第9話四つ葉のクローバー

 クリスとアリスが、リズル達が出会う数日前



 大きな建物がある森の中、その建物のすぐ側で何かを探しているアリスと、クリス


「こっちにあるよ!」

「どこ?」


「ここ、ここ!」

 地面を指差すアリス

「あった!」

 アリスの指差す場所から、何かを採り始るクリス

 クリスの手には四つ葉のクローバーが一つ

「やった!」


 アリスもクリスの手を見て、エヘヘっと笑う二人


「アリス、クリス何しているの?」

 車椅子に乗った初老の女性と、車椅子を押す若い女性が、二人の元へ歩いてきた


「お母様!おばあ様!」

 二人の所へ走り駆け寄る


「あのね、四つ葉のクローバー見つけたの!」

 手を開いてクローバーを見せる

「あら、素敵ね」

「お母様、これあげる」

 アリスが車椅子を押していた女性に渡す

「いいの?」

「うん!」


「クリスもカフルおばあ様にあげる」

 車椅子の女性の手にクローバーを置いた

「おや、いいのかい?」

「うん!もらって」

「ありがとう」


 大きな建物の前、人里離れた森の中、四人の声が響いている

 建物の中からメイド服の女性が出てきて、声をかけてきた

「アリス様、クリス様、おやつの用意ができました」


「家政婦のお姉ちゃん、今日のおやつはなに?」

 クリスが聞くと

「リクエストのパフェです」

 家政婦が答えると、

「やったぁ!」

 二人は声を揃えて喜んでいる

「ねぇ、お姉ちゃん達もみんなで食べようよ」

 アリスが家政婦の手をつかんで、話しかける

「それいい!みんなで食べたら美味しいもんね!」

 クリスもウンウンと頷き手をつかむ

「え?」

 家政婦は、戸惑った様子で二人を見つめる

「行こう!みんなで、おやつ食べよう」

 家政婦の手を引っ張り建物へ走ってくアリスと、クリス


「お母様、おばあ様も行こう!早く!」



「えぇ…」

 クリス達が建物へ入っていくのを見守る、リリスとカフル


「リリス」

 カフルが、車椅子の後ろにいるリリスに声をかける

「本当にあの子達を…」

 声をつぐむリリス


 少しうつ向いて話すカフル

「仕方がないのです。ルーグ家の双子、しかも何十年振りの双子の成長、なにが起きるか…」


「でも…」


「リリス、すまないね。私のわがままで…」


「そんな…私のわがままでもあります」

 顔を振り否定をするリリスだが、少し泣いている



「今日の夜をもって、家政婦のみんなには、一時帰宅を命じています。私達も今晩行います」

 カフルの発言に、無言になり返事ができないリリス

 カフルも、リリスの様子に気づき声をかける

「リリス、あの子達を信じるしかありません」

「ですが…」

 クリスからもらったクローバーを見つめ、話を続ける

「今日二人に話しましょう。そして、願いましょう。災いが起きないことを、あの子達の未来を…」



 カフルは車椅子を動かし、涙ぐむリリスをそっと抱きしめる。

「リリス、あの子達を産んでくれて、守ってくれてありがとう。ルーグ家の嫁として、本当に良くしてくれた。それに比べて、うちのバカ息子は…どこで何をしているやら…」


「あっ、あの人は…」



「お母様、おばあ様パフェ来たよ。早くきて!」

 アリスとクリスが、建物の窓から顔を出して、大声で二人を呼ぶ


「はいはい」

 と返事をすると、カフルはゆっくり車椅子を押し、建物へ向かう


 カフルの後ろ姿を見つめ、リリスは四つ葉のクローバーをぎゅっと包む

「アリス…クリス、どうか」

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