596 外国人から見たウサギ族にゃ~


 猫穴温泉に出来たハンターギルド訓練場にてアイパーティはいますぐ猫の街に行きたいとうるさいが、わしは王様で忙しい身。ちょちょいと挨拶回りをして、アイパーティと合流する。


「もういいの?」

「急がなくても待ちますよ?」


 あまりにも早く戻ったら、さすがにお偉いさんとの挨拶があの程度ではダメじゃないかと、アイとマリーがわしの事を心配してくれる。


「わしは暴君にゃから、スケジュールぐらいどうとでもなるにゃ」

「リータ、メイバイ……あんなこと言ってるわよ??」


 わしがボケたら、アイ達がいつも通り総ツッコミしてくれると思っていたのだが、リータとメイバイに質問してしまった。


「こんなのが王様で恥ずかしいです……」

「これ、シラタマ殿の病気なんニャ……」

「「オヨヨヨヨ」」

「冗談にゃ~! もう話す事は終わってたんにゃ~! リータ達も見てたにゃろ~~~!!」


 何故か二人が不憫な感じで泣き出すので、わしのほうが必死にツッコムのであったとさ。



 マジで仕事は終わっているのに、しつこく「駄目な猫王」略して「駄ニャー」と言うアイパーティを飛行機に積み込み空を行く。


 でも、「駄」しか原型が残って無いんじゃけど……


 そして猫の街に帰ったら、アイ達がはぐれてしまった。


「「「「「モフモフ~~~!!」」」」」


 当然、ウサギ狩りに向かってはぐれたので、わし達は追う事はしない。こんな事もあろうかと、飛行機の中で「はぐれた場合は一番高い建物に来い」と言っておいたので、お腹がすいたらやって来るだろう。

 その間、わしは双子王女に報告。仕事で忙しい双子王女の代わりにハンターギルド関連は、王様として出席したわしが聞いて来てあげたのだ。

 ぶっちゃけ双子王女はある程度知っていたから必要なかったが、少しは新しい項目があったから、珍しく褒めてくれた。


 お使いぐらいは出来るって……その言い方は酷くない? わし、王様じゃぞ??


 文句を言いたかったが、機嫌が良さそうだからやめた。言うと愚痴が倍で帰って来るから、言わないほうが身の為だろう。

 これでわしの本日のお仕事は終了。我が家に帰ろうとエレベーターに乗った所でアイ達の事を思い出したので、コリスと一緒にキャットタワーの門で待機。

 しかし待てども待てどもアイ達は現れない。ようやくやって来たかと思ったら、全員ウサギを抱いて来やがった。


「にゃにしてるにゃ……」

「「「「「うわ~! 何この建物~~~!!」」」」」

「話を逸らすにゃ~~~!!」


 アイ達は10階建てのビルにマジで驚いていて話を聞いてくれない。しかし、ウサギ達がつぶらな瞳で助けを求めているので、現実に引き戻さなくてはならない。


 次元倉庫から焼き立てホヤホヤのヤマタノオロチバーベキュー味を出して、アイ達の目の前に持って行く。一本目はコリスにパクッと食べられたので、二本目を遠くにぶん投げて、コリスが取りに行っている内に三本目をブラブラ動かす。

 視覚と嗅覚を刺激してやればアイ達も視線が下に来たので、ウサギを離したらやると言ったのだが、マリーがテコでも離さない。なので、わしが上半身裸になったら離してくれた。

 とりあえず、この場に居る者には全員ヤマタノオロチバーベキュー味を一本ずつあげて、ウサギは逃がした。でも、途中でヤマタノオロチバーベキュー味を食べたウサギは居住区に辿り着けず、気絶していたところをモフられたらしい。



 モフモフが消えたところで、アイパーティを説教。


「撫でることは今のところ許されているけど、誘拐するとはどういうことにゃ~」

「だって……いっぱい居たから……」

「モフモフし放題でしたから……」

「流れで、つい……」


 アイ、マリー、モリーは、まぁ理由はわからなくもない。しかし、ルウとエレナは……


「丸々太らせたら美味しそうで……」

「他国の貴族に売れば儲かりそうで……」


 完全にアウト~!!


「犯罪者は極刑にゃ~~~!!」


 さすがに友達であっても、誘拐や人身売買、並びにウサギ食は重罪だ。未遂であってもこんな奴等は追放案件。その旨をこんこんと説教したら、超反省していた。

 だが、エレベーターに乗ったところでエレベーターウサギに痴漢して「ドントタッチミー!」と言われていたから、反省しているか微妙だ。


 夕食の席でも、こんこんとウサギ族の扱い方を説明していたのだが、夜景とキツネ少女お春に夢中で聞いているか不安。なので、お風呂上がりに抜き打ちテスト。

 いちおう平均点以上は取っていたが、たった五問の、撫でたらダメってだけの○×問題で、何故間違う……。リータ達や双子王女のほうが、何故に点数が低いんじゃ……


 あ、頭ではわかっているのですか。欲望に打ち勝てなかったのですか。そんな考えだから世の中から痴漢が無くならないんですよ? 満点のコリスを見習ってください。


 唯一満点を取ったコリスは褒めちぎる。おやつもいっぱいあげたから、超ご機嫌だ。この日はこのままコリスに抱かれて眠るわしであった。

 ちなみに、夜遅く帰って来たつゆがアイ達のゲストルームに拉致られたらしいが、わしは気付けないのであったとさ。



 翌日は、アイ達の事はリータ達に任せ、わしは出張。と言っても、各国で諸々の買い付けで走り回る日帰りの出張だ。

 しかし食糧も子供服も、前回の半分以下の量しか買えなかったので、他国から仕入れるのは限界っぽい。まぁ前回の分と合わせれば、しばらくは持つだろう。生地だけ大量発注して、食糧と服は猫の街で作る事に決めた。

 ただし、仕入れた服だけは前回双子王女に隠された事もあり、納品先は猫耳の里にしておいた。隠されたらウサギの防御力が低下するんじゃもん。前がはだけてるマントじゃ紙装甲じゃし……


 今日は買い付けだけで、もう夜だ。くたくたで家に帰ったら、晩メシを食べながら今日の報告。それと、双子王女からも報告があったのでリータ達と話し合う。


「10メートルクラスの白い獣にゃ~……リータ達で余裕にゃろ?」

「いいんですか!?」

「わしは明日も買い付けがあるからにゃ。戦闘機を貸すから向かってくれにゃ」

「やったニャー!」


 双子王女の報告は、ソウより北にある水源まで森を切り開いていた場所に、強い獣が出たとのこと。幸い斥候が発見して、すぐに撤退したから猫軍には被害は出ていない。

 しかし、野放しにしていたら明日以降の仕事に支障をきたすので、早く駆除したいと猫軍最高司令官のウンチョウから、わしの元へ依頼が来たのだ。


 わしが許可してリータ達が喜んでいると、アイも話に入って来る。


「私達に手伝えることはないかな?」

「白い獣だからにゃ~。アイ達には無理じゃにゃい?」

「うん、無理。ぶっちゃけ、見学をしたいみたいな? ひょんなことからぶつかるかもしれないし、見ておきたいの」

「にゃはは。正直だにゃ~。ま、リータに任せるにゃ~」


 アイパーティが猫の街から出る事は、わしとしては大賛成。今日も痴漢しまくっていたと聞いたしな。なので、リータの判断に委ねたら、連れて行く事に決まっていた。

 しかしこの大人数では、戦闘機だと定員オーバー。戦闘能力の無い飛行機で行ってもらうしかないので、コリスとオニヒメには安全航行に努めるようにお願いしておいた。



 翌日は、皆で朝ごはんを食べたら、飛行場からリータ達を見送る。


「ところでにゃんだけど、その装備って、ヤマタノオロチの鱗じゃにゃい??」


 アイパーティの装備が気になっていたわしは、飛行機に乗り込む前に問い質す。


「これ? これは……うん。ヤマタノオロチよ」

「高かったにゃろ? アイ達は意外とお金持ちだったんだにゃ~」

「ま、まけてもらったからなんとか……」

「そうなんにゃ。フレヤが作った装備に似てるけど、誰から買ったにゃ?」

「えっと……その……」

「やっぱりわしが切り分けたヤマタノオロチにゃろ~~~!!」


 そう。わしだって馬鹿ではない。アイ達がそんな装備を買えるとは思っていなかったから、根掘り葉掘り聞いていたのだ。

 そこで思い出したのが、誕生際でのやり取り。多く切り分けたのにおかしいなと思っていたら、フレヤがヤマタノオロチを使いたいが為に、アイ達用の装備まで作っていたのだ。

 だから全員分の装備を、格安で売ってもらえたらしい……


「出世払いで!!」

「……いつ出世するにゃ??」

「いつか……」

「もう! そんなことはいいから早く行きましょうよ!」

「そうニャー! 早く行かないと逃げられてしまうニャー!!」


 わしがアイを問い詰めていたら、戦闘狂のリータとメイバイから助け船が入り、アイパーティはわしから逃げて飛行機に乗り込みやがった。


「夜に話があるからにゃ~~~!!」


 逃げられたものは仕方がない。飛行機はすでに飛び立っているので聞こえるわけがないのはわかっているのだが、わしは叫ばずにはいられないのであったとさ。



 リータ達を見送ると、わしは本日のお仕事。各国を回り、買い付けが終わったのはお昼前。

 キャットタワーの2階にある職員食堂でランチを取りながら「今日はリータ達も居ないし安心してお昼寝できるな~」と考えていたら、つゆが駆け込んで来た。


「シラタマ様!!」

「モグモグ。血相変えてどうしたにゃ??」

「届きましたよ!!」

「にゃ!? すぐ行くにゃ!! モグモグモグモグ」


 焦ってすぐ行くと言ったものの、ランチを始めて間もなかったので、つゆと競い合うように食べる。少し行儀が悪かったが緊急事態だ。

 一気にお茶を飲み干して、つゆと一緒に窓から飛び下りた。


 そしてつゆを担いで工房に行くと、わしの目当ての物、日ノ本から送られて来た太陽光発電セットを調べる。


「にゃ! モーター駆動式パネルになってるにゃ。変圧器に新型電池、設計図も揃ってるにゃ~」

「はい~。もう素晴らしすぎて抱いて寝たいぐらいです~」


 うっとりしているつゆは太陽光パネルに頬擦りしているが、引き剥がして全て次元倉庫に入れる。


「あ……私の太陽光発電が……」

「つゆのじゃないにゃろ~。それに、これから山ほど増えるんにゃ。つゆには頑張ってもらうからにゃ」

「はい! シラタマ様との愛の結晶をいっぱい産みます!!」

「その言い方はやめてくれにゃ~」


 つゆが変な事を口走っているので、「リータ達の前で絶対に言うな」と口止めしたあと、背負ってダッシュ。ブッ飛ばしてソウに着いたら、つゆとホウジツには説明書を見ながら必要な材料を集めてもらう。

 わしは地下空洞から三ツ鳥居を潜ると平賀家にて源斉を拉致り、道案内。ダッシュで鉱山に着くと、シリコンの材料である桂石を掻き集める。ただし、平賀家に送る物は奪えないので、自分で岩を割って、重量だけ計って奪ってやった。


 いくらになるかわからないので、ちびっこ天皇とは後日商談するつもりだから、泥棒ではないのだ~!!


 これだけ手に入れたら、あとは源斉を平賀家に送って、太陽光発電セットの作り方を見学しておいた。それと、前回頼んでおいた制御装置は出来ているかと聞いたら、ラジオセットを見せられた。

 めっちゃ欲しいが、まだ短距離のアンテナしか試していないらしいので諦める。それで制御装置は出来ているかと聞いたら、まだ手を付けたところらしい……


 だったら先に言えよ! 無駄にラジオの話を聞いてしまったじゃろ!!


 これだから平賀家は扱い難い。無駄に時間を使ってしまったので、急いでソウに転移。ホウジツに桂石をひとつ渡して、これと成分が同じ物を探すように指示を出したら、揃っていた材料とつゆと共に猫の街にダッシュ。


 つゆ専用工房にこもって、二人で「にゃ~にゃ~」言いながら太陽光発電セットを作るのであった。



「「朝帰り??」」


 物作りが楽しくて時間を忘れたわしは、無断外泊の罪でリータとメイバイにめっちゃモフられたのであった。

 ちなみにアイ達は、ヤマタノオロチ問題をわしがすっかり忘れていたので、しばらく近付いて来なかったのであったとさ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る