第2話 義妹として

ライバルキャラ小鳥遊朱里は、とにかくヒロインとヒーローの邪魔をする。


 漫画通り、ずっと、好きだった。初めてあった日からずっと。


 けれど、考えてみれば、私の行動は確かに優くんを縛っていた。優くんがどこにいくにもついていった。でも、血も繋がってない義妹に付きまとわれたって鬱陶しいだけだ。優くんは、優しいから一度も私を拒絶したことはなかったけれど。


 唇を噛む。前世の記憶とやらが戻ってよかった。私という人間は、記憶が戻っても変わらないけれど、これで、優くんの邪魔にならずにすむ。だから、この恋は諦めよう。







 涙のあとがばれないように、顔を洗ってから、隣の部屋の扉をノックする。

「優くん、朝だよ」

優くんは、何でもできるけれど、一つだけ欠点があった。朝が弱いことだ。そんな優くんを起こすのは、私の仕事だった。


 ノックしても返事がないので、部屋のなかに入る。これも、いつものことだった。

「ほら、優くん、起きて」

ベッドの上で規則正しく寝息をたてていた、優くんをゆすると、優くんはようやく目を覚ました。


 「ん……朱里?」

「そうだよ、起きて」

今日は入学式だ。生徒会に入っている優くんは、確かいつもより早く家をでないといけなかったはず。


 欠伸をしながら、体を起こした優くんに笑う。

「おはよう、お兄ちゃん」

「おはよ……え?」


 噛まずに言えたことに安堵する。妹じゃなくて、いつか恋人になりたかった私は、お兄ちゃん、なんて一度も呼んだことはなかったから、お兄ちゃんは驚いていた。


 「どうしたの、朱里」

「今日から、高校生だし、もう、優くんからは卒業することにしたの。今までごめんね」


 「朱里……? 卒業って、」

「登下校も別々にしよう。今時兄妹で、一緒なんておかしいし。明日からは、自分で起きてね、お兄ちゃん」

まだ寝起きでぼんやりしているお兄ちゃんにそうまくし立てて、部屋を出る。


 扉を閉めるのと同時に、私は恋心を捨てた。今日からは、小鳥遊優の義妹として、頑張ろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る