第196話 正義の勇者 メイルと天使顕現
光の魔力。 それに包まれ、メイルは繭のように守られている。
それに無遠慮のように大股で近づくソル。
「まるで繭……いや、卵か? どちらにしても誕生の象徴。ならば!」
その手にした剣を振り上げ、一気に振り下ろす。
「――――っ! このためだけに新調した魔剣が通らないとは、予想外……いや嬉しい誤算というものだ」
だが、メイルの包む物体に亀裂が、ヒビが走る。
「おぉ、生まれるか。正義の勇者 メイル。そして――――その背後に立つ者よ!」
卵が割れる。 現れたの普段と変わらぬメイル。だが、その背後には――――
翼が生えた少女が浮かんでいた。
「やはり、天使を顕現させていたか! ならば、その力をいただくのみ」
「貴方は――――私を勇者に、それに天使……そんな事のためだけに!」
メイルに宿るもの。それは彼女が見せた事がない怒り。
内側から零れ落ちるほどの感情が彼女を揺り動かせる。
≪真実の弾丸≫
メイルの攻撃魔法が唸りを上げ飛んでいく。 今までより明らかに威力が向上している魔法。 それが同時に複数個。それを――――
「フン!」とソルは切り払う。
だが、接近する存在がある。メイルが顕現させた天使だ。
天使の打撃。 並みの魔物なら、一撃で浄化させてしまうほどの威力。
それをソルは剣の腹で受ける。
「クック……不思議そうな顔ですね。なぜ、神の使いである貴方の打撃を剣で受けれるのか?」
こともあろうに神々の眷属に力勝ちしてソルは天使を後方に押し返し、さらに一振り。
信じられない光景。 太刀を浴び、天使から血を噴き出す。
「洛陽の魔剣。神秘を殺し、力を奪う能力。 メイルと天使、貴方を倒して神々の領域まで私は駆けあがる!」
「させません!」と近場に飛び出したメイルが杖で突きを放つ。 さらに天使から打撃の波状攻撃。
メイルはただ速く真っすぐの突きのみ。だが、天使の攻撃補助もあり、全てを凌ぎ切れるのは達人クラスだけか?
「――――っ! まさか本体である貴方が接近戦を行うとは、予想外な成長。だが、
ソルはメイルの突きを逸らし、崩れた体勢の彼女を蹴り飛ばす。
「とったぞ! 神の領域を――――なに!?」
衝撃。
背後から不意打ちの攻撃を受けて、ソルは硬直する。
誰もいないはずの、この場所。 そのためだけに魔物の配置すら計算し尽くし、想定外の乱入者を封じるために予備戦力を残存させている。
「――――何者がッ!?」と背後からの攻撃者を見たソルは言葉を失うほど驚愕した。
「貴方は、プリエ。 馬鹿な! 確かに胴体を切断したはず!」
今も地面から立ち上がれぬ様子のプリエ。しかし、切断されたはずの肉体は元に戻っており、攻撃魔法の手をソルに向けている。
「えぇ、その時に確かに私は死にました」
「馬鹿な……いや、まさか……」
「はい、天使さまの力……死者蘇生の恩賞です」
「くっ!」とソルは、プリエの聖属性魔法を剣で弾く。
「馬鹿な! 神が、ただが神如きが、この世の真理すら書き換えるだと! 神でありながら低能ぶりは驚かされるぞ!」
「不敬ですね」とメイルが杖による突きが直撃する。
「がっ」と魔剣を落としそうになるソル。 さらに天使の打撃。
まともに受ける。 防御は追いつかない。
「まさか、まさか、まさか……私が出払ってまでの敗北だと! そんな三流の悪役が真似を私が――――えぇい!」
ソルは、万が一に残していた予備戦力を投入を決意した。
それも、ただただ自身が逃走するためだけの投入。
彼に取っては起こり得ない負け戦。 けれども――――
「させません。 ≪
「な――――」とソルは絶句した。 当然だ。退路は防がれたのだから……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます