684 今度こそ冒険に出発にゃ~


 オオカミ族とは約束をかわし、原住民にも声を掛けたら、わし達は城に戻ってジョージと会食。今回は高級肉を渡しておいたので、城の料理長に作ってもらった。

 味は東の国の料理長より劣っていると思うけど、わし達が気にならないレベルなので美味しく食べる。ジョージは猫の国料理を食べたそうだったけど……


 それから城の一室を借りて眠るのだが、リータとメイバイはなかなか寝付けなかったらしく、寝ているわしをしつこく撫で回していたっぽい。

 翌朝起きたら、わしの毛並みはグチャグチャ。二人は寝不足でつらそうにしながらわしのブラッシングをしていた。


 ここでもう一泊してもいいのだがやる事も無いので、引き止めるジョージとお別れして、ウサギの街に転移。

 そのおかげでリータとメイバイは眠気が飛んだようなので、思ったより早く時差が合いそうだ。


 リータ達はラビットランド2に走って行ったので、わしとコリスはヨタンカ達と世間話。一番気になるソウハとルルの話を聞いてみた。


「へ~……仲良くやってるんにゃ」

「はあ。もう少し恋人気分を楽しんでから結婚すると言っていました。本気のようです」

「ま、好きにさせておけにゃ~」

「それがですね。猫の国から来た人からも、結婚できないかと言われていまして……」

「そうにゃの??」


 猫の国から派遣している者はウサギパラダイスにやって来た女性ばかりなので、撫で過ぎてあまりウサギから好かれていない模様。なのでヨタンカに、お見合いが出来ないかと相談が来ているそうだ。


「お互い惹かれ合っているんにゃら止める必要はないんだけどにゃ~……男性から女性の好みを聞いて、まとめた物をうちの子達に見せてやれにゃ。いまの生活態度が直るかもしれないにゃ。ちにゃみにヨタンカのタイプって、どんな子にゃ?」

「妻一筋なので、見てもらったほうが早いです」


 ヨタンカに奥さんを紹介してもらったけど、男か女かもわからない。毛並みが綺麗だと言われたけどわからない。色合いが素晴らしいと言われてもわからない。耳が寝ているところがかわいいと言われても……わかるか~!


 ウサギ族特有の美的感覚はわしではわかりかねるので、奥さんにも質問。ヨタンカのどこを気に入ったのかと聞いたら、優しいところと権力者だった……


 権力者と優しいは、どっちが上だったんですか? ……悩んでますね。ギリ、優しさが上回っているかもですか。ハッキリしませんね。


 どうもウサギ族の結婚観は、男性は見た目が強く、女性はわりと打算的。人間と大差ない価値観だとわかった。だからルルも、狩りの上手いソウハに惹かれたのだと納得できたので、もう無駄なアンケートは必要ない。

 猫の国の女性には、ヒモになってもいい奇特なウサギを探すしかないと、ヨタンカにアドバイスしてもらう事に決めるのであった。



 変な懸案事項に時間を取られたが、そのあとはコリスと一緒にウロウロ。飲食店も出来ていたので、楽しく買い食いや工房見学をしていたら、ふとこれはデートみたいだなと思ってしまい、コリスに質問してみる。


「ところでコリスって、好きにゃ人は居るにゃ?」

「モフモフ~!」

「わしにゃ? わし以外は居ないにゃ??」

「う~ん……リータもメイバイもヒメもすきだよ。あと、エミリとべティもすき」


 リータ達は優しく撫でてくれるから好きなのかな? エミリ達は美味しいエサをくれるから、そりゃ好きになるわな。コリスは食いしん坊じゃもん。

 でも、わしの質問は男の人だったんじゃけどな~? ま、コリスにはまだ早かったか。


「そっかそっか。いっぱい好きにゃ人が居て幸せだにゃ~」

「うん! あ、オスだったらモフモフ以外いないからわすれないでね」

「にゃ……いま、にゃて言ったにゃ??」

「だからモフモフ、だ~いすき!」


 え? コリスって、わしを雄として見てたの!? これ、わしはどう返事したらいいんじゃ~~~!!


 わしを抱いて頬擦りするコリスになんと声を掛けていいかわからないわしは、知恵を絞って答えを言い渡す。


「わしもコリスのこと大好きにゃ。でも、これは禁断の愛にゃから、二人だけの秘密にしようにゃ~?」

「ふたりだけのひみつ……なんだかドキドキするね~」

「う、うんにゃ。ドキドキにゃ~」


 リータ達にバレないか、わしもドキドキじゃ!! てか、どうしよう? わしも好きって言ってしまったから、コリスと子作りしないといけないのか? わしは妹としか見てなかったんじゃけど~??

 あ、動物って、発情期があったな。それまでは大丈夫な気がする。コリスに発情期が来ませんように!!


 わしは祈りながらコリスとデートを続けるのであったとさ。



 リータ達はお昼が過ぎてもわし達を探しに来ないので、ラビットランド2に行ったらウサギに餌付けしていた。ここでも食事の提供をしているみたいだが、食べるほうが逆。

 まぁリータ達はお金を持っているし、お腹がへっているならここのごはんを食べるだろう。でも、バカ食いしてウサギ族の食料が減ったら困るので、高級串焼きを置いて外に出た。


 午前中に見るところは見てしまったので、暇になったわしとコリスは別荘でお昼寝。さっきの事もあったので、コリスがわしを襲って来ないかとビクビクしていたら、すぐに寝息を立てていた。

 わしもその音に釣られて眠り、起きたら夜。リータ達にモフられながら楽しく夕食をして、明日の為にまた眠るのであった。



「さてと、冒険の始まりにゃ~」

「「「「「にゃ~!」」」」」


 ウサギの街から空を飛び、崖の上から転移。やって来たのはグランドキャニオン。ここから戦闘機に乗って南下する。

 今回の冒険の目的は、メソアメリカ文明の調査。遺跡や時の賢者の足跡を探しつつ、南下してアメリカ大陸の縦断という計画だ。


「あっ! あそこ、白い森がありますよ!!」

「この辺は黒い森だらけだから狩り放題ニャー!!」

「………」

「「無視してないで降りてにゃ~」」


 出発して一時間で、計画はさっそく破綻。メキシコ辺りに入ったらリータとメイバイのテンションが上がっていたのでわしは無視したのだが、二人にモフられ、オニヒメに操縦桿を奪われて黒い森に着陸しやがった。


「さあ、冒険の始まりです!」

「「「「にゃ~~~!!」」」」

「さっきそれ、わしがやったにゃ~」


 戦闘機を降りてリータが冒険の仕切り直しをしたから、ここがリータ達のスタートラインらしい。わしがツッコんでも無視しやがる。無視するなと言ってたクセに……


「あ、シラタマさん。オネムですか?」

「じゃあ、私が抱いて運ぶニャー!」

「ゴロゴロゴロゴロ~」


 わしがジト目で見ていたら、二人はわしの物言う目を塞ぐ始末。こうしてわしは、メイバイに抱かれて黒い森を連れ回されるのであったとさ。



 メキシコ辺りの黒い森は、動物も強くて申し分ない模様。ほとんど黒い動物で、チラホラ白い動物も現れるからリータ達はテンションが高い。


「ちょっと狩り過ぎじゃにゃい?」

「そうですか? ちょっとは逃がしてましたけどね~」

「ほんのちょびっとだったにゃ~」


 リータ達を暴れさせるとアメリカ大陸の生態系がおかしくなりそうなので説教。


「あと、どこに向かってるか知ってるにゃ?」

「南ニャー! 今日はずいぶん進んだニャー」

「ぜんぜん進んでないにゃ~」


 メイバイ達に任せたら、西へ東へ南へ北へと動物を探すので、ほぼ進んでいないので説教。

 冒険初日は狩りをして、リータ達のスタートラインからやや北に戻ったところで野営をするのであったとさ。



 翌朝、獣対策で地面に掘った穴から這い出すと、朝食と片付けをしてわしは戦闘機を取り出す。

 しかし、リータとメイバイが何やらコソコソ話し合っている。


「さすがに戻っているのはマズイですね……」

「うんニャ。ここは南に一直線に進みながら、イサベレさんに強い獣が居たら教えてもらおうニャー」

「ん。白い獣じゃないと楽しめない。それでいい?」

「「「「オッケーにゃ~」」」」

「にゃにがオッケーにゃ! 戦闘機に乗ってくれにゃ~……待ってにゃ~~~!」


 わしが文句を言っても走り出す始末。仕方がないのでわしも続くしかなかった。



 猫パーティは黒い森を爆走。木々を避けて南下する。その道中で哀れな被害獣が道を塞いでいたら、黒ならば「邪魔っ!」と、一蹴。速度を落とさず駆け抜ける。

 わしはその都度足を止めて、死んだ獣を回収。群れの数匹を殺して通り過ぎる場合もあるので、わしはペコペコ頭を下げながら回収して逃げる。


 白い獣ならば、わし以外の全員で戦ったり、じゃんけんでチーム構成を変えたりして戦う。わしも仲間に入れて欲しいのでスリスリしてみたら、撫でられただけ。

 撫でて欲しいと勘違いと言うか確信犯。わしをわざと仲間外れにする為に、撫でて機嫌を取っていたにすぎない。


 そんなこんなでとてつもない速度で爆走していたら、皆の足がピタリと止まった。なので、最後尾を走っていたわしはコリスにモフっと突っ込んだ。


「ついにわしの出番が来たにゃ~!」


 真打ち登場。リータ達では倒せない強い獣が居るのかと思ってわし最前列に躍り出た。


「いえ……アレって色違いですけど、アレじゃないですか?」

「にゃ~~~??」


 リータの歯切れの悪い質問を聞いて、わしは指差された黒い獣に目を移す。


「にゃ!? スカンクにゃ~!!」

「やっぱり……」


 リータ達が足を止めた理由は、宿敵のスカンクが居たから。前回は白くて大きかったから、いまいち自信が無かったので話し合っていた模様。


「迂回して行こうにゃ~」


 さらに、どうやって倒そうかと話し合っているので、わしが止めたらメイバイに背中を押された。


「にゃ、にゃんですか?」

「シラタマ殿……私達の仇を取ってニャー!」

「仇はあいつじゃないにゃろ~」

「「「「「お願いにゃ~」」」」」


 女性のお願いに弱いわしは、渋々黒スカンクと戦う決意をするのであったとさ。



 黒スカンクは、まだわし達に気付いていないようなので望遠カメラでパシャリ。

 これはウサギ族に注意するように渡す予定なのだが、黒い木のせいでわかり難いので、何枚も撮っていたらメイバイにカメラを奪われた。自分が撮るから早く行けとの事らしい。


 とりあえず黒スカンクとわしの戦闘は始まったので、一撃離脱。一瞬で近付いて、刀を抜き、首を斬り落としてやった。

 その間、コンマ数秒。黒スカンクは何をされたのかもわからず、頭が落ちたあとはしばらく動いていたが、血が吹き出して足りなくなった頃に、ドサッと倒れるのであった。


 これだけの早業ならば、くさい液体を飛ばす隙もない。わしはしてやったりで、リータ達の場所へ戻るのであった。


「「「「「クンクンクン……」」」」」

「においを嗅いでないで褒めてにゃ~」


 一瞬でも黒スカンクに近付いたからには、わしのにおいチェックは欠かせないリータ達であったとさ。

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