第109話 それから

 トゥミに子供が出来たぁ!


 ‥‥‥それから数年。


 トゥミの第1子、男の子でスティングと名付けた。

 激イケメンで、当然トゥミ似。

 俺の血は髪色くらいで、黒髪の青目。

 容姿が俺に似てたら可哀相すぎる!‥‥そうならなくて良かった。



 同年代では、アンジェに女の子が生まれた。

 人魚さんだから女の子で当然なんだけど、これがまた偉い別嬪さんで、赤ちゃんを抱いた時点で、やばいな。と思った。

 きっと、傾国の美女となるであろう長女は、武闘派に育った‥‥‥あれ?


 アンジェの娘の名はイネス。

 スティングとガチで遣り合える戦士である。

 これは、母親のアンジェとトゥミの関係性を子供に移してるだけなので、母親同伴の模擬戦は禁止とした。

 君たちは私情を挟み過ぎです!


 彼女たちの質の悪い所は、相手が俺の時に限ってタッグを組んで攻めようとする。ただ、攻めてくる内容が小学生並みなので、スライム先生の問題を出して満点なら考えてやると言うと、大抵引き下がる。


 しかし、争いの内容にしても、アンジェよりトゥミの方が垂れてるとか、トゥミと寝た時の方が数打ってるとか、イクのが早いとか、どっちの方が愛されてるか?とか、刀に鞘は自分だ!とか‥‥

 もう、ね。なんなの?その低俗な争い‥‥


 それぞれに良い所があって、誰も代わりの出来ない唯一無二なんだから、止めなさい!って!!


 スティングとイネスはそんな母親達を横目で見て、自分達には関係ない!とばかりに二人で仲良く遊びに行ってしまうので、母親たちの空回りって‥‥‥


 今は人魚さんも普通に陸上生活が出来るようになった。

 昔は水辺から離れられなかったが、魔道具の発展により人魚の腕輪と呼ばれるものを付けてると、水に戻らなくても生活が出来る。しかし、精神衛生上は水に戻りたくなる様だね。



 スティングとイネスの遊びに行く先は、まずはボスの子供達と合流。

 ワフワンの息子のワンス♂。

 ワフトゥの息子のトゥース♂。

 ワフスリの娘のスーリー♀。

 そこにスティングとイネスが混ざって行く先は、そう、レッド達の戦隊本部。


 今では、牙狼戦隊は100を優に超える大所帯となっている。

 隊長は、当然レッド。

 ブルー、グリーン、イエロー、ピンクも健在である。

 それぞれに嫁や旦那を持って、家族も増えた。

 不思議と職場恋愛は無かった模様である。


 牙猿が増えれば魔狼も増える。

 アカ、アオ、ミドリ、キーロ、モモ、も家族が増えている。

 彼たちも職場恋愛は無かったようだ。


 その子供達が寄り集まって遣ることと言えば!

 牙狼幼児戦隊の爆誕である。

 しかし、出動されると問題も爆誕するので、村内の見回り部隊として各方面からは脚光を浴びている。


 要するに幼稚園部隊として、牧場へ行き、駆けずり回って、牛の姐さんの指導を受けて、美味しいオヤツや牛乳を頂いて、牛小屋でお昼寝三昧。

 子供を持つお母さんからは、預けて安心、教育もバッチリな幼稚園として脚光を浴びたのである。


 スティングとイネスは、既に幼児戦隊は卒業。

 次の小児戦隊へと進級している。

 そこで本格的な戦闘技術を学ぶのである。

 これが楽しくてしょうがないらしい。


 更に先々には、エルフシティにある魔法学校へと進学したいと思っている。

 魔法学校の校長には、スティングの爺ちゃんのヴィトンが就任している。

 ヴィトンは実は出来る男だった。


 エルフの里は、真悟人とヴィトンで、あちこちに散らばっていたエルフ達の集落を集めて統合して大きな街になった。

 魔法の付与術師をドンドン増やして、魔法の街をキャッチフレーズに様々な魔道具や、魔石に付与した簡易魔法具を生み出していった。


 それに貢献したのは、何と言ってもトリネコ商会だろう。

 牙狼村とエルフシティの交易で莫大な財を築いたトリネコ商会は、国としても無視出来ない商会に伸し上がった。


 それに伴って、オダーラやマウントフジの街も見る見る間に人口が増えて行った。

 行政に悲鳴が上がり、真悟人が少しずつ手助けして行ったのだが、先進的に改革されたのが戸籍登録の実施である。


 これにより、仕事の斡旋や税金の相談、商売の登録、スラムの縮小化と、どんどん金と仕事を生み出していく。

 それによって、社会福祉や社会保険も考えられていった。

 ちゃんと街に住んで登録して税金を払う。

 その特典として、仕事を優先的に回して貰ったり、商売に融通が効いたり、一番大きいのは怪我や病気をしても、病院という施設で安い金額で治療を受けられる。


 今までの様に、病気やケガをしたら仕事も無くなり野垂れ死ぬ訳じゃない。

 ちゃんと税金さえ払っていれば、病院で治療が受けられて仕事が出来ない間の少しの保証も受けられる。


 この時代では画期的な試みだと王都でも注目を浴びた。

 多くの貴族は、どうせ、直ぐに破綻すると見ていたのが、人口は見る見る間に増えて住民登録する人間もどんどん増える。

 税収も鰻上りだが、その分の職員の増加と病院などの初期投資や人員の教育などで赤字が続いた。


 それ見た事かと、嘲笑っていた貴族も多かったが、先見の明のある貴族たちも居た。そう、初期投資をして軌道に乗れば、後は回収できるのである。

 特に一定数の人員が揃えば、補充は少しづつ増やしていって、設備のランニングコストも目途が立ってくる。そうすると予算の目途も立つ。

 住民は増えて行ってるが、街のキャパとして一定数を超えたら拡大をしなければならない。そうやって計画的に街を大きくしていくと、人口が増え経費も大きくなるが、税収も上がる。右肩上がりの収益が見込めるようになる。


 その頃には、嘲笑っていた古い体制の街からは人が減り、新体制の街に人が流れる。そうなると歯止めは効かなかった。


 特に商売などをしている人間は顕著である。

 残るのは、農民などその土地を所有しているか、拘りを持つ者で、雇われの小作農民などは条件の良い方へ流れるのは当然である。


 農民が増えれば、農地も必要になる。

 そこで、指定地域を区切って、自分で切り開いた土地は無条件で貸与する。

 税金は、農地の大きさにより決める。基本は収穫の3割である。

 しかし、怪我や病気で働けなかった期間は申請すれば免除となる場合もあると。


 それを聞いて、そんな都合の良い話は無いと思った。

 何処の領地でも収穫の5割持って行くのはざらにある。酷い所は8割持って行く。

 それも決められた量の8割だから、下手したら足りない時もある。

 そうなると借金となって、更に縛られると言う訳だ。

 それに土地を持ってると言う事で、移動も出来ないし、怪我や病気で免除何て在り得ないと噂した。


 だが実際は、本当に開墾した土地の貸与を認めてくれた。

 人が開墾した部分と接していなければ、農地は広げ放題だ!

 それに税金も出来高の3割だった。決められた量ではなく出来高なので、借金を背負う事もない。


 農民の一人がケガをした。彼はこの世の終わりのような顔をしていたが、ちゃんと住民登録していたおかげで、税金の免除と少しの保証金が出た。

 これには周囲も驚いた!真面目にやっていれば保証もしてくれる。

 それを逆手に取って保証金だけせしめようとする奴も当然出てくる。


 だが、しかし、世の中そんなに甘くない。

 真面目にやると言う事は、ちゃんと住民登録をして税金を払うということである。そうしなければ保証は得られない。住民登録しても、税金を払っていなければ収入も分からないから保証金の計算のしようも無い。


 そこに気付かずに、保証金の申請だけして虚偽申請でしょっ引かれる奴が後を絶たない。まぁ、そいつらは犯罪奴隷として売り飛ばされるので、ちゃんと街の収入になるし、真面目に出来ない奴は碌なことしないので、良い撒き餌になった感じだ。


 そうやって街の発展に貢献した真悟人は、街の英雄なことも在って、街の役職に就任するのを望まれているが、牙狼村の村長で良いと頑なに断っている。


 因みに牙狼村も、種族も人口も増えて街と言える規模なのだが、これも村と言い張っている。

 頑固な男である。

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