564 強くなりたいにゃ~


 日ノ本の出張から帰った翌日……少し寝坊してしまったわしであったが、朝メシを食べたら訓練場にて、コリスとオニヒメと一緒に座禅を組んでいた。コリスは寝てるけど……


 ゴンッ!


「にゃ!? にゃにするにゃ~」


 いきなり棒のような物で殴られたので振り向いたら、メイバイが立っていた。


「ミヤモト先生は避けていたから、シラタマ殿も避けるかと思ってニャ……」


 どうやらメイバイは、宮本武志たけしが座禅を組んでいる時も、時々邪魔をしているらしい。宮本は真剣白羽取りで止めていたから、わしも簡単に止めると思ってたんだって。


「まぁ訓練するとか言って、寝ていた罰ですよ」


 リータも駆け寄って来たかと思ったら、わしが訓練をしていなかったと受け取っている。


「してるにゃ~。てか、二人のせいでどこまでいったかわからなくなったにゃ~」

「どこがですか?」

「サムライ訓練をするなら、せめて剣を持つニャー」

「今日は侍訓練じゃないにゃ~」


 二人が責めるので、訓練内容を述べて、わかりやすく見せる。


 たしか……600倍辺りまではいったはず。もうすぐお昼じゃし、ちょっと飛ばすか。610、620、630……わ!


 わしがやっていた訓練は、重力魔法の調整。座禅を組んだまま一倍ずつ重みを足して、地面がどれだけ持つかの確認をしていた。しかし、一足飛びでやったので、一気に地面に沈んでしまった。


「シラタマさ~ん?」

「大丈夫ニャー?」

「大丈夫にゃ~」


 かなり深く埋まってしまったので、リータとメイバイは心配して穴を覗いていたから、すぐに戻ると言って離れさせる。

 そうして土魔法で地上に戻ると、立った状態で重力600倍を使ってみるが、わしの小さい足では地面に接触している面積が小さいので、ズボッと両足が沈んで股間を強打してしまった。


「こ、腰をトントンしてにゃ~」


 しばしのたうち回っていたらリータ達が駆け寄って来たので、手助けを求めるわしであったとさ。



「う~ん……この方法で強くなるのは限界かにゃ~? モグモグ」


 大ダメージから復活したわしは、猫ファミリーと一緒に外でランチ。わしの独り言に、リータが答えてくれる。


「シラタマさんが訓練なんて珍しいと思っていましたけど、急にどうしたのですか?」

「阿修羅と戦った時に、苦戦したと言ったにゃろ? モグモグ。ヤマタノオロチとも苦戦したし、また旅に出てリータ達を心配させたくないんにゃ~。モグモグ」

「いい事を言ってるんですから、モグモグしながら言わないでくださいよ~」


 どうやらモグモグしながら喋っても、感動は半減のようだ。


「モグモグ。白銀猫家族のおやっさんやお母さんは無理として、せめて息子ぐらいは強くなりたいんにゃけどにゃ~。モグモグ」

「そうニャ!!」


 わしの悩みに失言が含まれていたので、メイバイがわしの皿を奪い取った。


「返してにゃ~」

「いったいいつになったら私達を会わせてくれるニャー!」

「えっと……もう少し仲良くにゃってから……それより返してくれにゃ~」

「会わせてくれるまで、ごはん抜きニャー!」

「わかったにゃ。今度行ったら聞いてみるにゃ~」


 折衷案を出したら、「すぐに聞いて来い」と命令されて決定。それを了承する事でわしの食べていた皿を返してくれたが、そこには料理が乗っていなかった……


「コリス! また食ったにゃ!?」

「めのまえにあったから、食べていいのかと……」

「コリスはしょうがないにゃ~」

「えへへ~」


 メイバイがわしの皿をどけた場所はコリスの目の前であった為、コリスは勘違いしたようなので仕方がない。反省もしているようだから、頭を撫でておいた。

 皆には甘い的な事を言われてしまったが、コリスのせいではなくメイバイのせいなので、次元倉庫の物をモグモグ。食後のコーヒーまでいただくと、出掛ける準備に取り掛かる。



「ちゃんと言って来てくださいね?」

「言わないと、晩ごはん抜きニャー」

「わかってるにゃ~。行ってきにゃ~す」


 念を押すリータとメイバイ達に見送られ、三ツ鳥居集約所からから転移。


 ここは、いつも白銀猫家族に会う時に使う転移場所。いきなり攻撃を受ける可能性大なので、いつも通り【吸収魔法・甲冑】と肉体強化魔法は忘れない。

 準備が整えば、人型のまま白い木の群生地に足を踏み入れ、圧力がある方向に走って向かう。


「久し振り~~~!!」

「ふんぬ~~~!!」


 最近、息子猫はわしが来るとじゃれてくる。今日もわしより速い速度で飛び掛かって来たので避けられず、ぐっと肉球でガードし、殺せない勢いは後ろに跳んで逃がし、ゴロゴロ転がってなんとか止まった。


「ひ、久し振りにゃ……」

「あはは。やるな~」


 息子猫はペロペロと顔を舐めて褒めてくれるが、一歩間違えば死に掛けないからやめて欲しい。ぶっちゃけこれがあるから、リータ達を連れて来れない理由のひとつなのだ。


 一通りのスキンシップに息子猫が満足すると、二人で走って雪だるま猫おやっさんと母猫に挨拶。母猫ともスキンシップを終えると、気に入っているブラッシングだ。


「「ゴロゴロ~」」


 もうすでに人型を見せているから出来る技。ただ、息子猫と母猫は自分がして欲しいからか、二刀流じゃないと間に合わない。


「あぶにゃっ!?」


 毛がブラシに絡まると、たまに手が出るから一瞬も気が抜けない。前に母猫に引っ掻かれて、腕がポトリと落ち掛けた経験があるから、リータ達を連れて来れない理由のひとつなのだ。


「そろそろ俺もいいか?」

「「もうちょっと~」」


 おやっさんもブラッシングを気に入っているのだが、何故か二匹に気を使って我慢している。あまりわしと触れ合う事も禁止されているようだ。

 一度、気に食わない所をブラッシングして、デカイ前脚で吹っ飛ばされて地球一周したから……ウソウソ。本当は、どこかわからない海の上で目覚めて、その日は戻れなかったからだ。もちろん死に掛けたよ!!



 二匹が満足して、おやっさんのブラッシングも終えたら、ようやく本題。リータ達の写真を見せてお願いしてみる。


「この子達はわしのつがいと娘にゃんだけど、みにゃさんに会いたがっているにゃ」

「ぜんぜん姿は違うけど……もう子供まで居たの??」


 母猫はわしを自分の息子のように見ているので、息子猫と比べて驚いているようだ。


「子供といっても、親が居にゃくなった子をわしが育てているんにゃ」


 オニヒメと違ってコリスには両親が健在だが、いまだ子作りハッスル中なので、ネグレクトといっても過言ではないから嘘ではない。

 異種族とはいえ子供を養っている事は意外と白銀猫家族には受けがよく、「弱いのに頑張ってるな」と褒めてくれた。

 三匹が強すぎるだけなので褒められても困るのだが、ここはチャンス。この勢いに乗って押してみる。


「みんにゃいい子なんにゃ。わしの番のリータとメイバイは、ブラッシングが凄く上手いんにゃ~。撫でられたら、もう気持ち良くて気持ち良くて……」

「「「そんなに!?」」」


 どうやらリータとメイバイのテクニックで説得してみたら、効果はあった模様。わしのブラッシングや撫で回しより気持ちいいとも言ってみたら、興味津々。

 まだ何もされていないのに、ゴロゴロ喉を鳴らして二人の写真を見ている。


「会ってみたい!」

「そうね。この子の番だもんね」

「うむ。早く連れて来い。ゴロゴロ~」


 息子猫から許可が出ると、母猫もわしを信頼し、おやっさんはゴロゴロが駄々漏れ。思ったよりすんなりと許可は下りたので、三匹のじゃれあいという拷問を受けてから、猫の街に帰るわしであった。


 やはり、リータ達を連れて行くのは、わしは反対じゃ。


 そんな事を考えながら帰ったら、リータとメイバイのお出迎え。


「わ! またボロボロです! 本当にじゃれてるだけなんですか?」

「本当は訓練をつけてもらってるんじゃないニャー?」


 どうやら二人は、わしが強すぎるので、ここまでボロボロにする怪物が存在している事がいまだに信じられないようだ。


「向こうはじゃれてるだけにゃ。向こうは、にゃ……ガクッ」


 さすがに怪物と短時間でもじゃれあったわしの体力ゲージはゼロ。一時の睡眠を余儀なくされた。


 わしは眠りながらも餌付けされ、目が覚めたらもうお風呂。揉み洗いされてゴロゴロ喉を鳴らし、今日の成果を報告したら、めちゃくちゃモフられて、本日二度目の気絶で眠りに就くのであった。



 翌日は、さっそく猫ファミリーを白銀猫家族の縄張りに連れて行くのだが、まずはわしだけで挨拶に向かう。


「待ってたわよ~~~!」

「ぐほっ!?」


 今日のお出迎えは、まさかの白銀母猫。手加減なしのタックルがわしに炸裂する。昨日リータ達を連れて来ると言ったから、テンションが上がって息子猫を追い越してやって来たようだ。

 とてつもない速度であったが侍の勘でなんとかガードは間に合ったのだが、骨の至る所にヒビが入り、ブッ飛ばされて振り出しへ……


 白い木や黒い木を何本もへし折って、リータとメイバイの目の前でわしは止まった。


「シラタマさん!?」

「大丈夫ニャー!?」

「ぜ、絶対に手を、出す…にゃ……」


 心配するリータ達に遺言を残したわしがバタンキューと倒れた瞬間、白い木の群生地から母猫と息子猫が現れる。


「大丈夫!? 生きてる!?」

「もう、お母さんは~」


 その瞬間、リータ達は……


「「「「ブクブクブク」」」」


 全員仲良く泡を吹いてバタンキュー。阿修羅より三倍も強い母猫を見て、一斉に倒れるのであったとさ。

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