686 白クモザルとの戦闘にゃ~


「シラタマさんも始めたみたいですね」


 猫パーティと白クモザルとの戦闘は三ヶ所で行われ、遠くで大きな音が聞こえて来ると、それはシラタマだと受け取ったリータ。


「イサベレさん達も派手にやってるみたいだし、私達も飛ばそうニャー!」

「ですね。メイバイさんは好きに動いてください!」

「行っくニャー!!」


 リータとメイバイの相手は、10メートルほどの白クモザル。尻尾は三本あり、キョリスと同等の力を持っている。

 そんな相手に、二人は様子見で動きの確認は終わったので、ここからはメイバイを解き放って攻撃。


 メイバイは木々を足場に縦横無尽に空中を飛び回る。そのメイバイに白クモザルが攻撃しようとするが、リータが長い鎖を鉄魔法で操って妨害。

 白クモザルの手を弾き、時には巻き付けて引っ張る。力だけでは白クモザルのほうがリータより上なので、引っ張られた場合は鎖を緩めて白クモザルのバランスを崩す。


 その隙に、メイバイは首を重点的に白銀の小刀二刀流で斬ってダメージを与える。もちろん白クモザルは腕で防御。その都度痛みが走るので、メイバイを標的にしたいようだがそれをリータが許してくれない。

 ならば先に邪魔なリータを排除しようと攻撃しても、リータの大盾は崩せない。殴ってもリータはしっかり耐え、掴もうとすれば逆に反撃を受ける。

 リータの気功パンチならば、白クモザルにかなりのダメージが入るようだ。


「メイバイさん! 四肢から行きましょう!!」

「オッケーニャー!!」


 首を狙っていてもらちが明かないと察したリータは、作戦の変更。メイバイもそれに応え、手首、足首を斬り付け、すぐに離れる。


「いまです!」

「これでどうニャー!」

「ギャアァ~~~!!」


 リータが白クモザルに巻き付けた鎖を引っ張った瞬間に、メイバイの高速回転気功斬りが左足に炸裂。八度もの斬り付けで左足の腱が斬られて、白クモザルは片膝をついた。


「どっせ~~~い!!」


 頭が下がったところに、リータの気功アッパー。飛び上がる力とフルスイングのパンチが白クモザルのアゴに入ったら仰け反った。


「もらったニャー!!」


 ラストは、メイバイの高速回転気功斬り。仰け反る事であらわとなった白クモザルの首は、一瞬にして16回も斬られて血を吹き出す。


「させません!」


 白クモザルの最後の足掻きもリータが潰す。最大攻撃で隙を作ったメイバイを白クモザルが握ろうと手を伸ばしたが、リータに腹を思いきり殴られて数メートル地面を削り、背中から倒れたのであった。


「トドメは……もう大丈夫かニャ?」

「はい。死んだようです」


 数秒白クモザルの動きを注視した二人は、軽くハイタッチ。


「急ぎましょう!」

「うんニャー!」


 こうして白クモザルをほふっても、リータとメイバイは次の戦闘が残っているので走り出したのであった。もう一匹と戦いたいから……



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 時は少し戻り、コリス、イサベレ、オニヒメは20メートルはある白クモザルと戦闘を繰り広げていた。


「つよいね~」

「ん。気を抜けない」

「普通の獣なら勝てそうなんだけどね」


 コリス達の相手は、身長20メートルと巨大な上に尻尾が五本もあるので、三人では防御力、攻撃力、共に不足気味。それに人間に近い動きをし、人間より多彩な動きが出来る猿なので、攻めあぐんでいる。


 これまでも、シラタマが作ってくれた白メガロドン製の巨大盾でコリスが守るように戦っていなかったら、危ない場面は多々あった。

 イサベレが空を駆けて攻撃しようにもスピードで負けているので踏み込めず、反撃されそうになったらオニヒメが魔法攻撃。

 オニヒメの【千羽鶴】には気功が乗っているので少しはダメージとなってイサベレを逃がせるが、白クモザルの標的がオニヒメに移る。

 白クモザルの拳や踏み付けはコリスが巨大盾で守り、耐えるのがやっと。またイサベレが攻めようとしても同じ展開になるので、コリスが攻撃に参加できないからまったく乗り切れないでいる。


 その膠着状態を打破しようと先に動いたのは、白クモザル。近くの白い木を握って振り回したり投げたりと、めちゃくちゃな攻撃をし出した。


「ぐっ……」

「コリス! 横に飛んで!!」

「うん!!」

「ギャアアァァー!」


 さらには、白クモザルの【咆哮】。白い木を振り回してコリスが巨大盾で耐えた瞬間に、白クモザルは口からエネルギー波を放つ。

 その場合は、イサベレがいち早く危険に気付いてオニヒメを抱いて飛び退き、コリスも飛んで事無きを得る。



 コリス達は防御重視で戦い、唯一ダメージを与えられるのはオニヒメの魔法だけ。スタミナでも劣るので、このまま行くと白クモザルに負けてしまうだろう。


 そんな膠着状態は、突如崩れる。


「どっせ~~~い!!」

「ニャニャニャニャニャー!!」

「ギャアァ!?」


 白クモザルの背中をぶん殴るリータと、小刀二刀流で斬りまくるメイバイの登場だ。突如背中に痛みの走った白クモザルは、痛みと驚きで大声をあげた。


「チャンス!」

「「うん!」」


 白クモザルが後ろを見た瞬間を見逃さないイサベレ。コリスとオニヒメと一緒に最大攻撃を繰り出す。


 コリスは白クモザルの右足に向けての気功リス百裂拳。

 オニヒメは風魔法で自身を回転させて、左足に向けての白銀の扇で回転斬り。

 イサベレは白クモザルの左目に向けての細みの刀で無酸素気功斬り。


 白クモザルは目を潰され、両足から血が吹き出し、悲鳴をあげる。だが、痛みよりも攻撃を優先してイサベレを掴もうとした。


「「せ~の! にゃ~~~!!」」


 しかし、リータが白クモザルの首に鎖を巻き付けて、メイバイと一緒に力いっぱい引いたので、空振り。白クモザルは両足のダメージと相俟あいまってバランスを崩し、仰向けに倒れたのであった。



 白クモザルが倒れると、集中攻撃よりも集合を優先したイサベレ達は、リータ達の元へと集まった。


「大丈夫でしたか?」

「ん。なんとか。思ったよりやりにくい相手」

「ですよね。あの長い手足があるから、こっちもてこずりました」

「やっぱり。でも、倒したってことは、何か情報を持って来てくれた?」

「はい。四肢から削って行くのが最善です」


 リータが各自に指示を出し終えた頃には白クモザルはとっくに立ち上がっており、威嚇している。


「じゃあコリスちゃん。一緒に頑張ろうね」

「うん。まかせて!」

「メイバイさん、イサベレさん。やっちゃってください!」

「「にゃっ!」」

「オニヒメちゃんは、じゃんじゃん撃っちゃって!」

「【大鎌】にゃ~!」


 メイバイとイサベレが左右に分かれて走ると、オニヒメが放った大きな風の刃で白クモザルを牽制。その隙にリータとコリスが盾を構えて前に出た。


 白クモザルはどれを狙うか一瞬悩んだが、前方から攻撃が来た事でリータとコリスを標的とする。

 まずはリータに踏み付け。リータが力いっぱい大盾で耐えると、コリスが気功リス百裂拳で白クモザルの左脚を殴りまくる。そこに、すかさずイサベレとメイバイの空中斬り。お互い一撃入れて離れて行った。

 白クモザルに痛みが走ると、今度は逆に踏み付け。その場合はコリスが巨大盾で耐え、リータが気功パンチ。またイサベレとメイバイのヒットアンドアウェイ。


 その攻撃を繰り返し、タイミングがズレた場合はオニヒメが【大鎌】を放って白クモザルを牽制。

 猫パーティは息の合った攻撃を繰り返し、白クモザルにダメージを積み重ねて行くのであった。



  *   *   *   *   *   *   *   *   *



 一方わしは……


 おっ! 開けた場所に着いた。


 大きな風の玉をドッチボールみたいに巨大な白いクモザルにぶつけまくっていたら、おそらく寝床の広い空間に着いたので、攻撃をストップ。

 身長50メートルはあるボスクモザルの足元に着地した。


 やっと全貌を確認できたけど、尻尾が七本もあったとは……ま、わしと比べたら強さは1.5倍ってところなら、このままでも勝てそうじゃ。

 てか、まだ気付いておらんな。デカ過ぎるからわからんか。もういっちょ【大風玉】っと!


 わしの放った風の玉は下からだったので、ボスクモザルは風の玉を胸で受け止めて抱き潰したら、わしを見てくれた。


「ギャアァー!!」


 怒ってらっしゃる。リータ達が一匹も殺してないのなら念話を繋いでいたんじゃけど、もう遅いな。情が湧いたら殺し難いし、喋らずにやっちゃうか。


「にゃ~~~ご~~~!!」


 一気に仕留めたいわしは、【レールキャット】。白クモザルの首を狙って【御雷みかずち】を放ってからの、居合い斬りだ。


 そうは上手くいかんか。


 しかし、両腕でガードされてしまったので、わしは白クモザルの腕を蹴って地上に下り立つ。


 深々とは斬れたんじゃけどな~……体格差は補えないな。ここはセオリー通り行こうかのう。


 自分より遥かに巨大な敵と戦って来たわしだ。ここからは素早く動き、ボスクモザルの攻撃を避け、【青龍】や【白虎】をおとりに足を斬りまくる。

 それで早くもボスクモザルはダウン。両足が使えなくなったところで、両手の腱を斬り、最後には首を斬り裂いてトドメを刺すのであった。


 うん。さすが神剣【猫撫での剣】。名前さえ諦めれば、攻撃力は素手より強い。ホント、名前さえよければな~……

 はぁ~あ。リータ達も心配じゃし、さっさと見に行くとするかのう。


 【猫撫での剣】のおかげで楽に倒せたのはいい事なのだが、それよりも名前が気になって、いまいち勝った気がしないわしであったとさ。



 ボスクモザルを次元倉庫にしまったわしは「ヒュンッ!」と走ってリータ達の戦闘区域に到着。こそっと様子を見る。


 一匹は倒したみたいじゃけど、思ったよりてこずっておるな……でも、いきいきしておるから大丈夫そうじゃ。先にお片付けしてしまおうかのう。


 リータ達と白クモザルの激しい戦闘を確認したらやや押していたので、わしはその辺に転がっているクモザルの死体を片っ端から次元倉庫に入れながら走り回る。

 そうして全て入れてコーヒーブレイクでもしようかと戦闘区域に戻ったら、クライマックス。ズズズッとコーヒーを飲みながら観戦するわしであった。

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