671 鳥の楽園にゃ~
前方には巨大な黄金のコンドルがニ羽、周りには巨大でカラフルな鳥が百羽以上。小さな鳥に至っては数え切れない。
その鳥の大群に囲まれたわしは息を飲む。
誘い込まれてしまったが、敵意はないように思う。これは、歓迎されておるのかな? でも、目が痛い……
てか、これがサンダーバードか……本当に金色じゃな。ニ羽も居るとは想定外じゃが、思ったより小さい。デカイので10メートル前後、小さいので5メートルってところか。翼を広げたら、その倍ってところかな?
小さいのでおやっさんぐらいの強さはありそうじゃ。デカイのでその倍。【
もしもの場合は、おやっさんの縄張りまで逃げてやろう。四神を巻き込めばなんとかなるじゃろう。
わしが目を擦って戦力や逃走経路を確認していたら、ここのボスだと思われる一番大きなサンダーバードからの念話が届く。
「またお前か……懲りない奴だな」
またお前? どっかで聞いたセリフじゃな……って、四神と同じ事を言っておる! てことは、
「ち、違いますにゃ~。わしは初めてここに来ましたにゃ~」
「違うだと? そんな見た目の奴はお前しか……そう言えば小さくなったような……」
「わしもそいつには迷惑掛けられたにゃ~。あいつ、わしの縄張りでも大暴れして逃げてったにゃ~」
「ふむ……嘘は言ってないように聞こえる」
すんません! 嘘です! 本当は四神の縄張りのことです!!
わしは嘘がバレないようにと心の中で祈っていたら、なんとかバレなかったようだ。
「しかし、よく我の縄張りに入って来ようと思ったな」
「どういうことにゃ?」
「空を飛ぶ者以外、我に近付く者は滅多におらん。誰かから我が傷を治してくれると聞いたのか??」
うん?? このサンダーバードさん、傷を治せるのか? 獣や鳥で回復魔法を使える奴なんて初めて見た。マジもんの神様じゃったのか~。
てことは、わしは傷を負った哀れな猫と思われて、鳥さん達はわしをここまで連れて来てくれたってことか。
「怪我なんてしてないにゃ~。ここに綺麗な毛の生き物が居ると聞いて、ひと目見たくて来たんにゃ~」
「そんなことでか??」
「そうにゃ。こんにゃ綺麗な毛は初めて見たにゃ~。わしが出会った中で、文句なしの一番にゃ~」
「変わった奴だな……だが、悪い気はしない」
サンダーバードはなかなかよいしょに弱そうに見えたので、周りの鳥も綺麗だと言いながらその辺を歩き回る。
そして、落ちている羽根を次元倉庫に回収。金銀白黒、赤青黄色。多種多様の羽根を拾いまくっていたら、辺りは綺麗さっぱりとなった。
「おいお前……何をしていた?」
さすがに羽根がひとつもなくなるとサンダーバードに気付かれてしまったので、適当な言い訳。
「お掃除と言ってにゃ。あなた様の縄張りを綺麗にさせていただきましたにゃ~。わしにゃんか弱い生き物を招き入れてくれた感謝の気持ちにゃ~」
「感謝か……まぁよい。それよりお前は自分を弱いと言ったが、弱いわけがなかろう?」
「めっそうもないにゃ。あなた様と比べたら全然にゃ~」
「いや、我を見ても倒れないから、そこそこ強いはずだ」
う~ん……信じてくださらない。まぁリータ達では縄張りに入った瞬間に倒れそうな場所じゃし、ここまで来れたなら弱いわけがないか。
下手な事を言って怒らせる前に、撤退したほうがよさそうじゃ。お土産も手に入ったしのう。
「そこそこの実力者だとは思っていたけど、あなた様に出会って自分はまだまだだと実感したにゃ~。今度またあなた様を見たくなった時には、強い獲物でも狩って持参させていただくにゃ~。では、わしはこれで……」
「待て……」
わしは頭をペコペコ下げて逃げようとしたら、サンダーバードから待ったが掛かってしまった。
「不味い餌なんて持って来られては邪魔だ。お前がどれぐらいの餌を持って来れるか見ておいてやろう」
「ボチボチの物は狩れるにゃ~」
「どうもお前は信用ならん。角は消えているわ力の欠片は感じないわ……」
あっれ~? わしってそんなに挙動不審じゃったか?? ま、獣らしくないもんな~……て、【参鬼猫】が解けてるのはマズイ!
「やはりあいつの知り合いじゃないか? それも子供とか……」
ビンゴー! でも、親と子供は別人格ってもんじゃ。わしに当たられても困る。それにまだ時間が……
「子供だったらなんにゃ? わしは悪いことなんかひとつもしてないにゃ。にゃのに親の罪をわしに支払わせるつもりにゃの?」
「うっ……そういうわけでは……」
「じゃあどういう意味にゃ? わしが強かったらその場で殺してしまうにゃ? わしが弱かったら一撃で死ぬんにゃよ? 力を見てやるにゃんて絶対的強者が言うことじゃないにゃ~。どっちにしてもわしは死ぬだけにゃ~」
「ぐっ……」
フフン。高々鳥が、わしに口喧嘩で勝てるわけがあるまい。そろそろ魔力も溜まりそうじゃけど、これなら戦う必要もないじゃろう。
「グキャ~!! 殺さなければいいのだろ! 掛かって来い!!」
「言い過ぎましたことを、ここにお詫びしますにゃ~」
「掛かって来いと言っているだろ! それともそのまま死ぬか!?」
なんじゃこいつ。沸点低すぎじゃろ。神様のクセに……まぁいい。【参鬼猫】も準備万端。やってやる!!
わしは狭い額に白銀のアホ毛が三本ピョンッと立ったら足に力を入れる。
「では、手加減よろしくにゃ~」
「わかっておる!!」
お互い言葉を交わすと戦闘の開始。両翼を広げているサンダーバードに、わしは最高速の突撃だ。
いくら【参鬼猫】が制御不能でも、真っ直ぐ進むぐらいならなんてことはない。わしはサンダーバードの視界から消えて、次の瞬間には胸に頭突きが突き刺さっていた。
「ぐおおぉぉ~~~……」
そんな速度なら、サンダーバードも瞬間移動。一瞬で空まで運んでやった。
かった~……さすがはわしが出会った中で最高の化け物。柔らかいはずの胸でもめちゃくちゃ硬い。いや、鳥は胸に筋肉が集中してるのか。
でも、わしのアホ毛が突き刺さったから血が出てるみたいじゃな。
わしは小まめに空気を踏んで空中に浮かび、大きな翼でバサバサ飛んでいるサンダーバードを見ていたら念話が届く。
「やはりな……弱いわけがないと思っておったのだ」
あら? もう血が止まった……レベルの高い回復魔法持ちか。
「戦闘中に怪我を治すにゃんてズルくにゃい?」
わしはいつも治しているのだが、世界ランキング暫定一位がやっているのでは反則にしか思えないので苦情。
「心配するな。お前が怪我した場合でも治してやる」
「それはありがたいにゃ~。じゃあ、思う存分ぶつかってみるにゃ~」
「こ~~~い!!」
サンダーバードはまだ受け身でいてくれるので、再び最高速の突撃。今回はサンダーバードに油断が無かったので、翼で起こした暴風で速度を落とされ、さらに翼で殴られてしまった。
つう~……力の差は歴然か。骨にヒビが入ってしまったわい。痛いの痛いの飛んでいけ~。よし。完全回復。
問題はどうやって【参鬼猫】を制御するかなんじゃけどな~。ま、この戦闘中に慣れるかもしれん。案外訓練相手には持って来いの相手かも?
体が治ると、わしは七割ぐらいの速度に落とした突撃。暴風でスピードが落ちた瞬間に横に飛んで方向転換。とてつもない速度で切り返しを行い、サンダーバードの隙を探す。
しかしサンダーバードは、わしの速度では遅いぐらいなので常に正面を向き、隙あらば翼で殴って来るので、わしは何度も弾き返されてしまっている。
「お前の力はこんなものか! ならばもう決めさせてもらうぞ!!」
「もうちょっと待ってくれにゃ~」
チッ……少し早いが九割に引き上げるか。あと、このままでは分が悪い。魔法も使わせてもらおうかのう。
サンダーバードは急接近。そこから脚で掴もうとして来たので、全力離脱。からの……
「【朱雀】にゃ~!!」
「ぬおっ!?」
サンダーバードとほぼ同じ大きさの火の鳥は直撃。いきなり魔法生物が現れたので面喰らったのか、避ける事も出来ずにサンダーバードは焼け焦げて墜落した。
もうアレ、サンダーバードじゃなくて不死鳥じゃね?
【朱雀】は【参鬼猫】効果で大きさも攻撃力も上がったていたから多少はダメージが入ったようだが、サンダーバードは完全回復して戻って来た。
「フハハハハ。そんな攻撃もあるのか! お前、面白い奴だな!!」
「そっちに言われたくないにゃ~。でも、気に入ってくれてるにゃら、もう一発ご馳走するにゃ~」
また【朱雀】を放ってみたら、サンダーバードは吹き飛ばそうと翼をバサバサしていたので、そのチャンスを使って回り込む。
「隙だらけにゃ~」
からの、前脚で頭をペチコーン。見た目は地味だが思いっきり殴ったので、サンダーバードは急降下して行った。
「汚いぞ~~~!!」
「隙を見せるから悪いんにゃ~」
サンダーバードはとんでもない速度で戻って来たのでわしは逃げる。しかしスピードで負けているので置き土産。【大鎌】を乱射しながら、空を駆ける。
【大鎌】は、二、三発サンダーバードに当たったが、ダメージが低いのでお構い無し。だが、スピードが落ちるからかサンダーバードも【風の刃】を放って反撃。
わしの【大鎌】を突き破るほどの威力なので、ジグザグに走るしかなく逃走速度が落ちてしまった。
ここじゃ!!
わしだって馬鹿じゃない。追い付かれるのは目に見えていたので、サンダーバードが後ろに着いた時点で宙返り飛行。からの空気を蹴っての突撃。背中に頭突きを入れてやった。
フフン。ゼロ戦の小回りをナメるなよ。
「きっか~~~ん!!」
またアホ毛が刺さって血が出たのに、サンダーバードは完全回復して突撃して来たので、わしは小回りを活かした逃走からの攻撃。
サンダーバードも避けたり喰らったり。慣れて来たら反撃。
わしとサンダーバードは凄まじい空中戦を繰り広げ、辺りに空気を破る爆音や雷鳴を撒き散らすのであった。
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