




そういうと彼女たちの目が一瞬変わったような気がする。




そして、




「それじゃあ手伝わなきゃね。」




と誰かが言う。みんな優しい子だね、とこの時の僕はそう思うのであった。まさか、真の目的があったとはこの時、知る由もなかった。




 次の日も、木を切る。段々と効率が上がっていき、おとといの時間で2本分の原木を運べるようになる。




その後も何往復もして原木を運ぶのであった。十分な量が揃ったところで、のこぎりでカットしていく工程だ。




小さな枝の先を少し炙り、えんぴつ代わりにおおまかな線を書いていく。原木を芯を残し、その側面を線の通りのこぎりで切っていく。




慎重さが要求される作業だ。なかなかこれが難しく線の通りにはいかない。出来上がりはいまいちな仕上がりとなる。




これは屋根に使おうと決めたのであった。




 その後も、木を切っていく段々と線通りに切れるようになってくる。これを何度も続けて、壁、床、屋根の材木が完成する。




壁は、木の側面をそのまま使う、雨風に晒される為、そのままの方が良いと判断したからだ。屋根も同じ理由である。床の材木は、芯のきれいな部分を使っていく。




あとは家の骨組みをしっかりすれば完成まで半分となるところまできたのであった。しかし、精霊さんから衝撃の一言が出る。




「宿主、切ったばかりの材木は水分を多く含んでいるため、乾燥させなければなりません。その期間は早くてもだいたい3か月ほどです。」




一気に完成が遠のくのであった。

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