第二十四章 アメリカ大陸編其の三 南米で遺跡発掘にゃ~
673 シャーマンに報告にゃ~
我輩は猫又である。名前はシラタマだ。最強の猫と言っても過言ではない。
サンダーバードとの戦闘は、ほとんど手加減をしてもらえなかったのにほぼ互角に持ち込んだのだから、おやっさんは確実に超えたから嘘ではないだろう。
【
だが、わしは最強なんてそれほど興味はない。家族、知人、国民を守れるだけの力があればそれでいい。
「なんだかまだくさく感じますね」
「クンクン……本当ニャー。シラタマ殿、なんとかしてニャー」
スカンクのにおいから守る力はないので、リータやメイバイ達のお願いは聞いてやれない。不甲斐ないわしを許してくれ……
「にゃんかわしもくさくにゃい!? みんにゃのにおいが移ったにゃ~!!」
「「「「「その言い方はやめてにゃ~」」」」」
あんなに念入りに洗ったから大丈夫とリータ達に言われたので、皆と一緒に眠ったのは大失敗。
バスの中も布団もスカンクのにおいが染み付いていたので、今日はナイアガラの滝で洗濯、お風呂、滝行を何度も繰り返して一日が潰れるのであった。
「服は諦めようにゃ~」
翌日は、洗濯しまくったリータ達の服のにおいを嗅いでみたが、スカンク液をもろに被ったせいで、まだくさい。革に染み込んでいるので取れなかったようだ。
わしの贈り物と言う事で手放したくなさそうだったので、今度フレヤに新しく作ってもらおうと言って納得してもらい、予備の服に着替えてもらった。
「それで今日はどうします? スカンク探しますか??」
「もう、スカンクとは関わらないでくれにゃ~」
リータ達は意趣返しをしたいようだが、すでにサンダーバードを見るという目的は達成している。強制的に違う場所に移動してやった。
「あ~あ……こんなに不甲斐ない狩りは初めてニャー」
「いっぱい狩ってたにゃ~」
転移魔法で移動したら、メイバイ達が文句タラタラ。大容量のキャットケースに黒い獣が山ほど入っていたのに、どこが不甲斐ないのかわかりかねる。
「それよりここはどこですか?」
「たしかあっちに走れば、すぐ着くにゃ~」
ようやくリータがいい質問をしてくれたので、皆でダッシュ。すると、平原には似つかわしくない真四角の大きな建造物を発見した。
「あ、シャーマンのお婆さんに会いに来たのですか」
「そうにゃ。サンダーバードを見付けたことと、苦情をにゃ~」
ここはキカプー族の集落。ハリケーンでテントが全て吹き飛ばされて途方に暮れていたから、少し手助けしてあげた場所だ。
「まだ根に持ってたニャー? 器のちっさい猫ニャー」
「ひどいにゃ~。別に食べ物のことで怒ってないにゃ~」
シャーマンのおかげで大量の旅行鳩が集落に向かっていたと知っているのならば、食料が降って来るようなもの。それなのに食料を奪われたのだから、その時はわしも怒っていた。
ただ、その怒りはすでに消えており、それよりも二日も移動が出来なかった事に文句を言いたかったのだ。
「……本当ですか?」
「言い訳っぽいニャー」
「本当にゃ~~~」
いや、メイバイに器が小さいと言われたからの言い訳だ。本当に怒りはなくて、嫌味だけを言うつもりだったのだ。
「ちっさい猫王」略して「ミニネコ」って……それでいいの? あんまりバカにされてる気がしないんじゃけど……見たまんまじゃし。あと、その略すヤツって、誰発信で流行っているのですか??
わしを使っての言葉遊びの出所を探りながら集落に近付くと、男がわしに気付いた瞬間にダッシュで四角い建物に向かい、おっさんが出て来たと思ったら
とりあえずわし達はその集団に近付いたら、喚き散らしていたおっさん、酋長のケネソーが畏まって出迎えてくれた。
「お久し振りで御座います」
「久し振りだにゃ。元気にしてたにゃ?」
「シラタマ様のおかげで、健康に暮らさせていただいております。有り難う御座いました」
深々とお礼を述べるケネソーには、皆を解散させろと言ってから雑談。キカプー族は、なんか拝んでブツブツ言ってるから気持ち悪いんじゃもん。
それからキカプー族の近況を聞いてみたら、いつもより動物性タンパク質を多く摂れて、皆、すこぶる体調がいいらしい。
人間も家畜も安心感のある家で眠れるので、ストレスもないようだ。
「ふ~ん。それはよかったにゃ~。そうそう、シャーマンの婆さんに報告があるんにゃけど、取り次いでくんにゃい?」
「シャーマンにですか……」
「にゃ? 暗い顔をしてどうしたにゃ??」
「実は……」
ケネソー
「あんにゃに元気にゃったのに……突然だにゃ」
「いえ、シラタマ様が来る前は寝たきりだったのです。それが歩けるようになったと思ったら、ポックリと……」
あ……それでか。キカプー族が婆さんを見て驚いていたのはそのせいか。別れの時に、一族を頼れと言っていたのも死を予言しておったんじゃな。
それにしても、言ってくれたら薬ぐらいやったのに……。元気そうに見えたから気付かんかったわい。
「お墓は無いのかにゃ? 遅くなったけど、別れの挨拶ぐらいさせてにゃ~」
「はい。こちらです」
ケネソーに連れられて向かった先には、地面に何本か木が突き刺さった場所があり、ここがお墓とのこと。聞いたところ、今まで移動して暮らしていたので死者は土に還す弔い方をしていたから、先祖代々の墓は無いようだ。
今までキカプー族の為に尽力した者が、すぐに朽ちてしまう木の棒ではかわいそうなので、これから移住しないのならば石造りにしてはどうかと持ち掛けると、簡単に許可が出たから和風のお墓を土魔法で建ててあげた。
そのお墓の前にわしは花束と酒を置き、猫パーティで手を合わせ、サンダーバード発見の報告をする。そして感謝の言葉を残して墓から離れようとしたら、二人の女性が近付いてぺこりと頭を下げた。
「シラタマ様、お待ちしておりました」
この二人は、シャーマンの娘と孫娘。言葉から察するに、わしが来る日がわかっていたみたいだ。
何か話があるとのことで、わしはテーブル席を用意して、お茶をしながら話し合う。
「母からの言伝がありますのでお聞きください」
シャーマンからの言伝は、まずは謝罪。どうも旅行鳩の件でわしが文句を言いに来ると予言していたそうだ。それでまたリータ達に「ミニネコ」と言われ、ジト目が痛いので先を続けさせた。
シャーマンの予言では、わしとキカプー族の出会いはこの時期は確率が低く、かなり先が濃厚だったと聞かされた。それがここ最近予言が変わったので、わしと旅行鳩との遭遇は偶然に近い物だったらしい。
何故、予言が変わったかはシャーマンでもわからないとのこと。しかし、こんな分岐した予言は初めてだったので、シャーマンは確率の低い賭けをしてみたくなったそうだ。
これって、スサノオが関わっているから予言がふたつに分岐したのかも? わしは当初南に行こうと思っていたけど、スサノオが行け行けうるさかったから東に向かう事を決めたし……
それにしても、部族を巻き込んだ賭けなんかするなよ。下手したら全滅しておるぞ。まぁその場合は確実に逃げてたか。
あ、そんなに未来が見えていたら、賭けでもしたくなるかも? 婆さんも先を知り過ぎると面白くないと言っていたし、わしだってそんな人生は面白くない。最後はドキドキして楽しめたんじゃな。
シャーマンからの謝罪を受け取ったら、こちらからも質問。薬をくれと言ってくれたらあげたのにと言ったら、これも答えが用意されていた。
『あたすはもう十分役割は果たした。生き長らえても、少し延びるだけだ。最後に美味しい物を食べさせてくれてありがとよ』
とのこと。薬を与えても死を免れないほど弱っていたみたいだ。しかし、いきなり立ち上がれた謎が解けていなかったから聞いてみたら、黒い獣の肉が効いたらしい。
それで少しは動ける体力が戻り、白い獣の肉も食べたので、予想していた寿命も延びたそうだ。
「最後は安らかに旅立ちました」
シャーマンの娘は悲しい顔を見せずに告げるので、本当に大往生だったとわしは受け取った。
「そう言えば、道に迷ったら一族を頼れと言われたんにゃけど、お二人も占いが出来るにゃ?」
「娘が出来るようになるはずです」
「にゃ? 変にゃ言い方だにゃ」
「これは一族以外には聞かせられない話なのですが……」
シャーマンの娘は何故かわしにだけなら話をしていいとのことなので、皆には離れているように言ってわしだけで詳しく聞いてみた。
この力は一子相伝。力を持つ者が後継者と認めた者に受け継ぐ力らしい。その譲渡には死期が近くなった頃にしか行えず、受け継いだ者の力が馴染むには、先代が死んでから数ヶ月は掛かるそうだ。
「じゃあ、占いの出来ない期間の危機はどうするにゃ?」
「それほど多くはないですし、母から細かく指示を受け取っているので、なんら問題ありません」
アフターケアまでして旅立つとは、あの婆さん、どんだけ聖人なんじゃ。これこそ、御使い様なんじゃね? わしなんか、目に映る人しか助けられんぞ。
「てか、そんにゃ大事なことを、わしにゃんかにペラペラ喋ってよかったにゃ?」
「はい。母は『あの猫なら信用を勝ち取っておけば、いいように使えるからね。ヒッヒッヒッ』と、言ってましたので」
つまり、わしにシャーマンの一族を守れと言っておるのか。たしかにこんな一族が居たら、王様なら誰でも欲しがると思うけど……言い方あぁぁ!!
「いちいち婆さんの口マネしなくていいんにゃよ? ちょいちょいムカつくんにゃ~」
「それも母の言伝でして……申し訳ありませんでした!」
死んでまでわしをイラつかせているのはシャーマンなので、娘と孫娘に謝らせるのは筋違い。筋違いとはわかっているのだけど、やっぱり納得のいかないわしであった。
「あ、そうにゃ。ちょっと頼みたいんにゃけど、
「母の予言だと……」
「婆さんの意見はいらないにゃ~!!」
シャーマンの予言なんて、わしでも簡単に予言できるので必要ない。とりあえずリータ達も呼び寄せて、においチェックだ。
「クンクンクン。あぁ~……」
「やっぱりくさいにゃ?」
「私の口からはなんとも……」
「じゃあ、婆さんはなんと言ってたにゃ?」
「母は……くっさ~! 近付くなこの猫!!」
「……それって本当に婆さんの言葉にゃの??」
予言ではにおいを嗅げないんだから、娘の言葉はなんだか信用できない。本当は娘もシャーマンぐらい口が悪いんじゃないかと疑うわしであったとさ。
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