第95話b 幕間② 伽藍堂世界
空高く打ち上げられた岩石の自由落下の絨毯爆撃。
しかし、ベルトとシンラは落下する岩石と避けながら駆け抜けていく。
避ける? 絨毯爆撃をどうやって?
答えは簡単だ。落下してきた岩を足場にして、空中を走っていた。
暗殺者であるベルトの身体能力なら可能。しかし、後衛職であるシンラにそんな事が可能なのか?
元からシンラは後衛職でありながらソリスト。
敵の弱点を正確に打ち抜く精密射撃。
一瞬で何十もの魔物を倒す手数……魔法の回転率の高さ。
この2つに加え――――
東方に伝わる体術である≪忍術≫を武器に1人で戦っていたのだ。
「むっ……魔力が灯っていく。 ベルト、風属性の魔法が来るぞ!」
ベルトよりもいち早く魔力を感知したシンラは声を張った。
「風属性?」とベルトは眉を顰める。
範囲攻撃である土属性や水属性の魔法攻撃ならわかる。
ベルトは陸クジラを迂回するように右側を、シンラは左側を別れて走っているからだ。
しかしなぜ? 風属性や炎属性の魔法攻撃は縦一直線上に放射する事に強みがある。
無論、必ずしも土属性、水属性は範囲攻撃。 風属性と炎属性は直線状攻撃と決まっているわけではない。ないのだが……
陸クジラは大口を開き、空に向って風属性の魔力を放出させた。
それを見たベルトは、「これは……まずい!?」と呟いた。
風属性によって陸クジラの内部からある物も同時に打ち上げられていたからだ。
「シンラ、上に防御壁を張れ! 胃酸の雨が降るぞ!」
「――――ッ! なんだって!?」
そう、それは陸クジラの胃に収まっていた胃酸。
動物なんぞ、軽く骨に変える強烈な胃酸だ。
胃酸の雨に備えて防御壁を張るシンラ。
しかし、ベルトは? どうやって強烈な胃酸を防ぐのか?
≪
ベルトは空に向けて―――― いや、降り注いでいく胃酸に向けて――――
魔力の刃を打ち放った。
それも3連撃――――否。それだけではすまない。
合計10連発の刃が小さな雨粒すら切り裂いた。
霧散……文字通りに雨は、霧となって散開した。
「相変わらず、無茶な奴だ」とシンラの声が近くで聞こえた。
彼女はベルトの目前まで近づいていた。
どうやら互いに陸クジラの体は半周したらしい。
「ベルト! 預けていた札はきちんと……」
「あぁ、心配するな。キチンと落としてきた」
「――――ならばよし!」
ベルトとシンラが陸クジラの体を周るように走っていたのには意味がある。
2人が陸クジラの体を覆うように落としていた札には魔力は含まれていて……
「いくぞ、結界方術……≪伽藍堂世界≫」
シンラは右腕に魔力を通し、片膝をつくと――――
右手で地面を叩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます