第16話  相談事

今日からまた、学校だ。一日頑張るぞ。登校は……うん。別々にすることは、半ば諦めている。でも、下校はほぼ別々だから、よしとしよう。


 放課後、生徒会室に行く途中で、冴木先輩と出会った。冴木先輩も生徒会室に行く途中らしい。ついでに、お礼もいっておこう。


 「冴木先輩、水族館のチケットありがとうございました」

私がそういうと、冴木先輩は首をかしげた。


 「チケット?」

「え? だって、お兄ちゃんが冴木先輩からもらったって──」

「あ、ああー、うん、そう、そう、そういえば、優にチケットあげたわ!」

なぜか、冴木先輩は目をそらしながら、そう言った。


 「どうだった?」

「とても楽しかったです!」

水族館の思い出を話していると、あっという間に生徒会室についた。


 仕事は前と同じ、生徒総会の書類の作成だ。愛梨ちゃんは、できるだけ、パソコンなどの機器から離れた場所で書類の整理を任されていた。


 今日も何度か危うい場面もあったけれど、大きな問題に発展することなく一日が終わった。


 じゃあ、そろそろ帰ろうかな。


 帰りの支度を整えていると、愛梨ちゃんに話しかけられた。

「今日は、お話できる?」

相変わらず、笑顔が眩しい。特に断る理由もなかったので頷くと、この前彩月ちゃんといった喫茶店に行くことになった。


 喫茶店でそれぞれ注文すると、愛梨ちゃんはきらきらした瞳で話し出した。

「早速だけど、小鳥遊先輩って、家ではどんな感じなの?」

やっぱり、用件はお兄ちゃんのことか。だって、夢中なんだもんね。当然か。


「学校にいるときと、そんなに変わらないよ」

優しくて、笑顔が素敵な良いお兄ちゃんだ。そういうと、愛梨ちゃんは羨ましそうな顔をした。


 「いいなぁ、小鳥遊先輩がお兄ちゃんだったら、絶対毎日が楽しいよね」

「うん」


 ちょっと過保護だけど。あれだけいったのに、未だなんだかんだ言って、登校は一緒だし。


 「小鳥遊先輩の好きな食べ物ってなに?」

「うーん」

お兄ちゃん基本的に、好き嫌いないからなぁ。でも、強いて言うなら。


「甘いもの、かな」

はっきりと甘いものを好きだといったことはないけれど、甘いものを食べているときはいつもより表情が柔らかい気がする。


 「えっ、先輩甘いもの好きなの? 可愛い! 今度クッキーつくって持っていこうかな」

確か、愛梨ちゃんって、本人には自覚がないけれど、料理が下手な設定があった気がするけど、大丈夫だろうか。


 その後も、愛梨ちゃんから質問を受け、それに淡々と答えるという時間が続き──


 「?」

どうしたんだろう。急に愛梨ちゃんがもじもじとし始めた。お手洗いだろうか。そんなことをぼんやりと考えていると、愛梨ちゃんは意を決したように、ぎゅっと手を握りしめた。

「あのっ! もう、薄々気づいてるかもしれないけど、私、小鳥遊先輩のことが好きなの。……だから、協力してもらえないかな?」

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